祖母のこと -3-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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| 順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | berry | 7985 | 神 | 8.1 | 98.2% | 329.1 | 2676 | 48 | 61 | 2026/06/04 |
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問題文
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(いらいにんはうつむいてそっといきをはいた。まるでこごえているようなくちもとのうごきだった。)
依頼人は俯いてそっと息を吐いた。まるで凍えているような口元の動きだった。
(はなしがおわったことをかくにんするためか、)
話が終わったことを確認するためか、
(ししょうはたっぷりじかんをあけてからくちをひらいた。)
師匠はたっぷり時間を開けてから口を開いた。
(「おばあちゃんではなかったと?」)
「お祖母ちゃんではなかったと?」
(「はい」)
「はい」
(こえがふるえている。)
声が震えている。
(「かんおけのなかにいたのは、そぼではありませんでした」)
「棺おけの中にいたのは、祖母ではありませんでした」
(「そんな」)
「そんな」
(ぼくはぜっくしてしまった。)
僕は絶句してしまった。
(それでは、いったいだれのつやだったのだ。)
それでは、一体誰の通夜だったのだ。
(「おばあちゃんではなかったというのは、たしかですか。)
「お祖母ちゃんではなかったというのは、確かですか。
(つまり、その、しんだひとをみたのははじめてだったのでしょう。)
つまり、その、死んだ人を見たのは初めてだったのでしょう。
(しいんにもよりますが、しごにはせいぜんのかおとまったくちがってみえることもあります。)
死因にもよりますが、死後には生前の顔と全く違って見えることもあります。
(しにげしょうというものもあります。)
死化粧というものもあります。
(そのため、まるでべつじんにみえてしまったのではないですか」)
そのため、まるで別人に見えてしまったのではないですか」
(そういうししょうのことばに、よりこさんはあたまをふった。)
そういう師匠の言葉に、頼子さんは頭を振った。
(「いえ。おなじくらいのねんれいのおとしよりではありましたが、)
「いえ。同じくらいの年齢のお年寄りではありましたが、
(たしかにそぼではありませんでした。)
確かに祖母ではありませんでした。
(いまでもしろいはなにかこまれたかおがまぶたのうらにうかびます」)
今でも白い花に囲まれた顔が瞼の裏に浮かびます」
(それでは、いったいだれのつやだったのだ。)
それでは、一体誰の通夜だったのだ。
など
(「おばあちゃんではなかったというのは、たしかですか。)
「お祖母ちゃんではなかったというのは、確かですか。
(つまり、その、しんだひとをみたのははじめてだったのでしょう。)
つまり、その、死んだ人を見たのは初めてだったのでしょう。
(しいんにもよりますが、しごにはせいぜんのかおとまったくちがってみえることもあります。)
死因にもよりますが、死後には生前の顔と全く違って見えることもあります。
(しにげしょうというものもあります。)
死化粧というものもあります。
(そのため、まるでべつじんにみえてしまったのではないですか」)
そのため、まるで別人に見えてしまったのではないですか」
(そういうししょうのことばに、よりこさんはあたまをふった。)
そういう師匠の言葉に、頼子さんは頭を振った。
(「いえ。おなじくらいのねんれいのおとしよりではありましたが、)
「いえ。同じくらいの年齢のお年寄りではありましたが、
(たしかにそぼではありませんでした。)
確かに祖母ではありませんでした。
(いまでもしろいはなにかこまれたかおがまぶたのうらにうかびます」)
今でも白い花に囲まれた顔が瞼の裏に浮かびます」
(「しかし、あなたはだいすきだったおばあちゃんのしをみとめることができず、)
「しかし、あなたは大好きだったお祖母ちゃんの死を認めることが出来ず、
(べつじんだとおもいこんだのではないですか。)
別人だと思い込んだのではないですか。
(そうしたおもいこみはちいさなこどもならありうることでしょう。)
そうした思い込みは小さな子どもならありうることでしょう。
(まして、ずっとわすれていたようなとおいきおくなら・・・・・」)
まして、ずっと忘れていたような遠い記憶なら・・・・・」
(なおもしんちょうにたずねるししょうに、よりこさんはまたあたまをふるのだった。)
なおも慎重に訊ねる師匠に、頼子さんはまた頭を振るのだった。
(「そぼのみぎのまゆのつけねには、おおきないぼがありました。)
「祖母の右の眉の付け根には、大きなイボがありました。
(わたしはそれがきいなって、なんどもさわらせてもらったきおくがあります。)
私はそれが聞いなって、何度も触らせてもらった記憶があります。
(しかしそのひ、かんおけのなかにいたひとのかおにはそれがありませんでした。)
しかしその日、棺おけの中にいた人の顔にはそれがありませんでした。
(もちろんそのことだけではありません。)
もちろんそのことだけではありません。
(ほんとうにまったくのべつじんだったのです」)
本当に全くの別人だったのです」
(きっぱりとしたそういいながらむねをはる。)
きっぱりとしたそう言いながら胸を張る。
(しかしつぎのしゅんかんにはめがたよりなくおよぎ、おびえたひょうじょうがいちめんにひろがった。)
しかし次の瞬間には目が頼りなく泳ぎ、怯えた表情が一面に広がった。
(それではいったいどういうことになるのだ。)
それでは一体どういうことになるのだ。
(しんせきがおばあちゃんのいえにあつまり、おばあちゃんのつやといつわって)
親戚がお祖母ちゃんの家に集まり、お祖母ちゃんの通夜と偽って
(まったくのべつじんをとむらっていたというのか。)
全くの別人を弔っていたというのか。
(そのじょうきょうをそうぞうし、ぼくはうすきみわるくなる。いや、)
その状況を想像し、僕は薄気味悪くなる。いや、
(そんななまやさしいかんかくではなかった。はっきりと、いまわしい、とすらおもった。)
そんな生易しい感覚ではなかった。はっきりと、忌まわしい、とすら思った。
(「・・・・・」)
「・・・・・」
(ししょうはくびをかしげながら、なにごとかかんがえこんでいる。)
師匠は首を傾げながら、なにごとか考え込んでいる。
(「それでは、ごいらいのないようというのは?」)
「それでは、ご依頼の内容というのは?」
(かわりにぼくはそうたずねる。)
代わりに僕はそう訊ねる。
(「ええ」とよりこさんはかおをあげた。)
「ええ」と頼子さんは顔を上げた。
(「そのときおきたことをしらべてほしいのです。)
「その時起きたことを調べて欲しいのです。
(そのできごとのあと、わたしはそぼとあったきおくがありません。)
その出来事のあと、私は祖母と会った記憶がありません。
(いったいそぼはどうしてしまったのか?)
いったい祖母はどうしてしまったのか?
(それから、そのつやのひ、そぼのかわりにかんおけにはいっていたしにんがだれなのか」)
それから、その通夜の日、祖母の代わりに棺桶に入っていた死人が誰なのか」
(そぼのいえはもうずっといぜんにとりこわされ、)
祖母の家はもうずっと以前に取り壊され、
(そのあたりはどうろになってしまっていた。)
そのあたりは道路になってしまっていた。
(そしてよりこさんはついこのあいだ、とうじのことをしっているしんせきを)
そして頼子さんはついこの間、当時のことを知っている親戚を
(ようやくさがしあてたという。)
ようやく探し当てたという。
(しかしみみもとおくなっていたそのしんせきは、せつこさんのつやに)
しかし耳も遠くなっていたその親戚は、せつ子さんの通夜に
(おかしなことはなかったとくりかえすだけだった。)
おかしなことはなかったと繰り返すだけだった。