桜雨 -4-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(「おはようございます」だけはいいなれているせいかりゅうちょうなのだが、) 「おはようございます」だけは言い慣れているせいか流暢なのだが、 (それいがいのことばをしゃべろうとするとひどくどもった。きつおんしょうというのか。) それ以外の言葉を喋ろうとするとひどくどもった。吃音症と言うのか。 (たまにほかのひとからはなしかけられると、「うん、うん」といって) たまに他の人から話しかけられると、「うん、うん」と言って (にこにこするだけで、どこまでりかいしているのかよくわからない。) にこにこするだけで、どこまで理解しているのかよく分からない。 (とかいとちがって、そうしたひとをたいしょうにしたひやといしごとや) 都会と違って、そうした人を対象にした日雇い仕事や (たきだしなどもないはずだった。) 炊き出しなどもないはずだった。 (あきびんをひろってあるいているのをみたことはあったが、) 空き瓶を拾って歩いているのを見たことはあったが、 (それだけでたべていけるのだろうか。) それだけで食べていけるのだろうか。 (できあいのべんとうをたべているのをみたことがあるが、) 出来合いの弁当を食べているのをみたことがあるが、 (きんじょのこんびにやすーぱーからのこりものをわけてもらっているのかもしれない。) 近所のコンビニやスーパーから残り物を分けてもらっているのかも知れない。 (しかしわたしがこのふしぎとおいだされることのないきみょうなこうえんのじゅうにんに) しかし私がこの不思議と追い出されることのない奇妙な公園の住人に (ひかれたほんとうのりゆうは、かれのみぎてにあった。) 惹かれた本当の理由は、彼の右手にあった。 (ひろさんはいつもみぎのてのひらをにぎりしめている。) ヒロさんはいつも右の手のひらを握りしめている。 (げんこつをつくっているというよりも、なにかをにぎりこんでいるようなかっこうだった。) 拳骨を作っているというよりも、何かを握り込んでいるような格好だった。 (さいしょはなにをもっているのだろうとふしぎにおもっただけだったが、) 最初は何を持っているのだろうと不思議に思っただけだったが、 (やがていつみてもおなじようににぎっていることにきがついた。) やがていつ見ても同じように握っていることに気がついた。 (「おはようございます」とあいさつをするときも、あきびんをひろってあるいているときも、) 「おはようございます」と挨拶をする時も、空き瓶を拾って歩いている時も、 (べんとうをたべているときも、こうえんのてあらいばでかおをあらっているときも、) 弁当を食べている時も、公園の手洗い場で顔を洗っている時も、 (いつもそのみぎてはぐーのかたちににぎったままだった。) いつもその右手はグーの形に握ったままだった。 (ゆびやてのひらがまったくつかえないから、ほとんどみぎてはやくにたたない。) 指や手のひらが全く使えないから、ほとんど右手は役に立たない。
など
(ひだりてでなにかをするときに、そえるくらいだ。) 左手で何かをする時に、添えるくらいだ。 (ひろってきたものをぼろぼろのぬのぶくろにつめこもうとしているときに、) 拾ってきたものをボロボロの布袋に詰め込もうとしている時に、 (みぎてがつかえないせいでなかなかうまくいかず、) 右手が使えないせいでなかなか上手くいかず、 (みているこっちがもどかしくなった。) 見ているこっちがもどかしくなった。 (むかしよんだのぐちひでよのでんきからのいめーじで、やけどかなにかのせいで) 昔読んだ野口英世の伝記からのイメージで、火傷かなにかのせいで (ゆびがはりついてなおらないのだろうかともおもったが、) 指が張り付いて治らないのだろうかとも思ったが、 (そのゆびのけっしょくのよさからすると、どうもちがうようだった。) その指の血色の良さからすると、どうも違うようだった。 (「あー、それ、しってるよ」) 「あー、それ、知ってるよ」 (しんそうをおしえてくれたのはよーこだった。) 真相を教えてくれたのはヨーコだった。 (「うち、おかあさんもこのがっこうのそつぎょうせいなんだけど、そのころからいたらしいよ」) 「うち、お母さんもこの学校の卒業生なんだけど、そのころからいたらしいよ」 (ははおやからきかされたというのはこんなはなしだった。) 母親から聞かされたというのはこんな話だった。 (ひろさんはむかし、しあわせのようせいをつかまえたのだそうだ。そのみぎてで。) ヒロさんは昔、幸せの妖精を捕まえたのだそうだ。その右手で。 (てのひらをあけるとようせいはにげてしまうので、) 手のひらを開けると妖精は逃げてしまうので、 (にげてしまわないようにいつもみぎてはにぎったまま。) 逃げてしまわないようにいつも右手は握ったまま。 (あさ、ひる、ばん、おきているときも、ねているときも、いつもいつでも。) 朝、昼、晩、起きている時も、寝ている時も、いつもいつでも。 (「だってさ。いや、うわさじゃなくて、ほんとにほんにんがそういってたの) 「だってさ。いや、噂じゃなくて、ホントに本人がそう言ってたの (ききいたんだって。うちのおかあさん」) 聞いたんだって。うちのお母さん」 (しあわせのようせいか。) 幸せの妖精か。 (わたしはそれをきいて、こころのどこかではりがささったようないたみをおぼえた。) 私はそれを聞いて、心のどこかで針が刺さったような痛みを覚えた。 (ひろさんは、そのしあわせのようせいをのがさないように) ヒロさんは、その幸せの妖精を逃さないように (ずっとてをにぎりしめているのか。) ずっと手を握りしめているのか。 (そのせいで、きっとしごともできなくなっただろう。) そのせいで、きっと仕事もできなくなっただろう。 (ほーむれすをしていくうえでも、ぐあいのわるいことばかりあったにちがいない。) ホームレスをしていく上でも、具合の悪いことばかりあったに違いない。 (それがしあわせなじんせいなのだろうか。) それが幸せな人生なのだろうか。 (「ばかよ、ばか。でもろまんてぃっくね。) 「バカよ、バカ。でもロマンティックね。 (しあわせのようせいをつかまえたほーむれす!」) 幸せの妖精をつかまえたホームレス!」 (よーこはそらにてをかざして、たいようをつかもうとするしぐさをした。) ヨーコは空に手をかざして、太陽をつかもうとする仕草をした。 (わたしはいぜんよんだほししんいちのしょーとしょーとをおもいだしていた。) 私は以前読んだ星新一のショートショートを思い出していた。 (みしらぬかぎをひろったおとこが、そのかぎであけることのできるとびらをさがして) 見知らぬ鍵を拾った男が、その鍵で開けることのできる扉を探して (じんせいをおくるはなしだ。) 人生を送る話だ。 (まだみぬそのとびらのむこうをゆめみながら。) まだ見ぬその扉の向こうを夢見ながら。 (とびらがみつからないまま、やがてとしおいたかれはついにそのかぎにあうとびらを) 扉が見つからないまま、やがて年老いた彼はついにその鍵に合う扉を (みずからつくった。) 自ら作った。 (そしてひらかれたとびらからはおんなかみがあらわれ、のぞみをかなえてあげようという。) そして開かれた扉からは女神が現れ、望みをかなえてあげようと言う。 (かれはこたえる。) 彼は答える。 (「ろうじんにひつようなものはおもいでだけだ。そしてそれはもっている」と。) 「老人に必要なものは思い出だけだ。そしてそれは持っている」と。 (いつかそのかぎでとびらをあけることをゆめみていきてきたそのじんせいそのものが、) いつかその鍵で扉を開けることを夢見て生きてきたその人生そのものが、 (ほかのなににもかえがたいたいせつなものだったということか。) 他の何にも替えがたい大切なものだったということか。 (びだんだとおもう。しかしひろさんのばあいはどうだろうか。) 美談だと思う。しかしヒロさんの場合はどうだろうか。 (ひろさんが、ひろったたいりょうのざっしをみちばたでぶちまけてしまったのを) ヒロさんが、拾った大量の雑誌を道端でぶちまけてしまったのを (みたことがある。) 見たことがある。 (ひだりてだけでぶきようにいっさついっさつひろっていたそのちいさなうしろすがたをおもいだして、) 左手だけで不器用に一冊一冊拾っていたその小さな後ろ姿を思い出して、 (すこしかなしくなった。) 少し哀しくなった。
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