師事(再生)-3-(完)

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8063 8.2 98.0% 275.3 2264 44 58 2026/05/10
2 subaru 7852 8.1 96.3% 278.4 2272 86 58 2026/05/12
3 HAKU 7766 8.0 96.9% 286.5 2298 73 58 2026/05/09
4 Jyo 6150 A++ 6.2 97.9% 360.6 2266 48 58 2026/05/09

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問題文

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(「れいどうなんだよ、ここ」) 「霊道なんだよ、ここ」 (え。) え。 (さむけがした。ずっとかんじていたいようなかんかくをことばにされてしまったような。) 寒気がした。ずっと感じていた異様な感覚を言葉にされてしまったような。 (「れいどうってことばはあんまりすきじゃないんだがな」) 「霊道って言葉はあんまり好きじゃないんだがな」 (そうつぶやいたのに、しばらくたってからようやくぼくははんのうする。) そう呟いたのに、しばらくたってからようやく僕は反応する。 (「どうしてですか」) 「どうしてですか」 (「みちっていうと、おうらいってことばがあるように、) 「道って言うと、往来って言葉があるように、 (いききするものみたいじゃないか」) 行き来するものみたいじゃないか」 (「それがどうしたんですか」) 「それがどうしたんですか」 (「みたことがないんだ」) 「見たことがないんだ」 (そういってせんぱいは、ふろんとがらすごしにくろくつぶれたような) そう言って先輩は、フロントガラス越しに黒く潰れたような (あぜみちのさきをじっとみつめる。) あぜ道の先をじっと見つめる。 (「もどってきたやつを」) 「戻ってきたやつを」 (ぼくはいきをとめる。そとにはなにかをつげるやまどりのこえがとおくかすかにひびいている。) 僕は息を止める。外にはなにかを告げる山鳥の声が遠く微かに響いている。 (「ここだけじゃなくて、れいどうっていわれているどのばしょでも。) 「ここだけじゃなくて、霊道って言われているどの場所でも。 (だから、みちってきがしないんだ」) だから、道って気がしないんだ」 (「だったら・・・・・」) 「だったら・・・・・」 (なんですか。) なんですか。 (そんなことばがくちのなかでかすれた。) そんな言葉が口の中で掠れた。 (せんぱいはかおをうごかさず、しせんだけをぼくにむけた。そして「あなだな」といった。) 先輩は顔を動かさず、視線だけを僕に向けた。そして「穴だな」と言った。
など
(あな。) 穴。 (おちていく、もどれないあな。) 落ちて行く、戻れない穴。 (そのことばをきいたしゅんかん、ぼくはぼくがいまいるばしょから) その言葉を聞いた瞬間、僕は僕が今いる場所から (すこしだけじぶんがういているようなさっかくにおちいった。) 少しだけ自分が浮いているような錯覚に陥った。 (いきなりふあんていなくうかんにほうりこまれたような。) いきなり不安定な空間に放り込まれたような。 (そこではぼくらがにちじょうをいきるせかいと、すんぶんたがわず、) そこでは僕らが日常を生きる世界と、寸分たがわず、 (でもどこかがほんのすこしちがう、そんないかいとかさなりあっている。) でもどこかがほんの少し違う、そんな異界と重なりあっている。 (ぼくらがみちとにんしきしているおなじものが、あなのようにくちをあけ、) 僕らが道と認識している同じものが、穴のように口を開け、 (しずかにひとではないなにかをのみこんでいく。) 静かに人ではないなにかを飲み込んでいく。 (そんなそうぞうにからだをふるわせ、じょしゅせきのしーとにふかくすわりなおす。) そんな想像に身体を震わせ、助手席のシートに深く座り直す。 (「さいごのやつだけか」) 「最後のやつだけか」 (ふいにせんぱいがそうきいてきた。) ふいに先輩がそう訊いてきた。 (さいごの?) 最後の? (それをきいたしゅんかん、ぼくはじぶんがおもいちがいをしていたことをしった。) それを聞いた瞬間、僕は自分が思い違いをしていたことを知った。 (ぜんしんのとりはだがさらにました。) 全身の鳥肌がさらに増した。 (せんぱいはこうきいたのだ。) 先輩はこう訊いたのだ。 (みえたのは、さいごにとおったやつだけか?) 見えたのは、最後に通ったやつだけか? (うそだろ。) 嘘だろ。 (そうおもってせんぱいをみすえる。) そう思って先輩を見据える。 (しかしかれはふ、とはなでわらうようにいうのだった。) しかし彼はふ、と鼻で笑うように言うのだった。 (「まあ、いい」) 「まあ、いい」 (せんぱいにはみえていたのだろうか。) 先輩には見えていたのだろうか。 (くるまをとめてからじっといきをひそめていたあいだ、) 車を止めてからじっと息を潜めていた間、 (しずまりかえったくらやみのなか、まどのそとをとおるむすうのくろいかげたちが。) 静まり返った暗闇の中、窓の外を通る無数の黒い影たちが。 (ぼくがさむく、さびしいあぜみちとしてしかかんじていなかったそのくうかんを、かれは・・・・・) 僕が寒く、寂しい畦道としてしか感じていなかったその空間を、彼は・・・・・ (あさひがやまのはからさしこみはじめたころに、) 朝日が山の端から射し込み始めたころに、 (ぼくはそのきみょうなどらいぶからようやくかいほうされた。) 僕はその奇妙なドライブからようやく解放された。 (「じゃあな」) 「じゃあな」 (ねむそうに、てをあげきらないでさゆうにふる。) 眠そうに、手を挙げきらないで左右に振る。 (ういんどうがしまり、おいるこうかんをさぼっているようなしろいけむりをはきだして、) ウインドウが閉まり、オイル交換をサボっているような白い煙を吐き出して、 (ぼろけいよんがあさやけのなかへはしりさっていった。) ボロ軽四が朝焼けの中へ走り去って行った。 (それいらいぼくはそのせんぱいをししょうをあおぐことになったのだった。) それ以来僕はその先輩を師匠を仰ぐことになったのだった。 (きみょうなもの、おそろしいもの、きもちのわるいもの、かなしいもの。) 奇妙なもの、恐ろしいもの、気持ちの悪いもの、悲しいもの。 (そのどれも、ぼくらのにちじょうのほんのすこしとなりにあった。) そのどれも、僕らの日常のほんの少し隣にあった。 (「じゃあ、いこうか」) 「じゃあ、行こうか」 (かれがぼくをふりきり、そういうとき、にちじょうのほんのすこしとなりへとつうじるとびらがあく。) 彼が僕を振り切り、そう言うとき、日常のほんの少し隣へと通じる扉が開く。 (じんせいでいちどしかないぼくのだいがくせいかつのすべてが、そんなものでいろどられていった。) 人生で一度しかない僕の大学生活のすべてが、そんなもので彩られていった。 (それは、かれのしっそうまでつづくのだ。) それは、彼の失踪まで続くのだ。
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