テレビ -2-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(「べつにしぬようなめにあってないじゃないですか」) 「別に死ぬような目にあってないじゃないですか」 (「そのあとだよ。きゃくまをかしてもらって、ひさしぶりのふとんでおもいきり) 「その後だよ。客間を貸してもらって、久しぶりの布団で思い切り (あしをのばしてねてたら、いえのそとがなんかわいわいうるさいんだ。) 足を伸ばして寝てたら、家の外がなんかワイワイうるさいんだ。 (よるのじゅうにじをまわって、あめもかぜもかなりつよくなってきてたけど、) 夜の十二時を回って、雨も風もかなり強くなってきてたけど、 (そのふきつけるおととはべつに、ふくすうのにんげんがおおごえでどなってるのがきこえてくる。) その吹き付ける音とは別に、複数の人間が大声で怒鳴ってるのが聞こえてくる。 (なんだろうとおもってじぶんもそとへでてみたら、そんちょうさんのいえのうらてに) なんだろうと思って自分も外へ出てみたら、村長さんの家の裏手に (かぞくとかきんじょのひとがあつまってた」) 家族とか近所の人が集まってた」 (「うらやまがどしゃくずれしかかってたとかですか」) 「裏山が土砂崩れしかかってたとかですか」 (「ああ、ようするにそういうことなんだけど、ちょっとようすがへんなんだ」) 「ああ、ようするにそういうことなんだけど、ちょっと様子が変なんだ」 (ししょうはめのまえにみぎてをひろげて、ちゅうをなでるようなしぐさをする。) 師匠は目の前に右手を広げて、宙を撫でるような仕草をする。 (「そんちょうさんのいえのうらやまはいしがきをおおわれていて、) 「村長さんの家の裏山は石垣を覆われていて、 (ちょっとしたとりでみたいになってるんだ。) ちょっとした砦みたいになってるんだ。 (もともとほんとうにとちのりょうしゅのとりでがあったばしょらしい。そのこんせきだな。) 元々本当に土地の領主の砦があった場所らしい。その痕跡だな。 (で、そのいしがきがいまでいうようへき、つまりどどめのかわりになってるんだけど、) で、その石垣が今で言う擁壁、つまり土止めの代わりになってるんだけど、 (さすがにこんくりーとせいのようながんじょうさはないから、) さすがにコンクリート製のような頑丈さはないから、 (こういうたいふうのときにはくずれるきけんせいがあるってんで、) こういう台風の時には崩れる危険性があるってんで、 (みんなしんぱいして、れいんこーとをきこんでみにきたらしい。) みんな心配して、レインコートを着込んで見に来たらしい。 (そこまではすぐにわかったんだけど、なぜかみんないしがきのほうをみたまま) そこまではすぐに分かったんだけど、何故かみんな石垣の方を見たまま (ぼうっとつったってるんだ」) ぼうっと突っ立ってるんだ」 (「なにをしてたんですか」) 「なにをしてたんですか」
など
(「ただたってるだけ。がたがたふるえながら」) 「ただ立ってるだけ。ガタガタ震えながら」 (ふるえていた?いまにもいしがきがくずれそうだったからだろうか。) 震えていた?今にも石垣が崩れそうだったからだろうか。 (でもそれならはやくそのばからにげないといけないだろう。) でもそれなら早くその場から逃げないといけないだろう。 (「わたしもそうおもって、そんちょうさんのれいんこーとのはしをひっぱって、) 「わたしもそう思って、村長さんのレインコートの端を引っ張って、 (にげましょうっていったんだけど、うごかないんだ。) 逃げましょうって言ったんだけど、動かないんだ。 (じっと、いしがきのいってんをみつめてる。) じっと、石垣の一点を見つめてる。 (そのしせんのさきをおいかけたとき、ぞくっとしたね」) その視線の先を追いかけた時、ぞくっとしたね」 (ししょうはくびをひねり、かおをじめんにへいこうになるようにかたむけた。) 師匠は首を捻り、顔を地面に平行になるように傾けた。 (「かおがね。いしがきのなかにあるんだ。にんげんのかおだ。) 「顔がね。石垣の中にあるんだ。人間の顔だ。 (みっしりとくまれたいしづみのなかに、こんなふうによこになったかおがはまっている。) みっしりと組まれた石積みの中に、こんな風に横になった顔が嵌っている。 (まるではじめから、そこにあったみたいに。) まるで始めから、そこにあったみたいに。 (そのかおが、くつうにゆがんで、なにかうめいてるんだ。) その顔が、苦痛に歪んで、なにか呻いてるんだ。 (そのひめいみたいなこえが、ふううのなかにまざってきこえてくる」) その悲鳴みたいな声が、風雨の中に混ざって聴こえてくる」 (いたい・・・・・) 痛い・・・・・ (いたい・・・・・) 痛い・・・・・ (そういってたんだ。) そう言ってたんだ。 (「つぎのしゅんかん、そのかおがつぶれた。うえのいしにおしつぶされて。) 「次の瞬間、その顔が潰れた。上の石に押し潰されて。 (めがとびだしたところまでみえたよ。はっきりと。) 目が飛び出したところまで見えたよ。はっきりと。 (つぶされたかおがぐしゃぐしゃになって、いしがきのあいだからながれだした。) 潰された顔がぐしゃぐしゃになって、石垣の間から流れ出した。 (すぐにそのはぬけみたいになったいしがきのあいだから、) すぐにその歯抜けみたいになった石垣の間から、 (ふんすいみたいにつちのまざったみずがふきだしてきて、) 噴水みたいに土の混ざった水が噴き出してきて、 (みのきけんをかんじたんだ。) 身の危険を感じたんだ。 (「はしれ」ってさけんだら、やっとみんなわれにかえったみたいにはんのうして、) 「走れ」って叫んだら、やっとみんな我に返ったみたいに反応して、 (にげはじめた。) 逃げ始めた。 (かんいっぱつだったよ。) 間一髪だったよ。 (はしってにげるすぐうしろからいしがきがくずれるものすごいおとがして、) 走って逃げるすぐ後ろから石垣が崩れる物凄い音がして、 (それがちかづいてくるんだ。いきたここちがしなかった」) それが近づいてくるんだ。行きた心地がしなかった」 (たんたんとかたるししょうだったが、おそろしすぎるたいけんだ。) 淡々と語る師匠だったが、恐ろしすぎる体験だ。 (けっきょく、そんちょうさんのいえまではどしゃはやってこず、) 結局、村長さんの家までは土砂はやって来ず、 (ぜんいんそこまでなんとかにげのびて、ことなきをえたらしい。) 全員そこまでなんとか逃げ延びて、ことなきを得たらしい。 (「そのかおはなんだったんですか」) 「その顔はなんだったんですか」 (おそるおそるきくと、ししょうはむずかしいかおをする。) 恐る恐る訊くと、師匠は難しい顔をする。 (「わからない。ただむかしから、そのしまじゃあときどきそんなことがおきるんだと。) 「分からない。ただ昔から、その島じゃあ時々そんなことが起きるんだと。 (いしがきはそのしまのいたるところにあるんだけど、) 石垣はその島のいたるところにあるんだけど、 (それがくずれるときにはかならずぜんちょうがあって、いしづみのいちぶがその、) それが崩れる時には必ず前兆があって、石積みの一部がその、 (わたしたちがみたようなかおにかわってしまってるんだ。) わたしたちが見たような顔に変わってしまってるんだ。 (かおはもろくて、すぐにつぶれてしまう。そこからいしがきがくずれるんだ」) 顔はもろくて、すぐに潰れてしまう。そこから石垣が崩れるんだ」 (これにはふたとおりのいみがかんがえられる。) これには二通りの意味が考えられる。 (ししょうはそういってゆびをにほんたてた。) 師匠はそう言って指を二本立てた。
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