未 本編 -10-

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師匠シリーズ
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1 Jyo 5709 A 5.8 98.0% 529.6 3086 62 61 2025/10/31

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問題文

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(「ぼくのほうはふろばですよ。にかげつくらいまえかな。だいよくじょうのそとにろてんぶろが)

「僕の方は風呂場ですよ。二ヶ月くらい前かな。大浴場の外に露天風呂が

(あるんですけど、かえりがおそくなってとめてもらったときに、)

あるんですけど、帰りが遅くなって泊めてもらった時に、

(おきゃくさんがぜんいんでたあとでひとりではいってたんですよね。)

お客さんが全員出た後で一人で入ってたんですよね。

(そしたらゆげのなかからこっちにすーってすいめんをあるいてくるひとがいるんですよ。)

そしたら湯気の中からこっちにスーッて水面を歩いてくる人がいるんですよ。

(やばい、とおもってたちあがってにげようとしたんですけど、)

やばい、と思って立ち上がって逃げようとしたんですけど、

(おゆにあしをとられてはしれなくて、むこうはすーってちかよってくるでしょう?)

お湯に足を取られて走れなくて、向こうはスーッて近寄ってくるでしょう?

(いきたここちがしなかったですよ。なんとかにげきってだついじょのところまで)

生きた心地がしなかったですよ。なんとか逃げ切って脱衣所のところまで

(きてふりかえったらもうみえなくなってましたけど」)

来て振り返ったらもう見えなくなってましたけど」

(あ、ろてんぶろじたいはすごくよいおゆですから、あとでぜひどうぞ。)

あ、露天風呂自体はすごく良いお湯ですから、後でぜひどうぞ。

(かずおはさりげなくそうつけくわえる。)

和雄はさりげなくそう付け加える。

(「あなたはそのかんぬしのれいのしそんじゃないの?なんでびびってんの」)

「あなたはその神主の霊の子孫じゃないの?なんでびびってんの」

(「いやあ、それなんですけど、なんかぴんとこないんですよね。)

「いやあ、それなんですけど、なんかピンと来ないんですよね。

(ごせんぞさまがなんで「とかの」をたたらないといけないのか、)

ご先祖様がなんで「とかの」を祟らないといけないのか、

(さっぱりわからないんですよ。なにかいってくれればいいのに、)

さっぱり分からないんですよ。なにか言ってくれればいいのに、

(うらめしいのひとこともなしですよ、なんなんでしょう、いったい。)

うらめしいの一言もなしですよ、なんなんでしょう、一体。

(おやじもくびをかしげてますよ」)

親父も首を傾げてますよ」

(ちちおやのしょういちさんはかなりせきにんをかんじていて、)

父親の章一さんはかなり責任を感じていて、

(おかみやかえでにあうたびにあたまをさげているらしい。)

女将や楓に会うたびに頭を下げているらしい。

(おはらいもなんどもいったし、それでどうしてもうまくいかなかったので、)

御祓いも何度も行ったし、それでどうしても上手くいかなかったので、

(はじもがいぶんもなくこうしたことにつよいというかおてらをみずからさがしてきたりと、)

恥も外聞もなくこうしたことに強いというかお寺を自ら探してきたりと、

など

(とにかくかんぬしのれいがでなくなるようにきょうりょくしてくれている。)

とにかく神主の霊が出なくなるように協力してくれている。

(いまのところそのこうかはみられないようだが。)

今のところその効果は見られないようだが。

(じなんとはいえ、せいじんしたむすこがおさななじみのおんなのこのところへいりびたって、)

次男とはいえ、成人した息子が幼馴染の女の子のところへ入り浸って、

(そのかぎょうのじゅうぎょういんのようなまねをしているのをしかりもせずにみのがしている、)

その家業の従業員のような真似をしているのを叱りもせずに見逃している、

(というのも、そうしたうしろめたさがあるせいなのかもしれない。)

というのも、そうした後ろめたさがあるせいなのかも知れない。

(「おとうさんがぐうじなんだよね」)

「お父さんが宮司なんだよね」

(「ええ。もうせんぞだいだいの」)

「ええ。もう先祖代々の」

(ししょうはわかみやじんじゃのぐうじ、いしざかけのかぞくこうせいをせいかくにききだした。)

師匠は若宮神社の宮司、石坂家の家族構成を正確に聞き出した。

(ちちおやがぐうじのしょういち、ははおやがしょうこ、あにがこうがくかんのだいがくいんにざいせきちゅうのおさむ、)

父親が宮司の章一、母親が昌子、兄が皇學館の大学院に在籍中の修、

(そしていもうとがせんもんがっこうせいのみどり。あとちちかたのそぼがいるそうだが、)

そして妹が専門学校生の翠。あと父方の祖母がいるそうだが、

(いまはにしかわまちのびょういんににゅういんちゅうとのことだった。)

今は西川町の病院に入院中とのことだった。

(このいったいのまつのきさともぎょうせいたんいとしてはにしかわまちのいちぶなのだが、)

この一体の松ノ木郷も行政単位としては西川町の一部なのだが、

(このあたりのひとはまちやくばのあるあたりだけをさしてにしかわまちをよんでいるそうだ。)

このあたりの人は町役場のあるあたりだけを指して西川町を呼んでいるそうだ。

(「あにきがだいがくをそつぎょうしたら、もどってくるんですよ。うちでごんねぎをしながら、)

「兄貴が大学を卒業したら、戻ってくるんですよ。うちで権禰宜をしながら、

(にしかわまちのこうこうでれきしをおしえるっていってます。しんせきすじのじんじゃからも、)

西川町の高校で歴史を教えるって言ってます。親戚筋の神社からも、

(しんしょくのてがたりないってそうだんされてるんで、ひょっとしたらそっちに)

神職の手が足りないって相談されてるんで、ひょっとしたらそっちに

(いくかもしれませんけど」)

行くかもしれませんけど」

(どっちにしても、いずれはうちのわかみやじんじゃのあとをつぐんですけどね、あにきは。)

どっちにしても、いずれはうちの若宮神社の跡を継ぐんですけどね、兄貴は。

(かずおはじょうだんめかしてじぶんのにのうでをたたいた。)

和雄は冗談めかして自分の二の腕を叩いた。

(「だから、ぼくなんてかたみがせまいですよ。はやいとこてにしょくをつけないと、)

「だから、僕なんて肩身が狭いですよ。早いトコ手に職をつけないと、

(いずれじっかからおいだされちゃいますから」)

いずれ実家から追い出されちゃいますから」

(かずおのほうはしんどうけいのこーすのあるだいがくではなく、)

和雄の方は神道系のコースのある大学ではなく、

(いっぱんだいがくのほうがくぶにざいせきしている。)

一般大学の法学部に在籍している。

(「しょういちさんのまえのぐうじはおじいさん?」)

「章一さんの前の宮司はお祖父さん?」

(「そうです。もうごねんになりますね」)

「そうです。もう五年になりますね」

(すでになくなっているらしい。ししょうは、「とかの」にあらわれるれいが)

すでに亡くなっているらしい。師匠は、「とかの」に現れる霊が

(そのおじいさんであるかのうせいはないかとたずねた。)

そのお祖父さんである可能性はないかと尋ねた。

(するとかずおは、それはないですねとそくとうする。)

すると和雄は、それはないですねと即答する。

(「とかの」にかえりついたとき、うでどけいをみるとごごよじはんをまわっていた。)

「とかの」に帰り着いたとき、腕時計を見ると午後四時半を回っていた。

(りょかんのげんかんからなかへむかってかえでが「ただいま」とこえをはりあげる。)

旅館の玄関から中へ向かって楓が「ただいま」と声を張りあげる。

(すこししておかみがふろんとのおくからすがたをあらわした。)

少しして女将がフロントの奥から姿を表した。

(「どうでしたか」)

「どうでしたか」

(「いやあ、きたいはずれですね」)

「いやあ、期待はずれですね」

(ししょうはあかるくそういって、やまのうえからのけしきについてしばらくおかみと)

師匠は明るくそう言って、山の上からの景色についてしばらく女将と

(かたりあっていた。ぼくはじすべりのあとでみつけたいしについて)

語り合っていた。僕は地滑りの跡で見つけた石について

(どうしてだまっているのだろうとぎもんにおもった。)

どうして黙っているのだろうと疑問に思った。

(そのししょうのよこがおがすっとこちらにむきなおる。)

その師匠の横顔がスッとこちらに向き直る。

(「おい、つぎをみにいくぞ」)

「おい、次を見に行くぞ」

(「え」)

「え」

(まだどこかいくんですか。)

まだどこか行くんですか。

(ししょうはおかみにこのあたりのみちをたずねている。)

師匠は女将にこのあたりの道を尋ねている。

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