テレビ -1-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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(ししょうからきいたはなしだ。)
師匠から聞いた話だ。
(だいがくいっかいせいのなつだった。)
大学一回生の夏だった。
(おかるとどうのししょうであるところのかなこさんが、)
オカルト道の師匠であるところの加奈子さんが、
(ひとからもらったというたいりょうのそうめんをしょぶんしようと、)
人からもらったという大量のそうめんを処分しようと、
(「だいいっかいだいそうめんまつり」としょうしてぼくをよびつけた。)
「第一回大そうめん祭り」と称して僕を呼びつけた。
(いたむようなものでもないし、そんなにあせってたべなくてもいいのに、)
痛むようなものでもないし、そんなに焦って食べなくてもいいのに、
(とおもっていたのだが、じっさいにやまとつまれたそのふくろのりょうをみて)
と思っていたのだが、実際に山と積まれたその袋の量を見て
(「あ、むりだ」とおもった。)
「あ、無理だ」と思った。
(ししょうのすむぼろあぱーとのいっしつで、つぎつぎとうでられていくそうめん。)
師匠の住むボロアパートの一室で、次々と茹でられていくそうめん。
(さいしょは「うまいうまい」とよろこんでたべていたのが、)
最初は「うまいうまい」と喜んで食べていたのが、
(「いちにちじゅうたべまくろうぜ」というたのしいこんせぷとにはいがいなけっかんがあり、)
「一日中食べまくろうぜ」という楽しいコンセプトには意外な欠陥があり、
(にじゅっぷんもたったころにはぎぶあっぷせんげんがでかかっていた。)
二十分も経ったころにはギブアップ宣言が出かかっていた。
(「はらがはりました」)
「腹が張りました」
(いちおういってみたが、まつりのじっこういいんのはんだんはぞっこうだった。)
一応言ってみたが、祭りの実行委員の判断は続行だった。
(それからはてれびをみながらたべてはやすみ、)
それからはテレビを見ながら食べては休み、
(たべてはやすみというこういをだらだらとくりかえしていた。)
食べては休みという行為をだらだらと繰り返していた。
(「こじま、もっとくえ」)
「小島、もっと食え」
(「なかじまです」)
「中島です」
(いつもししょうにたべものをたかりにきているとなりのへやのじゅうにんもよばれていたのだが、)
いつも師匠に食べ物をたかりに来ている隣の部屋の住人も呼ばれていたのだが、
(さすがにそうめんばかりたべつづけるのにはげんなりしてきたようで、)
さすがにそうめんばかり食べ続けるのにはげんなりしてきたようで、
など
(はしがとまりがちになっている。)
箸が止まりがちになっている。
(「かたいものがくいたい」)
「固いものが食いたい」
(ぼくがぼそりとくちにしたことばに、ふたりともむはんのうだった。)
僕がぼそりと口にした言葉に、二人とも無反応だった。
(みなまでいうな、というやつだ。)
みなまで言うな、というやつだ。
(へやはていたいしたふんいきにつつまれ、ししょうなどはいつのまにか)
部屋は停滞した雰囲気に包まれ、師匠などはいつの間にか
(てれびのまえによこになって、たてたうでをまくらによがのようなぽーずで、)
テレビの前に横になって、立てた腕を枕にヨガのようなポーズで、
(ゆかにおいたうつわからずるずるとそうめんをすすっていた。)
床に置いた器からずるずるとそうめんを啜っていた。
(としごろのじょせいのするかっこうではないが、なんだかにあうのでふしぎだった。)
年頃の女性のする格好ではないが、なんだか似合うので不思議だった。
(さいしょにつけていたちゃんねるではかいがいのどらまのさいほうそうをやっていた。)
最初につけていたチャンネルでは海外のドラマの再放送をやっていた。
(とちゅうからみたのではなしはよくわからなかったが、)
途中から見たので話はよく分からなかったが、
(どうやらぼくじょうしゅであるしゅじんこうのおさないむすこがはやりやまいでしんでしまう。)
どうやら牧場主である主人公の幼い息子が流行り病で死んでしまう。
(というひげきてきなかいのようだった。)
という悲劇的な回のようだった。
(「かみはいないのか!」)
「神はいないのか!」
(むすこのなきがらをかかえてそらにほえるしゅじんこうがはくしんのえんぎで、)
息子の亡骸を抱えて空に吠える主人公が迫真の演技で、
(ものがたりのはいけいもわからないのにおもわずなみだぐんでしまいそうになった。)
物語の背景も分からないのに思わず涙ぐんでしまいそうになった。
(しかしししょうはゆかにほおづえをついたかっこうのまま、おとをたててそうめんをすすりあげ、)
しかし師匠は床に頬杖をついた格好のまま、音を立ててそうめんを啜り上げ、
(そしゃくのあいまにそのしーんについてのこめんとをくちにした。)
咀嚼のあい間にそのシーンについてのコメントを口にした。
(「じひぶかいかみのふざいをなげくやつらは、)
「慈悲深い神の不在を嘆く奴らは、
(どうしてむじひなかみのじつざいをおそれないのかね」)
どうして無慈悲な神の実在を畏れないのかね」
(らくてんてきなことだ。ししょうははなでわらうようにつぶやいた。)
楽天的なことだ。師匠は鼻で笑うように呟いた。
(そのことばにこじまだかなかじまだかというなまえのりんじんも、そのなにをかんがえているのか)
その言葉に小島だか中島だかという名前の隣人も、その何を考えているのか
(わからないたまごのようなのっぺりしたかおでちいさくうなずいている。)
分からない卵のようなのっぺりした顔で小さく頷いている。
(そのどらまがおわると、こんどはたいふうのにゅーすがはじまった。)
そのドラマが終わると、今度は台風のニュースが始まった。
(わりとおおがたで、いまはいしがきじまのあたりにいるらしい。)
わりと大型で、今は石垣島の辺りにいるらしい。
(えいぞうではよこなぐりのあめのむこうにあれたうみがうつっていた。)
映像では横殴りの雨の向こうに荒れた海が映っていた。
(「おお~」というこえをあげて、ししょうがたのしそうにてにもったはしで)
「おお〜」という声をあげて、師匠が楽しそうに手に持った箸で
(てれびがめんをさした。)
テレビ画面を指した。
(「たいふうといえばさあ。なんねんかまえ、おきなわのほうのもっとちいさいしまにたいざいしてたときに)
「台風といえばさあ。何年か前、沖縄の方のもっと小さい島に滞在してた時に
(そうぐうしてさあ、しぬかとおもったことがあるよ」)
遭遇してさあ、死ぬかと思ったことがあるよ」
(「たいざいって、なにしてたんですか」)
「滞在って、なにしてたんですか」
(「そのしまではもがりのしゅうかんがうけつがれているってうわさをきいてな。)
「その島では殯(もがり)の習慣が受け継がれているって噂を聞いてな。
(いちどみてみたかったんだ」)
一度見てみたかったんだ」
(「もがりっていうと、あれですか。)
「殯って言うと、あれですか。
(のこされたかぞくがしたいといっしょにすごすぎしきですよね」)
残された家族が死体と一緒に過ごす儀式ですよね」
(そのしたいをあんちするたてものをもやというらしい。)
その死体を安置する建物を喪屋(もや)というらしい。
(「でもだめだった。よそものにはみせてくんないんだ。)
「でもダメだった。よそ者には店てくんないんだ。
(それでもふなつきばのちかくでてんとせいかつしていすわってたら、)
それでも船着場の近くでテント生活して居座ってたら、
(しらないあいだにおおがたたいふうがちかづいててさ。)
知らない間に大型台風が近づいててさ。
(さすがにそれはおしえてくれて、そんちょうさんのいえにひなんさせてもらったんだ」)
さすがにそれは教えてくれて、村長さんの家に避難させてもらったんだ」