国語
問題文
(たびにやんでゆめはかれのをかけめぐる)
旅に病んで 夢は枯野を 駆け巡る
(くさのともすみかわるよぞひなのいえ)
草の戸も 住み替わる代ぞ 雛の家
(ゆくはるやとりなきうおのめはなみだ)
行く春や 鳥啼き魚の 目は涙
(なつくさやつわものどもがゆめのあと)
夏草や 兵どもが 夢の跡
(しずかさやいわにしみいるせみのこえ)
閑かさや 岩にしみいる 蝉の声
(はまぐりのふたみにわかれゆくあきぞ)
蛤の ふたみに別れ 行く秋ぞ
(はるすぎてなつきたるらししろたえのころもほしたりあまのかぐやま)
春すぎて 夏来たるらし 白たへの 衣干したり 天の香具山
(たごのうらゆうちいでてみればましろにそふじのたかねにゆきはふりける)
田子の浦ゆ 打ち出でてみれば 真白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける
(にきたつにふなのりせんとつきまてばしおもかないぬいまはこぎいでな)
熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな
(あらたしきとしのはじめのはつはるのきょうふるゆきのいやしけよごと)
新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事
(たまがわにさらすてづくりさらさらになにそこのこのここだかなしき)
多摩川に さらす手作り さらさらに なにそこの児の ここだかなしき
(さきもりにゆくはたがせととうひとをみるがともしさものもいもせず)
防人に 行くはたが背と 問ふ人を 見るがともしさ 物思もせず
(うりはめばこどもおもほゆくりはめばましてしぬはゆいづくよりきたりしものそ)
瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばましてしぬはゆいづくより来たりしものそ
(まなかひにもとなかかりてやすいしなさぬ)
まなかひに もとなかかりて 安眠しなさぬ
(しろかねもくがねもたまもなにせむにまされるたからこにしかめやも)
銀も 金も玉も 何せむに 勝れる宝 子にしかめやも
(ひとはいさこころもしらずふるさとははなぞむかしのかににおいける)
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほいける
(あききぬとめにはさやかにみえねどもかぜのおとにぞおどろかれぬる)
秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる
(おもいつつねればやひとのみえつらんゆめとしりせばさめざらましを)
思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを
(こまとめてそでうちはろうかげもなしさののわたりのゆきのゆうぐれ)
駒とめて 袖うちはらふ 陰もなし 佐野のわたりの 雪の夕暮れ
(こころなきみにもあわれはしられけりしぎたつさわのあきのゆうぐれ)
心なき 身にもあはれは 知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮れ
(たまのおよたえなばたえねながらえばしのぶることのよわりもぞする)
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする