孤独な少年の物語

(すこしとくべつだった)

少し特別だった

(こどくなしょうねんのものがたり)

孤独な少年の物語

(ねえさん)

姉さん...

(だれにもりかいされない)

誰にも理解されない

(おおきなめのおとこ)

大きな目の男

(びくたーとうさんになにするの)

ビクター父さんに何するの！

(いきかえらせて ままをいきかえらせてよ)

生き返らせて！ ママを生き返らせてよ！

(いいこねびくたー ねえさんといっしょにかえろう)

いい子ねビクター 姉さんと一緒に帰ろう？

(いやだいいこにしてても ままはしんだじゃないか)

嫌だ！　いい子にしてても ママは死んだじゃないか！

(ままをいきかえらせて)

ママを生き返らせて！

(いきかえらせてよ)

生き返らせてよ！

(びくたー)

ビクター！

(やみにしずむまよなか)

闇に沈む真夜中

(くらいまちをしょうねんは)

暗い街を少年は

(やけたははのしたいだき)

焼けた母の死体抱き

(いっぽいっぽわがやへと)

一歩一歩我が家へと

(おくさまのしたいがもどってきた したいがあるきまわってるんだわ)

奥様の死体が戻ってきた！ 死体が歩き回ってるんだわ

(まじょよまじょのしわざだわ)

魔女よ！　魔女の仕業だわ！

(いきかえらせるんだ)

生き返らせるんだ

(あのこはさけんだ)

あの子は叫んだ

(だれもぼくからままうばえないよ)

誰も僕からママ奪えないよ

(いきかえらせる ぼくがいきかえらせる)

生き返らせる 僕が生き返らせる！

(おきてままおきて)

起きて！　ママ起きて！

(あのこをりかいできずに)

あの子を理解できずに

(まじょのしわざとさわぎたて)

魔女の仕業と騒ぎ立て

(くるったようにひとびとは)

狂ったように人々は

(たいまつかかげた)

松明掲げた！

(ひをつけもやすんだ)

火をつけ！　燃やすんだ！

(あるくしたいぶきみすぎる)

歩く死体　不気味すぎる

(あれはきっとまじょのしわざだ)

あれはきっと　魔女の仕業だ！

(ひをつけもやすんだ)

火をつけ！　燃やすんだ！

(まじょがいたぞ)

魔女がいたぞ！

(いたぞ)

いたぞ！

(もえてしまえ)

燃えてしまえ！

(やきころせ)

焼き殺せ！

(あれはびくたー)

あれはビクター！

(もやして)

燃やして

(だれかたすけて)

誰か助けて！

(びくたーとうさんは)

ビクター　父さんは？

(とうさん)

父さん！！！

(あれはまじょだ)

あれは魔女だ！

(だまされるな)

騙されるな！

(やきつくすんだ)

焼き尽くすんだ

(わたしたちをのこして)

私達を残して

(ちちはいったてんごくへ)

父は逝った天国へ

(つばをはかれせけんに)

唾を吐かれ世間に

(すてられたふたり)

捨てられた二人

(こんにちはわたしじゅりあ)

こんにちは　私ジュリア

(ぼくはびくたーふらんけんしゅたいん)

僕はビクター・フランケンシュタイン

(ながいふゆがすぎれば)

長い冬が過ぎれば

(ひかりそよぐはるがくる)

光そよぐ春が来る

(いつもかみにいのった)

いつも神に祈った

(のろいきえるように)

呪い消えるように

(まいにちほんばかりよんでないで いっしょにあそぼうよびくたー)

毎日本ばかり読んでないで 一緒に遊ぼうよビクター

(ぼくのほんだかえして)

僕の本だ　返して

(なんのほん)

なんの本？

(えがないわ)

絵がないわ

(せいめいのほんしつ)

生命の本質

(せいめいゆうきのけつごう さいぼうでんきにはんのう)

生命　有機の結合 細胞　電気に反応

(しぼうはいちじのほうでん じゅうでんできうるせいめい)

死亡は一時の放電 充電出来得る生命

(かえせ)

返せ

(しらなかったむねのうちを)

知らなかった胸の内を

(あのこははのしをみとめてない)

あの子　母の死を認めてない

(なかないでいいよそのこいぬ)

泣かないでいいよ　その子犬

(かならずいきかえらせる)

必ず生き返らせる

(ほんと)

ほんと？

(ぼくがいきかえらせる)

僕が生き返らせる

(きゃー)

キャー！

(どうしましょうなんてこと)

どうしましょう！　なんてこと！

(しんだいぬがいきかえって)

死んだ犬が生き返って

(ばかをいうな)

馬鹿を言うな

(じゅりあをかみました)

ジュリアを噛みました！

(びくたーすぐにおじさまにあやまって)

ビクターすぐにおじさまに謝って！

(ただぼっちゃまはおじょうさまに)

ただ坊ちゃまはお嬢様に

(まだこどものあさぢえです)

まだ子供の浅知恵です

(ぼくがやりました いぬをいきかえらせました)

僕がやりました 犬を生き返らせました

(いのちをそうぞうしたんです)

命を創造したんです！

(なにをいってるんだびくたー)

何を言ってるんだビクター？

(せいめいゆうきのけつごう さいぼうでんきにはんのう)

生命　有機の結合 細胞　電気に反応

(しぼうはいちじのほうでん じゅうでんできうるせいめい)

死亡は一時の放電 充電出来得る生命

(ろうはいぶつちゅうわさせるけっかん ふはいしたいにもてきおうかのう)

老廃物中和させる血管 腐敗死体にも適応可能

(だがのうにのこるそんしょうりすく)

だが脳に残る損傷リスク

(のろわれてる こいつをすぐりゅうがくさせろ)

呪われてる！ こいつをすぐ留学させろ！

(おじさま)

おじさま！

(いぬをころせ)

犬を殺せ！

(のろわれたかいぶつをあくまのししゃを)

呪われた怪物を　悪魔の使者を！

(いかないでだいすきなの)

行かないで　大好きなの

(ぼくといっしょじゃきみものろわれる)

僕と一緒じゃ　君も呪われる

(なぜおとなはわからないのかな)

なぜ大人は分からないのかな？

(ぼくがきっとまだこどもだからさ)

僕がきっとまだ子供だからさ

(おとなになったらけっこんしてね)

大人になったら結婚してね

(やくそくするよまってて)

約束するよ　待ってて

(びくたー)

ビクター

(さあびくたー れっしゃがでるきょうからひとり)

さあビクター 列車が出る今日から一人

(だからこれいじょうもんだいなど おこさないでちょうだい)

だからこれ以上問題など 起こさないでちょうだい

(かならずぼくはもどってくるよ)

必ず僕は戻ってくるよ

(すこしとくべつだった こどくなしょうねんのものがたり)

少し特別だった 孤独な少年の物語

(だれにもりかいされない)

誰にも理解されない

(おおきなめのおとこ)

大きな目の男

(かみよおまもりください)

神よ　お守りください