ジン台詞集　移動時

(どんなしじんのことばも、わがさくひんのまえではむいみ)

どんな詩人の言葉も、我が作品の前では無意味

移動時

(かんたんにしんではならぬ。しはおぺらなのだから)

簡単に死んではならぬ。死はオペラなのだから

移動時

(このさつりくをふりつけるとしよう)

この殺戮を振り付けるとしよう

移動時

(さつりくのなんとかんびなことか)

殺戮の何と甘美なことか

移動時

(このよはざんこく。なぜかようにもみにくい)

この世は残酷。なぜ斯様にも醜い

移動時

(みなかめんをかぶっている。わたしはみずからつくることをえらんだだけだ)

皆仮面を被っている。私は自ら創ることを選んだだけだ

移動時

(このしょうどうこそがげいじゅつ。あらがうことなどできぬ)

この衝動こそが芸術。抗うことなど出来ぬ

移動時

(かんぺきだけではたりぬ)

完璧だけでは足りぬ

移動時

(すべてのかめんのおくには、またかめんがある)

全ての仮面の奥には、また仮面がある

移動時

(これこそ、わたしにあたえられしすべて)

これこそ、私に与えられし全て

移動時

(わたしはだれもあやめはしない。すじがきにしがあるだけだ)

私は誰も殺めはしない。筋書きに死があるだけだ

移動時

(まくがおりるまで、えんじつづけるしかないのだ)

幕が下りるまで、演じ続けるしかないのだ

移動時

(わたしはうたえぬうたいて、おどれぬおどりて)

私は歌えぬ歌い手、踊れぬ踊り手

移動時

(かんきゃくにのみ、わたしのすがおをみせよう)

観客にのみ、私の素顔を見せよう

移動時

(だんがんはわたしのたましい。このみをけずってはなつのだ)

弾丸は私の魂。この身を削って放つのだ

移動時

(いつもこれがさいごだといっておきながら、ふたたびぶたいにたってしまうのだ)

いつもこれが最後だと言っておきながら、再び舞台に立ってしまうのだ

移動時

(わたしはじょうねつのどれいなのだ)

私は情熱の奴隷なのだ

移動時

(わたしのさくひんがといかける。しかしそこにこたえはないのだ)

私の作品が問いかける。しかしそこに答えはないのだ

移動時

(どちらがいつわりなのだ？かめんか？すがおか？)

どちらが偽りなのだ？仮面か？素顔か？

移動時

(しゅやくにことばなどいらぬ)

主役に言葉などいらぬ

移動時

(かんきゃくはわたしをみてなにをおもうのか・・・)

観客は私を見て何を思うのか…

移動時

(ああ・・・じゅうとはひにくなものだ・・・)

ああ…銃とは皮肉なものだ…

移動時

(ぼうりょくてきなさくひんにこころひかれるのだ)

暴力的な作品に心惹かれるのだ

移動時

(ちにもほかのいろがあれば、さぞやうつくしいだろうに)

血にも他の色があれば、さぞや美しいだろうに

移動時

(ぶたいのまくをあけよう)

舞台の幕を開けよう

移動時

(ぶたいしょにちのこうふんよ)

舞台初日の興奮よ

移動時

(かんせいとひめい、ともにきかせよう)

歓声と悲鳴、共に聴かせよう

移動時

(さくひんづくりのじゃまはしないでもらおうか)

作品作りの邪魔はしないでもらおうか

移動時

(わたしはひげきのしっぴつをいらいされたのだ)

私は悲劇の執筆を依頼されたのだ

移動時

(いらいぬしは、さいこうのきゃくほんをもとめる)

依頼主は、最高の脚本を求める

移動時

(やくしゃがおどり、うたい、そして・・・しぬ)

役者が踊り、歌い、そして…死ぬ

移動時

(はなやかないしょう、うつくしいけしょう、そして・・・ちのはながさく)

華やかな衣装、美しい化粧、そして…血の花が咲く

移動時

(かんたんだ。わたしがうち、みながおどる)

簡単だ。私が撃ち、皆が踊る

移動時

(わたしをひひょうするものは、なぜかみなはやじにする)

私を批評する者は、何故か皆早死にする

移動時

(このいしょうをよごしたら、ただではおかぬぞ)

この衣装を汚したら、ただでは置かぬぞ

移動時

(みるめのあるいらいぬしには、よろこんできゃくほんをかく)

見る眼のある依頼主には、喜んで脚本を書く

移動時

(けつまつはしときまっているのだ。せめて、うつくしくあやめてやろう)

結末は死と決まっているのだ。せめて、美しく殺めてやろう

移動時

(いらいぬしとわたしのえものにかたるしすを)

依頼主と私の獲物にカタルシスを

移動時

(わたしがしをつむぎだそう)

私が死を紡ぎ出そう

移動時

(ぶたいがひらくまえはつねにきんちょうする。だが・・・それがいい。)

舞台が開く前は常に緊張する。だが…それがいい。

移動時

(じゅうげきのしゅんかんの、むねのふるえよ・・・)

銃撃の瞬間の、胸の震えよ…

移動時

(じゅうとおどるときこそ、せいをかんじるのだ)

銃と踊る時こそ、生を感じるのだ

移動時

(ああ・・・さつりくのこうこつよ・・・)

ああ…殺戮の恍惚よ…

移動時

(じゅうがささやくのだ・・・「うて」と。)

銃が囁くのだ…「撃て」と。

移動時

(ぶたいのねっきょうこそ、いきるかて)

舞台の熱狂こそ、生きる糧

移動時

(うったじゅうの、ぬくもりよ・・・)

撃った銃の、温もりよ…

移動時

(じゅうをうつことで、すべてをかんじられるのだ)

銃を撃つことで、すべてを感じられるのだ

移動時

(せいじゃくとは、もはやにどとえられぬぜいたくよ)

静寂とは、もはや二度と得られぬ贅沢よ

移動時

(さつりくのなかでこそわたしはさきほこる。よあけまえのはなのように)

殺戮の中でこそ私は咲き誇る。夜明け前の花のように

移動時

(いちどはおちたくつじょくのぬま、そこからめぶくはなこそがわたし。ああ・・・うつくしい)

一度は落ちた屈辱の沼、そこから芽吹く花こそが私。ああ・・・美しい

移動時

(かいまくちょくぜんのあのこうこつよ！)

開幕直前のあの恍惚よ！

移動時