巨人の研究 -1-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7877 7.9 98.4% 351.9 2815 43 55 2025/12/11
2 だだんどん 6210 A++ 6.8 91.8% 413.5 2819 251 55 2025/12/13
3 Jyo 5828 A+ 5.9 97.2% 469.6 2816 79 55 2025/12/11
4 momoka 5583 A 5.7 97.0% 497.4 2865 88 55 2025/12/12

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問題文

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(ししょうからきいたはなしだ。)

師匠から聞いた話だ。

(だいがくにかいせいのなつ。あるねぐるしいよるに、しょぞくしていたさーくるのぶしつで)

大学二回生の夏。ある寝苦しい夜に、所属していたサークルの部室で

(すうにんのなかまがあつまり、よどおしどうでもいいようなはなしをして)

数人の仲間が集まり、夜通しどうでもいいような話をして

(だらだらとすごしていた。)

だらだらと過ごしていた。

(さけもはいっていたし、けっせきさいばんよろしくきらいなぶいんのはなしや)

酒も入っていたし、欠席裁判よろしく嫌いな部員の話や

(いろこいざたにかんするはなしがおもだったが、そのなかであるおなじとしのおんなのこが)

色恋沙汰に関する話が主だったが、その中である同じ年の女の子が

(ふいにながれをたちきって、こんなはなしをはじめた。)

ふいに流れを断ち切って、こんな話を始めた。

(「そういえば、このあいだへんなものみたんだよね」)

「そういえば、このあいだ変なもの見たんだよね」

(「へんなって、どんな」)

「変なって、どんな」

(「なんていうか、こびと?」とじぶんでいいながらこくびをかしげている。)

「なんていうか、小人?」と自分で言いながら小首を傾げている。

(かのじょがいうことには、すうじつまえのゆうぐれどきにまちをあるいていると)

彼女が言うことには、数日前の夕暮れ時に街を歩いていると

(きゅうにあめがふってきたのだそうだ。かさをもっていなかったかのじょは)

急に雨が降ってきたのだそうだ。傘を持っていなかった彼女は

(あわててあめがさけられるろじうらにかけこんだ。)

慌てて雨が避けられる路地裏に駆け込んだ。

(そしてすぐにやみそうかどうか、そらもようをきにしながらおうらいのほうを)

そしてすぐに止みそうかどうか、空模様を気にしながら往来の方を

(ながめていると、あしもとになにかのけはいをかんじてとびあがりそうになった。)

眺めていると、足下になにかの気配を感じて飛び上がりそうになった。

(ねずみかとおもったのだ。)

ネズミかと思ったのだ。

(ところがよくみると、ごみのしゅうようぼっくすのかげにいたのはちいさなにんげんだった。)

ところがよく見ると、ゴミの収容ボックスの陰にいたのは小さな人間だった。

(たいいくずわりのようなかっこうでむひょうじょうのまままえをむいてたたずんでいる。)

体育座りのような格好で無表情のまま前を向いてたたずんでいる。

(おおきさはじぶんのてのひらくらいだろうか。しろいしゃつとあおいずぼん。)

大きさは自分の手のひらくらいだろうか。白いシャツと青いズボン。

(おかっぱあたまのわかもののようなようし。そのあたりはうすぐらくてはっきりとは)

おカッパ頭の若者のような容姿。そのあたりは薄暗くてはっきりとは

など

(みえなかったけれど、にんぎょうとはおもえなかった。)

見えなかったけれど、人形とは思えなかった。

(ぼそぼそとくちもとがうごいているようにもみえる。からだはこおりついたように)

ぼそぼそと口元が動いているようにも見える。身体は凍りついたように

(うごかない。まよこにいるしょうにんのようなものへしせんだけをむけていると、)

動かない。真横にいる小人のようなものへ視線だけを向けていると、

(がんきゅうをうごかすきんにくがつかれてにぶいいたみがやってくる。)

眼球を動かす筋肉が疲れて鈍い痛みがやってくる。

(わたしがきづいているということにしょうにんがきづいたら、いったいどうなるのだろう。)

私が気付いているということに小人が気付いたら、いったいどうなるのだろう。

(そうおもったしゅんかん、どうしようもなくおそろしくなり、あめがふりつづいているどうろへ)

そう思った瞬間、どうしようもなく恐ろしくなり、雨が降り続いている道路へ

(むかってうしろもみずにかけだした。)

向かって後ろも見ずに駆け出した。

(「こわかった、ほんと」)

「怖かった、ほんと」

(こころなしかあおざめたかおではなしおえたかのじょへ「にんぎょうがすてられてただけだろう」)

心なしか青ざめた顔で話し終えた彼女へ「人形が捨てられてただけだろう」

(というつっこみがはいったが、「あれはにんぎょうじゃなかった」とくりかえした。)

という突っ込みが入ったが、「あれは人形じゃなかった」と繰り返した。

(りゆうはちょっかんだそうだ。)

理由は直感だそうだ。

(まわりもそれいじょうついきゅうせず、「なんだかわからないけど、きもちわるいな」)

周りもそれ以上追求せず、「なんだかわからないけど、気持ち悪いな」

(というくうきだけがただよっていた。)

という空気だけが漂っていた。

(「そういえばわたしもみた」)

「そう言えば私も見た」

(べつのおんなのこがくちをあく。)

別の女の子が口を開く。

(「よなかのじゅうにじすぎくらいだったとおもうけど、)

「夜中の十二時過ぎくらいだったと思うけど、

(ばいとがえりにいつものみちをとおってたらへんなことがきこえてきてさあ」)

バイト帰りにいつもの道を通ってたら変なことが聞こえてきてさあ」

(そうしてみぶりてぶりでせつめいしてくれたところをようやくすると、)

そうして身振り手振りで説明してくれたところを要約すると、

(こういうことらしい。)

こういうことらしい。

(いっしゅうかんほどまえのばいとがえりでのこと。じてんしゃでじゅうたくがいをとおりぬけていると、)

一週間ほど前のバイト帰りでのこと。自転車で住宅街を通り抜けていると、

(きゅうにぜんぽうからひとのはなしごえがきこえてきた。)

急に前方から人の話し声が聞こえてきた。

(ちいさなこえだったが、それらしきひとかげがみあたらないのでたえにきになり、)

小さな声だったが、それらしき人影が見当たらないので妙に気になり、

(きょろきょろとしながらぺだるをこぐすぴーどをおとすと、)

キョロキョロとしながらペダルをこぐスピードを落とすと、

(「びん」「びん」というたんごがみみにいってきた。)

「ビン」「ビン」という単語が耳に入ってきた。

(びん?)

ビン?

(こーらのあきびんとかのびんだろうか。そんなことをおもいながら)

コーラの空きビンとかのビンだろうか。そんなことを思いながら

(きこえてきたほうこうをみるが、みんかのげんかんがあるばかりでやはりひとのすがたはない。)

聞こえて来た方向を見るが、民家の玄関があるばかりでやはり人の姿はない。

(おそるおそるちかづいていき、とおくのでんしんばしらにとりつけられたでんとうのともりに)

恐る恐る近づいて行き、遠くの電信柱に取り付けられた電灯の灯りに

(うっすらとてらされているぶろっくべいにそって、そのむこうがわをうかがう。)

うっすらと照らされているブロック塀に沿って、その向こう側を伺う。

(なかにわをへだてたしきちのなかにはあかりのついたへやのまどがいくつかみえるが、)

中庭を隔てた敷地の中には明かりのついた部屋の窓がいくつか見えるが、

(げんかんのもんぴのあたりにはまったくひとのすがたはない。みをのりだして)

玄関の門扉のあたりにはまったく人の姿はない。身を乗り出して

(ぶろっくへいのうちがわをのぞきこんでみたが、やはりだれもひそんではいなかった。)

ブロック塀の内側を覗き込んでみたが、やはり誰も潜んではいなかった。

(おかしいなとおもいつつ、たちさろうとするとまた「びん」「びん」という)

おかしいなと思いつつ、立ち去ろうとするとまた「ビン」「ビン」という

(ちいさなこえがきこえてくる。ぼそぼそとしたそのはなしごえのなかに)

小さな声が聞こえてくる。ボソボソとしたその話し声の中に

(「こーひー」というたんごもまじっている。)

「コーヒー」という単語も混じっている。

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