土の下 -4-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(がさりとおとがして、よこにいたししょうがそちらにむかいうごきだす。)

ガサリと音がして、横にいた師匠がそちらに向かい動き出す。

(とめるまもなかった。)

止める間もなかった。

(ぼくはいっしゅんひるんだ。ひときのないよるのさんちゅうに、)

僕は一瞬怯んだ。ひと気のない夜の山中に、

(ひとのかたちをしたものがじんこうのあかりにてらされてくうちゅうにある、)

人の形をしたものが人工の明かりに照らされて空中にある、

(ということがこれほどこわいものだとは。)

ということがこれほど怖いものだとは。

(まだしもぼんやりとしたれいたいをみてしまったというほうがましなきがした。)

まだしもぼんやりとした霊体を見てしまったという方がましな気がした。

(それでもししょうのせなかをおってあしをふみだす。かるいくだりざかになっている。)

それでも師匠の背中を追って足を踏み出す。軽い下り坂になっている。

(あおっぽいぽろしゃつにじーんずというふくそうがほぼしょうめんにあらわれる。)

青っぽいポロシャツにジーンズという服装がほぼ正面に現れる。

(そのすがたがうしろむきであることにすこしほっとした。)

その姿が後ろ向きであることに少しホッとした。

(さらにさかをくだりちかづいていくと、かなりたかいいちにあしがあることにきづく。)

さらに坂を下り近づいて行くと、かなり高い位置に足があることに気づく。

(せのびをしてもくつにてがとどかない。)

背伸びをしても靴に手が届かない。

(したいのべるとのいちに、はりだしたえだがいっぽん。)

死体のベルトの位置に、張り出した枝が一本。

(きっとあそこまできのぼりをしてえだにあしをかけたじょうたいかららっかしたのだろう。)

きっとあそこまで木登りをして枝に足をかけた状態から落下したのだろう。

(おそれていたにおいはない。はるとはいえこのきおんのたかさだから、)

恐れていた匂いはない。春とはいえこの気温の高さだから、

(に、みっかもたっていればふはいがすすんでいるはずだ。)

二、三日も経っていれば腐敗が進んでいるはずだ。

(くびをつってからそれほどじかんがたっていないのかもしれない。)

首を吊ってからそれほど時間が経っていないのかも知れない。

(だがしゃつからでているてはいやにしろっぽく、ちのかよったいろをしていなかった。)

だがシャツから出ている手は嫌に白っぽく、血の通った色をしていなかった。

(ししょうはまえにまわりこんで、くびつりしたいのかおのあたりにかいちゅうでんとうをむけている。)

師匠は前に回り込んで、首吊り死体の顔のあたりに懐中電灯を向けている。

(そして「おお」というみじかいこえをはっしてきもちわるそうにあとずさった。)

そして「おお」という短い声を発して気持ち悪そうに後ずさった。

(ぼくはおなじことをするきにはなれず、そのようすをみているだけだった。)

僕は同じことをする気にはなれず、その様子を見ているだけだった。

など

(やがてひとしきりしたいをかんさつしてまんぞくしたのか、)

やがて一頻り死体を観察して満足したのか、

(ししょうはへんにはずんだあしどりでそのしゅういをうろうろとあるきまわりはじめた。)

師匠は変に弾んだ足取りでその周囲をうろうろと歩き回り始めた。

(「おろしてあげたほうがいいでしょうか」)

「下ろしてあげた方がいいでしょうか」

(ぼくはそういいながらも、あのたかさからおろすのはかなりむずかしそうだと)

僕はそう言いながらも、あの高さから下ろすのはかなり難しそうだと

(かんがえていた。たかえだきりばさみかなにかでろーぷをきるしかなさそうだ。)

考えていた。高枝切バサミかなにかでロープを切るしかなさそうだ。

(「まあまてよ」)

「まあ待てよ」

(ししょうはなにかよからぬことをたくらんでいるようなくちょうで、)

師匠はなにか良からぬことを企んでいるような口調で、

(こしにまいたぽしぇっとのなかをさぐりはじめた。)

腰に巻いたポシェットの中を探り始めた。

(さっきまでみずしらずのひとのちいさなはかにてをあわせていたにんげんと)

さっきまで見ず知らずの人の小さな墓に手を合わせていた人間と

(どういつじんぶつとはおもえないたいどだ。このにめんせいが、らしいといえばらしいのだが。)

同一人物とは思えない態度だ。この二面性が、らしいといえばらしいのだが。

(「お、えらい、じぶん。もってきてた」)

「お、偉い、自分。持ってきてた」

(おもちゃのようなちいさなすこっぷがでてきた。)

おもちゃの様な小さなスコップが出てきた。

(ししょうはそれをてにくびつりしたいのあたりにしゃがみこむ。)

師匠はそれを手に首吊り死体のあたりにしゃがみ込む。

(そしてみぎにすこっぷをふりかざしたじょうたいでくるりとくびだけをこちらにむける。)

そして右にスコップを振りかざした状態でくるりと首だけをこちらに向ける。

(「おもしろいことをおしえてやろう」)

「面白いことを教えてやろう」

(そのことばにぞくりとする。はらのひょうめんをなでられたようなかんかく。)

その言葉にぞくりとする。腹の表面を撫でられた様な感覚。

(ずくっ、とつちのうえにすこっぷがふりおろされる。)

ズクッ、と土の上にスコップが振り下ろされる。

(おちばごとじめんがえぐられ、たてつづけにそのせんたんがつちをほりかえしていく。)

落ち葉ごと地面が抉られ、立て続けにその先端が土を掘り返していく。

(「こんぱくのいみしっているな」)

「こんぱくの意味知っているな」

(てをうごかしながらししょうがといかけてくる。)

手を動かしながら師匠が問い掛けてくる。

(こんぱく?たましいのことか。)

魂魄?たましいのことか。

(たしか「こん(こん)」のほうがこころというか、せいしんのたましいのことで、)

確か「魂(こん)」の方が心というか、精神のたましいのことで、

(「ぱく(はく)」のほうはにくたいにやどるたましいのことだったはずだ。)

「魄(はく)」の方は肉体に宿るたましいのことだったはずだ。

(そんなことをいうと、ししょうは「まあそんなかんじだ」とうなずく。)

そんなことを言うと、師匠は「まあそんな感じだ」と頷く。

(「ちゅうごくのどうきょうのしそうでは、こんぱくの「こん」はいんようのうちのようのきで、)

「中国の道教の思想では、魂魄の「魂」は陰陽のうちの陽の気で、

(てんからさずかったものだ。そして「ぱく」のほうはいんのきで、ちからさずかったもの。)

天から授かったものだ。そして「魄」の方は陰の気で、地から授かったもの。

(どちらもひとがしんだあとはにくたいからはなれていく。)

どちらも人が死んだ後は肉体から離れていく。

(だけどそのむかうさきにちがいがある」)

だけどその向かう先に違いがある」

(くちをうごかしながらももくもくとつちをほりすすめている。)

口を動かしながらも黙々と土を掘り進めている。

(ぼくはそのすがたを、すこしはなれたばしょからかいちゅうでんとうでてらしてじっとみている。)

僕はその姿を、少し離れた場所から懐中電灯で照らしてじっと見ている。

(ししょうのずじょうにはやまあいのふかいやみがあり、)

師匠の頭上には山あいの深い闇があり、

(そのやみのそこからひとのあしがわるいじょうだんのようにぶらさがってのびている。)

その闇の底から人の足が悪い冗談のようにぶらさがって伸びている。

(さむけのするこうけいだ。)

寒気のする光景だ。

(「てんからさずかった「こん」は、てんにかえる。そしてちからさずかった「ぱく」は)

「天から授かった「魂」は、天に帰る。そして地から授かった「魄」は

(ちにかえるとされている。げんだいのにほんじんはみんな、ひとがしんだあとに、)

地に帰るとされている。現代の日本人はみんな、人が死んだあとに、

(たましいがぬけでててんへめされていくというてんぷれーとな)

たましいが抜け出て天へ召されていくというテンプレートな

(いめーじをもっているな。ひんこんだ。じつに」)

イメージを持っているな。貧困だ。実に」

(なにがいいたいんだろう。どきどきしてきた。)

なにが言いたいんだろう。ドキドキしてきた。

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