本 -1-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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| 順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ぎんなんまる | 8418 | 神 | 8.6 | 97.3% | 340.9 | 2950 | 80 | 60 | 2026/05/20 |
| 2 | HAKU | 8351 | 神 | 8.5 | 98.0% | 348.1 | 2965 | 58 | 60 | 2026/05/21 |
| 3 | berry | 8299 | 神 | 8.3 | 99.0% | 349.3 | 2927 | 28 | 60 | 2026/06/03 |
| 4 | だったかもしれな | 7864 | 神 | 8.0 | 97.6% | 372.3 | 3001 | 73 | 60 | 2026/05/22 |
| 5 | subaru | 7860 | 神 | 8.2 | 95.6% | 358.1 | 2948 | 133 | 60 | 2026/05/20 |
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問題文
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(だいがくよんかいせいのふゆだった。)
大学四回生の冬だった。
(そのころのおれは、そつぎょうにようするたんいがまったくたりないために、)
そのころの俺は、卒業に要する単位が全く足りないために、
(そうそうとりゅうねんがきまっており、しゅうしょくかつどうもひとだんらくしてまったりしている)
早々と留年が決まっており、就職活動もひと段落してまったりしている
(どうきゅうせいたちとおなじように、ゆうゆうとしたひびをおくっていた。)
同級生たちと同じように、悠々とした日々を送っていた。
(とはいっても、それはがいめんじょうのことであり、じっさいはぼんやりとした)
とは言っても、それは外面上のことであり、実際はぼんやりとした
(しょうらいへのふあんのために、まわたでじわじわしめつけられるようなひびでもあった。)
将来への不安のために、真綿でじわじわ締め付けられるような日々でもあった。
(したしいなかまときのはやいそつぎょうりょこうをおえ、あとはそつろんをがんばるだけだ、)
親しい仲間と気の早い卒業旅行を終え、あとは卒論を頑張るだけだ、
(といってわかれていくかれらをみおくったあと、)
と言って分かれていく彼らを見送った後、
(おれのこころにはぽっかりとあなのようなものがあいていた。)
俺の心にはぽっかりと穴のようなものが空いていた。
(へんかしないことへのしょうそうといらだち。)
変化しないことへの焦燥と苛立ち。
(そしてそのたびのとちゅうでしることになった、かつてすきだったひとに)
そしてその旅の途中で知ることになった、かつて好きだった人に
(こどもができていたというじじつにたいする、なんだかじぶんでもせつめいしがたいかんじょう。)
子どもが出来ていたという事実に対する、なんだか自分でも説明し難い感情。
(そのころのおれをはたからみていれば、「むきりょく」ということばが)
そのころの俺をはたから見ていれば、「無気力」という言葉が
(ぴったりくるじょうたいだっただろう。)
ぴったりくる状態だっただろう。
(しかし、このからだのなかにはさまざまなかっとうやおもいがうずをまき、)
しかし、この身体の中にはさまざまな葛藤や思いが渦を巻き、
(それがそとへふきだすこともなく、ただひたすらたいないでじゅんかんしつつ)
それが外へ噴き出すこともなく、ただひたすら体内で循環しつつ
(にさんかたんそのうどをましているのだった。)
二酸化炭素濃度を増しているのだった。
(「でーとしよう」)
「デートしよう」
(というめーるをみても、そのむきりょくじょうたいからはだっせず、)
というメールを見ても、その無気力状態からは脱せず、
(やれやれというかんじでしきっぱなしのざぶとんからこしをあげた、)
やれやれという感じで敷きっぱなしの座布団から腰を上げた、
など
(というのがじっさいのところだった。)
というのが実際のところだった。
(していされたかれーやにむかうと、めーるのおくりぬしがめずらしくさきにきていて、)
指定されたカレー屋に向かうと、メールの送り主がめずらしく先に来ていて、
(おくまったせきにひとりでちょこんとすわっていた。)
奥まった席に一人でちょこんと座っていた。
(そのしょうじょはくろでかためたごしっくなふくそうをしている。)
その少女は黒で固めたゴシックな服装をしている。
(きょうはなにやらあたまにくろいかざりもつけているようだ。)
今日はなにやら頭に黒い飾りもつけているようだ。
(てんないのふとくていたすうのしせんがそわそわとかのじょにむいているのがふんいきでわかる。)
店内の不特定多数の視線がそわそわと彼女に向いているのが雰囲気で分かる。
(かっこうのめずらしさだけではなく、)
格好の珍しさだけではなく、
(それがよくにあっていてかわいらしいふうぼうをしていることがげんいんだろう。)
それが良く似合っていて可愛らしい風貌をしていることが原因だろう。
(そんなこがひとりですわっているのだから、しかたのないことだった。)
そんな子が一人で座っているのだから、仕方のないことだった。
(そういうしせんがあつまっているところへ、こんなふゆのあいだずっときていて)
そういう視線が集まっているところへ、こんな冬の間ずっと着ていて
(よれよれになっているじゃけっとのめがねおとこがぶしょうひげをはやして、)
ヨレヨレになっているジャケットの眼鏡男が無精ヒゲを生やして、
(のっそりとあるいていくのはさすがにきがひけるおもいがした。)
のっそりと歩いていくのはさすがに気が引ける思いがした。
(「おっす」)
「おっす」
(くろいこがこちらをみてかるくてをあげた。あいかわらずかるいかんじだ。)
黒い子がこちらを見て軽く手を挙げた。相変わらず軽い感じだ。
(かのじょの「でーとしよう」というのは、)
彼女の「デートしよう」というのは、
(「こんにちは」とやくせるのをしっているおれは、)
「こんにちは」と訳せるのを知っている俺は、
(「うす」とだけいってむかいにこしかけた。)
「うす」とだけ言って向かいに腰掛けた。
(いっしゅんせなかにあつまったしせんが、またじょじょにむさんしていくのをかんじながら、)
一瞬背中に集まった視線が、また徐々に霧散していくのを感じながら、
(「きょうはなんだ」ときいた。)
「今日はなんだ」と訊いた。
(そのこはおんきょうというはんどるねーむで、)
その子は音響というハンドルネームで、
(ねっとじょうのおかるとかんけいのふぉーらむにでいりしているへんなこだった。)
ネット上のオカルト関係のフォーラムに出入りしている変な子だった。
(かくいうおれも、かつてそのてのばしょにはよくでいりしていたが、)
かく言う俺も、かつてその手の場所には良く出入りしていたが、
(もうきょうみもきりょくもたえてひさしく、ほとんどあしをふみいれなくなっていた。)
もう興味も気力も絶えて久しく、ほとんど足を踏み入れなくなっていた。
(「るりちゃんがかえったよ」)
「瑠璃ちゃんが帰ったよ」
(おんきょうがかれーのちゅうもんをおえてからくちをひらいた。)
音響がカレーの注文を終えてから口を開いた。
(「かえったって、にゅーよーくへか」)
「帰ったって、ニューヨークへか」
(「うん」)
「うん」
(そうか。あのこはもうこのまちからいなくなったのか。)
そうか。あの子はもうこの街からいなくなったのか。
(おれはおんきょうとふたごのしまいのようなかっこうをしていたしょうじょのことをおもいだす。)
俺は音響と双子の姉妹のような格好をしていた少女のことを思い出す。
(あのふしぎなひとみをしたしょうじょはいちねんはんまえにふいにこのまちにやってきて、)
あの不思議な瞳をした少女は一年半前にふいにこの街にやって来て、
(それをまちかまえていたおそろしいさいやくを、はからずもみずからまねきよせたのだった。)
それを待ち構えていた恐ろしい災厄を、はからずも自ら招き寄せたのだった。
(それもさまざまなものをまきこんで。)
それも様々なものを巻き込んで。
(そのときのことをおもいだして、ぞっととりはだがたつ。)
その時のことを思い出して、ゾッと鳥肌が立つ。
(このまちにじっとひそんでいた、みえざるあくいのことをだ。)
この街にじっと潜んでいた、見えざる悪意のことをだ。
(いまでもげんじつかんがない。)
今でも現実感がない。
(それとかかわったがためにさっていったひとたち。そしてしんでいったひとたち。)
それと関わったがために去って行った人たち。そして死んでいった人たち。
(あたまのなかでゆびおりかぞえても、どこかゆめのなかのできごとのようだ。)
頭の中で指折り数えても、どこか夢の中の出来事のようだ。
(たしかにひととなりはうかぶ。つたえきいたとおりに。)
確かに人となりは浮かぶ。伝え聞いたとおりに。
(そしてあったことがあるひとは、そのかおも。)
そして会ったことがある人は、その顔も。
(しかし、どれもまるでぶあついがらすのむこうがわにあるけしきのようだ。)
しかし、どれもまるで分厚いガラスの向こう側にある景色のようだ。