連想Ⅰ -5-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(なんてことはない。なんてことはない。くらくたってだいじょうぶ。) なんてことはない。なんてことはない。暗くたって大丈夫。 (ほら。すぐにもとのいりぐちだ。) ほら。すぐに元の入り口だ。 (どしん) ドシン (え・・・・・) え・・・・・ (ぶつかった。) ぶつかった。 (だれかに。うそ。) 誰かに。うそ。 (ぜんしんにさむけがはしった。) 全身に寒気が走った。 (くらくてなにもみえない。そこにだれがいるのかもわからない。) 暗くて何も見えない。そこに誰がいるのかも分からない。 (けはいだけがとおりすぎていく。どぞうのほうへむかっているようだ。) 気配だけが通り過ぎていく。土蔵の方へ向かっているようだ。 (まなみはそのばにねをはりそうだったあしをしったして、) 真奈美はその場に根を張りそうだった足を叱咤して、 (こばしりにいりぐちのかいだんのしたまですすんだ。) 小走りに入り口の階段の下まで進んだ。 (そこまでくると、ずじょうからかすかなあかりがもれてきていた。) そこまで来ると、頭上から微かな明かりが漏れてきていた。 (ちゃつぼをかかえたままかいだんをのぼり、ようやくものおきべやまでもどってきた。) 茶壷を抱えたまま階段を上り、ようやく物置部屋まで戻ってきた。 (ここもまだちかなのだとおもうと、うしろもふりかえらずにへやをおうだんして) ここもまだ地下なのだと思うと、後ろも振り返らずに部屋を横断して (いちかいへあがるかいだんをかけのぼった。) 一階へ上がる階段を駆けのぼった。 (かいだんをあがったさきにあるいまでは、) 階段を上がった先にある居間では、 (ちちとははがてーぶるをかこんでおちゃをのんでいた。) 父と母がテーブルを囲んでお茶を飲んでいた。 (「お。あったか。おたからが」) 「お。あったか。お宝が」 (こちらをみながら、のんきそうにちちがそういった。) こちらを見ながら、のん気そうに父がそう言った。 (「ねえ、ここいまだれかおりてった?」) 「ねえ、ここ今誰か降りてった?」
など
(まなみがはやくちにそうきくと、ちちとはははけげんそうなかおをしてかぶりをふった。) 真奈美が早口にそう訊くと、父と母は怪訝そうな顔をしてかぶりを振った。 (「たかこは?」つづけてきこうとしたが、となりのへやからてれびのおととともに、) 「貴子は?」続けて訊こうとしたが、隣の部屋からテレビの音とともに、 (そのいもうとのわらいごえがきこえてきた。) その妹の笑い声が聞こえてきた。 (おかんがする。) 悪寒がする。 (かせいふのちづこさんはきょうはこないひだ。そしてそぼはかぜをひいて) 家政婦の千鶴子さんは今日は来ない日だ。そして祖母は風邪を引いて (おとといからにゅういんちゅうだった。いつものことで、たいしたかぜではないのだが。) 一昨日から入院中だった。いつものことで、大した風邪ではないのだが。 (ではさっきちかのつうろでぶつかったのはだれなのか。) ではさっき地下の通路でぶつかったのは誰なのか。 (「ちょっと、きもちわるいこといわないでよ」) 「ちょっと、気持ち悪いこと言わないでよ」 (ははがほおをひきつらせながら、むりにわらった。) 母が頬を引きつらせながら、無理に笑った。 (「どろぼうか?」) 「泥棒か?」 (ちちがけしきばんでいすからたちあがろうとしたが、) 父が気色ばんで椅子から立ちあがろうとしたが、 (ははがこまったようにはんわらいをしながらそれをいさめる。) 母が困ったように半笑いをしながらそれを諌める。 (「ちょっと、おとうさんも。わたしたち、ずっとここにいたじゃない」) 「ちょっと、お父さんも。わたしたち、ずっとここにいたじゃない」 (そうしてちかのものおきへおりるかいだんをゆびさす。) そうして地下の物置へ降りる階段を指さす。 (そうだ。ものおきにはほかにでいりぐちはない。ちちとははがずっといたこのいまからしか。) そうだ。物置には他に出入り口はない。父と母がずっといたこの居間からしか。 (そのふたりがみていないのだ。だれもおりられたはずはない。) その二人が見ていないのだ。誰も降りられたはずはない。 (ではさっきくらやみのなかでぶつかったのはだれなのだ。) ではさっき暗闇の中でぶつかったのは誰なのだ。 (あやまってかべにぶつかったのではない。) 誤って壁にぶつかったのではない。 (かべにはしっかりとひだりてをついてあるいていたのだから。) 壁にはしっかりと左手をついて歩いていたのだから。 (ふるえてしゃがみこんだまなみのせなかをははがさすり、) 震えてしゃがみ込んだ真奈美の背中を母がさすり、 (ちちはさわぎをききつけていまにやってきたたかことふたりで) 父は騒ぎを聞きつけて居間にやってきた貴子と二人で (かいちゅうでんとうをてにちかにおりていった。) 懐中電灯を手に地下に降りていった。 (けっきょく、しょういちじかんほどちかのものおきとつうろ、) 結局、小一時間ほど地下の物置と通路、 (そしてそのさきのどぞうをしらみつぶしにたんさくしたが、) そしてその先の土蔵をしらみつぶしに探索したが、 (いへんはなにもみつからなかった。かぞくいがいのだれかがいたようなこんせきも。) 異変はなにも見つからなかった。家族以外の誰かがいたような痕跡も。 (さいごにちかつうろのはくねつとうのたまをこうかんしてきたちちが、つかれたようなひょうじょうで) 最後に地下通路の白熱灯の球を交換してきた父が、疲れたような表情で (いまにもどってくるとかぞくよんにんがてーぶるにかおをつきあわせてすわった。) 居間に戻ってくると家族四人がテーブルに顔をつき合わせて座った。 (そしてちんもくにたえられなくなったように、いもうとのたかこがくちをひらいた。) そして沈黙に耐えられなくなったように、妹の貴子が口を開いた。 (「じつはあたしもぶつかったこと、ある」) 「実はあたしもぶつかったこと、ある」 (おどろいた。さっきおきたこととまったくおなじようなできごとがにねんほどまえに) 驚いた。さっき起きたことと全く同じような出来事が二年ほど前に (あったというのだ。いもうとのばあいはなにのまえぶれもなくちかのともりがきえ、) あったと言うのだ。妹の場合は何の前触れもなく地下の灯りが消え、 (てさぐりでつうろをひきかえそうとしたら、) 手探りで通路を引き返そうとしたら、 (えたいのしれない「なにか」にかたがふれたのだと。) 得体の知れない「なにか」に肩が触れたのだと。 (さらにおどろいたことに、それからちちとははもきもちがわるそうにしながら、) さらに驚いたことに、それから父と母も気持ちが悪そうにしながら、 (それぞれにたたいけんをしたはなしをつづけた。すうねんまえのはなしだ。) それぞれ似た体験をした話を続けた。数年前の話だ。 (みんなきのせいだとおもいこむようにしていたのだった。) みんな気のせいだと思い込むようにしていたのだった。 (そんなことがあるわけはないと。しかしこうしてかぞくがだれもおなじたいけんを) そんなことがあるわけはないと。しかしこうして家族が誰も同じ体験を (しているとしったいま、ただのきのせいですむはずはなかった。) していると知った今、ただの気のせいで済むはずはなかった。 (「おはらい、してもらったほうがいいかしら」) 「お祓い、してもらった方がいいかしら」 (ははがおずおずときりだすと、ちちが「なにをばかな」とおこりかけ、) 母がおずおずと切り出すと、父が「なにを馬鹿な」と怒りかけ、 (しかしそのいきおいもあっさりとしぼんだ。) しかしその勢いもあっさりとしぼんだ。 (みんなじぶんのみにおきたたいけんをおもいだし、せすじをつめたくさせていた。) みんな自分の身に起きた体験を思い出し、背筋を冷たくさせていた。
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