心霊写真 -1-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(だいがくにかいせいのはるだった。) 大学二回生の春だった。 (ぼくはそのひ、ばいとさきであるこうしんじょにあさからよばれ、そうじとでんわばんをしていた。) 僕はその日、バイト先である興信所に朝から呼ばれ、掃除と電話番をしていた。 (そうじははなうたをうたっているあいだにおわり、) 掃除は鼻歌をうたっている間に終わり、 (あとはでんわばんというふたしかなしごとだけがのこった。) あとは電話版という不確かな仕事だけが残った。 (まどのほうにめをやると、「おがわちょうさじむしょ」とかいてあるしーるが) 窓の方に目をやると、「小川調査事務所」と書いてあるシールが (がらすにはりついている。) ガラスに張り付いている。 (もちろんがいからみてそうみえるようにかいてあるので、) もちろん外から見てそう見えるように書いてあるので、 (こちらがわからはさゆうがはんてんしている。) こちら側からは左右が反転している。 (なんどめかのあくびをした。) 何度目かの欠伸をした。 (ぽかぽかしたようきに、ひるまえのけだるいきぶん。まてどもひたすらにならないでんわ。) ぽかぽかした陽気に、昼前の気だるい気分。待てども一向に鳴らない電話。 (いったいじぶんがなにをしたここへきているのか、) いったい自分がなにをしたここへ来ているのか、 (だんだんとわからなくなってくる。) だんだんとわからなくなってくる。 (ですくにはぼくのほかにふたりのにんげんがすわっている。) デスクには僕の他に二人の人間が座っている。 (ひとりはあるばいとのはっとりさんというにじゅうだいはんばのせんぱいで、) 一人はアルバイトの服部さんという二十代半ばの先輩で、 (このこうしんじょではおがわしょちょうのみぎうでてきなそんざいだ。) この興信所では小川所長の右腕的な存在だ。 (もうひとりはおなじくあるばいとのかなこさんという、) もう一人は同じくアルバイトの加奈子さんという、 (はっとりさんとどうねんぱいのじょせいで、) 服部さんと同年輩の女性で、 (ぼくをこのこうしんじょでばいとさせているちょうほんにんだった。) 僕をこの興信所でバイトさせている張本人だった。 (おかるとぜんぱんにつよく、れいしのようなこともできるので、) オカルト全般に強く、霊視のようなことも出来るので、 (このぎょうかいでは「おばけ」とよばれるふかかいなじあんせんもんのちょうさいんをしている。) この業界では「オバケ」と呼ばれる不可解な事案専門の調査員をしている。
など
(ぼくのおかるとどうのししょうでもあるところのかのじょは、) 僕のオカルト道の師匠でもあるところの彼女は、 (きょうはひばんだったはずだが、なぜかふらりとじむしょにかおをだして、) 今日は非番だったはずだが、なぜかふらりと事務所に顔を出して、 (「ひまでらくなばいとだろう」とぼくをからかっていたかとおもうと、) 「暇で楽なバイトだろう」と僕をからかっていたかと思うと、 (じぶんのですくにこしをすえて、よみかけのざっしをつぶさによみはじめていた。) 自分のデスクに腰を据えて、読みかけの雑誌をつぶさに読み始めていた。 (はっとりさんのほうは、あさからしないでちょうさがはいっていたはずなのだが、) 服部さんの方は、朝から市内で調査が入っていたはずなのだが、 (もうおわったのか、かえってくるなりむごんでせきにつき、) もう終わったのか、帰って来るなり無言で席に着き、 (それからずっとかたかたとわーぷろのきーをいっていのりずむでたたきつづけている。) それからずっとカタカタとワープロのキーを一定のリズムで叩き続けている。 (おがわしょちょうからは「るすでんがこわれてるし、ごぜんちゅうだれもいないくなるから、) 小川所長からは「留守電が壊れてるし、午前中誰もいないくなるから、 (たのむよ」といわれてやってきたのに、) 頼むよ」と言われてやって来たのに、 (これではでんわばんなどひつようなかったではないか。) これでは電話版など必要なかったではないか。 (そもそもでんわのいっぽんもかかってこないのだ。) そもそも電話の一本も掛かってこないのだ。 (じつにまちはきょうもへいわだ。いいことだ。) 実に街は今日も平和だ。いいことだ。 (たんていかぎょうにはつらいことだろうが、ぼくにはなにのかんけいもなかった。) 探偵家業にはつらいことだろうが、僕には何の関係もなかった。 (はっとりさんはむくちで、はなしかけられないかぎりじぶんからくちをあくことはないし、) 服部さんは無口で、話しかけられない限り自分から口を開くことはないし、 (いや、はなしかけられても、なにもなかったかのようにむしすることさえあるし、) いや、話しかけられても、なにもなかったかのように無視することさえあるし、 (ししょうのほうははっとりさんのことがきらいらしく、) 師匠の方は服部さんのことが嫌いらしく、 (いっしょにいるとおなじようにだまりこむことがおおかった。) 一緒にいると同じように黙り込むことが多かった。 (へいわだ。) 平和だ。 (じつに。) 実に。 (ひまつぶしにじぶんのめいしでとらんぷたわーのようなものをこしらえようと) 暇つぶしに自分の名刺でトランプタワーのようなものを拵えようと (なんどめかのちゃんれじをしているとき、なんのまえぶれもなくどあがひらいた。) 何度目かのチャンレジをしている時、何の前触れもなくドアが開いた。 (「おがわさん、いるか」) 「小川さん、いるか」 (このようきだというのに、きせつはずれのこーとをみにつけた) この陽気だというのに、季節はずれのコートを身につけた (さんじゅっさいぜんごのおとこが、とぐちにたってあらいいきをしている。) 三十歳前後の男が、戸口に立って荒い息をしている。 (そのようすにぼくはいわかんをおぼえる。) その様子に僕は違和感を覚える。 (かっこうのことではない。) 格好のことではない。 (たしかにはんちんぐぼうなどかぶり、) 確かにハンチング帽などかぶり、 (このへやのだれよりもたんていじみたかっこうではあったが、そのことではないのだ。) この部屋の誰よりも探偵じみた格好ではあったが、そのことではないのだ。 (ほんとうになにのまえぶれもなくどあはひらいた。) 本当に何の前触れもなくドアは開いた。 (つまりかいだんをあがってくるあしおとがしなかった。) つまり階段を上がってくる足音がしなかった。 (このおがわちょうさじむしょのはいるざっきょびるは、) この小川調査事務所の入る雑居ビルは、 (やちんそうおうの「たてつけ」をしているのに。) 家賃相応の「たてつけ」をしているのに。 (つまりそのたてつけをおぎなってあまりあるほど、) つまりそのたてつけを補って余りあるほど、 (かんぜんにあしおとをころしていたということだ。) 完全に足音を殺していたということだ。 (なのに、このめのまえのおとこはまるでかいだんをにそくとばしで) なのに、この目の前の男はまるで階段を二足飛ばしで (かけあがってきたばかりのように、くるしそうにかたでいきをしている。) 駆け上がってきたばかりのように、苦しそうに肩で息をしている。 (このふいっちがいわかんのしょうたいだった。) この不一致が違和感の正体だった。
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