『妖怪博士』江戸川乱歩18

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 sai 8697 8.9 97.3% 524.4 4689 128 100 2024/05/29
2 berry 7945 8.0 98.2% 574.4 4648 84 100 2024/05/16
3 HAKU 7902 8.1 97.2% 577.3 4697 135 100 2024/05/15
4 subaru 7856 8.1 96.0% 570.6 4677 194 100 2024/05/21
5 □「いいね」する 7804 8.1 96.4% 579.7 4698 174 100 2024/05/30

関連タイピング

問題文

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(どくしゃしょくんは、このしょだなのしかけをよくごぞんじですが、)

読者諸君は、この書棚の仕掛けをよくご存知ですが、

(はじめてみるあいかわしとなかむらかかりちょうは、あまりのふしぎさに、)

初めて見る相川氏と中村係長は、余りの不思議さに、

(あっけにとられてしまいました。それとどうじに、)

あっけにとられてしまいました。それと同時に、

(とのむらたんていはよくここまでしらべたものだと、すっかり)

殿村探偵はよくここまで調べたものだと、すっかり

(かんしんしてしまいました。「このおくに、ちかしつへおりる)

感心してしまいました。「この奥に、地下室へ下りる

(かいだんがあるのじゃ」とのむらはとくいらしくせつめいしながら、)

階段があるのじゃ」殿村は得意らしく説明しながら、

(ろうそくをかざしてさきにたち、どくしゃしょくんもごしょうちの)

ロウソクをかざして先に立ち、読者諸君もご承知の

(いしょうべやとでもいうようなみっしつをとおりすぎて、せまい)

衣装部屋とでもいうような密室を通り過ぎて、狭い

(かいだんをおりていきます。まがりくねったつえをついて、)

階段を下りて行きます。 曲がりくねった杖をついて、

(せなかをまるくして、えっちらおっちらおりていく)

背中を丸くして、エッチラオッチラ下りて行く

(ようすは、このいんきなばめんによくにあっており、とのむらが)

様子は、この陰気な場面によく似合っており、殿村が

(にんげんではなくて、どこかよそのせかいからきたまものの)

人間ではなくて、どこかよその世界から来た魔物の

(ようにもかんじられるのでした。なかむらかかりちょうはまんいちの)

ようにも感じられるのでした。 中村係長は万一の

(ばあいのために、よういしてきたぴすとるをとりだし、)

場合のために、用意してきたピストルを取り出し、

(あいかわしをうしろにかばうようにして、ゆだんなくあたりに)

相川氏を後ろにかばうようにして、油断なくあたりに

(めをくばりながら、とのむらのあとにしたがいます。)

目を配りながら、殿村のあとにしたがいます。

(かいだんをおりててつのとびらをひらくと、たいじしょうねんがぶきみな)

階段を下りて鉄の扉をひらくと、泰二少年が不気味な

(ろうばにくるしめられ、おおのくんをふくむさんにんのしょうねんが)

老婆に苦しめられ、大野君を含む三人の少年が

(へびぜめにあった、あのおそろしいちかしつです。)

ヘビ責めにあった、あの恐ろしい地下室です。

(しかし、いまはそこにひとのかげもなく、ただじめじめした)

しかし、今はそこに人の影もなく、ただジメジメした

など

(ちかしつとくゆうのにおいが、はなをうつばかりでした。)

地下室特有の匂いが、鼻をうつばかりでした。

(とのむらはろうそくをふりてらして、そのちかしつのすみから)

殿村はロウソクを振り照らして、その地下室の隅から

(すみまでしらべまわりましたが、なにひとつうたがわしいものも)

隅まで調べまわりましたが、何一つ疑わしい物も

(ありません。ひとがかくれるようなどうぐもないのです。)

ありません。人が隠れるような道具もないのです。

(「おかしいぞ。ここは、まるでからっぽじゃ」とのむらは、)

「おかしいぞ。ここは、まるで空っぽじゃ」殿村は、

(いぶかしげにつぶやきました。いぶかしくおもうのは、)

いぶかしげにつぶやきました。 いぶかしく思うのは、

(とのむらだけではありません。どくしゃしょくんも、おなじく)

殿村だけではありません。読者諸君も、同じく

(こくびをかしげていらっしゃることでしょう。たいじくんと)

小首をかしげていらっしゃることでしょう。泰二君と

(さんにんのしょうねんは、いったいぜんたいどこへくもがくれしてしまった)

三人の少年は、一体全体どこへ雲隠れしてしまった

(のでしょう。それから、あのおびただしい)

のでしょう。それから、あのおびただしい

(あおだいしょうは、どこへいったのでしょう。へびが)

アオダイショウは、どこへ行ったのでしょう。ヘビが

(はいっていた、あのたるさえも、いまはかげもかたちもない)

入っていた、あのタルさえも、今は影も形もない

(のです。それから、そとにまたせてあったけいじたちの)

のです。 それから、外に待たせてあった刑事たちの

(てをかりて、たてもののにかいからちかのへやという)

手を借りて、建物の二階から地下の部屋という

(へやをくまなくそうさくしましたが、どこにもひとのけはい)

部屋をくまなく捜索しましたが、どこにも人の気配

(さえなく、このようかんはほんとうにあきやであることが)

さえなく、この洋館は本当に空き家であることが

(わかりました。いくらさがしてもみつからず、こまり)

分かりました。 いくら探しても見つからず、困り

(はてていやけがさしたとのむらと、あいかわしとなかむらかかりちょうの)

果てて嫌気がさした殿村と、相川氏と中村係長の

(さんにんは、またもとのしょさいへひきかえしました。そして、)

三人は、また元の書斎へ引き返しました。そして、

(おおきいつくえのまえにたってだまりこんだまま、たがいに)

大きい机の前に立って黙り込んだまま、互いに

(まじまじとめをみあわせました。「とのむらさん、けっきょく)

まじまじと目を見合わせました。「殿村さん、結局

(われわれは、はんにんがひっこしたあと、おおげさにふみこんだ)

我々は、犯人が引っ越したあと、大袈裟に踏み込んだ

(というわけですね」そうさかかりちょうが、あいかわしからこんやに)

という訳ですね」捜査係長が、相川氏から今夜に

(しょうかいされたばかりの、きかいなたんていをうたがわしげに)

紹介されたばかりの、奇怪な探偵を疑わしげに

(じろじろながめながら、せめるようにいいました。)

ジロジロながめながら、責めるように言いました。

(「いや、そんなわけはない。はんにんはたしかに、)

「いや、そんな訳はない。犯人は確かに、

(このたてもののなかにいるはずです。はんにんだけじゃない。)

この建物の中に居るはずです。犯人だけじゃない。

(れいのしょるいも、こどもたちも、ちゃんとここにあるはず)

例の書類も、子どもたちも、ちゃんとここにあるはず

(です」とのむらはきでもくるったようなめで、)

です」殿村は気でも狂ったような目で、

(きょろきょろとあたりをみまわしながら、つぶやく)

キョロキョロとあたりを見まわしながら、つぶやく

(のです。「しかし、だれもいないじゃありませんか。)

のです。「しかし、だれも居ないじゃありませんか。

(きみは、まださがしかたがたりないとでもいうのですか」)

きみは、まだ探し方が足りないとでも言うのですか」

(「まってください。これにはひみつがある。わしは)

「待ってください。これには秘密がある。わしは

(よにんのこどもたちが、すぐめのまえにいるようなきが)

四人の子どもたちが、すぐ目の前に居るような気が

(するのです。しかも、それをみつけだすことが)

するのです。しかも、それを見つけ出すことが

(できないのです」とのむらは、すてっきをことことと)

出来ないのです」 殿村は、ステッキをコトコトと

(いわせながら、へやじゅうをいったりきたり、いそがしくあるき)

いわせながら、部屋中を行ったり来たり、忙しく歩き

(はじめました。けむしのようなふといまゆのしたに、ぶきみで)

始めました。 毛虫のような太い眉の下に、不気味で

(するどいめがらんらんとかがやいています。くちびるからとび)

鋭い目がランランと輝いています。唇から飛び

(だしたでっぱのあいだに、ぷつぷつとあわをふいて、なにかを)

出した出っ歯の間に、プツプツと泡を吹いて、何かを

(しきりにつぶやいています。こころをいってんにしゅうちゅうして、)

しきりにつぶやいています。心を一点に集中して、

(なにごとかをかんがえだそうとおもっているようすです。しばらく)

何事かを考えだそうと思っている様子です。しばらく

(そうしているうちに、とのむらのあしがぴったりととまり)

そうしているうちに、殿村の足がピッタリと止まり

(ました。そして、「そうじゃ、そうにちがいない。)

ました。そして、「そうじゃ、そうに違いない。

(わしはなんというばかものだ。そんなことがわからない)

わしは何というバカ者だ。そんなことが分からない

(なんて」と、みょうなひとりごとをいったかとおもうと、)

なんて」と、みょうな独り言を言ったかと思うと、

(へやのよすみにたててあるせっこうぞうのひとつ、どくしゃしょくんも)

部屋の四隅に立ててある石膏像の一つ、読者諸君も

(ごしょうちのそふぉくれすのぞうのまえに、つかつかとすすみ、)

ご承知のソフォクレスの像の前に、ツカツカと進み、

(いきなりすてっきをふりあげて、そのせっこうぞうのかたを)

いきなりステッキを振り上げて、その石膏像の肩を

(めちゃくちゃになぐりはじめました。ぎりしゃのだいしじんである)

滅茶苦茶に殴り始めました。 ギリシャの大詩人である

(そふぉくれすのぞうはゆらゆらとゆれて、まず)

ソフォクレスの像はユラユラと揺れて、まず

(そのみぎうでがつけねからおれてこなごなにくだけちり、)

その右腕が付け根から折れて粉々に砕け散り、

(そのはへんがたんていのうでやせなかに、ゆきのようにふりかかる)

その破片が探偵の腕や背中に、雪のように降りかかる

(のでした。とのむらたんていは、きでもくるったのでしょうか。)

のでした。殿村探偵は、気でも狂ったのでしょうか。

(それとも、このとっぴなこうどうには、なにかふかいわけでも)

それとも、この突飛な行動には、何か深い訳でも

(あったのでしょうか。)

あったのでしょうか。

(「せっこうぞうのひみつ」)

「石膏像の秘密」

(そのばにいあわせたあいかわぎしちょうとなかむらそうさかかりちょうは、)

その場に居合わせた相川技師長と中村捜査係長は、

(びっくりしてとのむらのそばにかけよりました。)

ビックリして殿村のそばに駆け寄りました。

(「とのむらさん、なにをするのです。はんにんがみつからない)

「殿村さん、何をするのです。犯人が見つからない

(といって、つみもないせっこうぞうにあたりちらすことはない)

といって、罪もない石膏像に当たり散らすことはない

(じゃありませんか。こどもらしいまねはやめなさい」)

じゃありませんか。子どもらしい真似は辞めなさい」

(あいかわぎしちょうがとのむらたんていのふりあげたみぎうでをささえて、)

相川技師長が殿村探偵の振り上げた右腕を支えて、

(しかるようにいいました。するととのむらは、)

しかるように言いました。すると殿村は、

(はらだたしげに、そのてをはらいのけながら、みにくいかおを)

腹立たしげに、その手を払いのけながら、醜い顔を

(いっそうみにくくゆがめて、どなりかえすのです。「つみがない)

一層醜くゆがめて、どなり返すのです。「罪がない

(だと。ふふん、つみがないどころか、このせっこうぞうこそ)

だと。フフン、罪がないどころか、この石膏像こそ

(くせものなのじゃ。あんたがた、それがわからんのか。)

クセ者なのじゃ。あんた方、それが分らんのか。

(まあ、よくみてごらん。このぞうには、あしがないじゃ)

まあ、よく見てご覧。この像には、足がないじゃ

(ないか。ほんもののそふぉくれすのぞうには、ころものしたから)

ないか。本物のソフォクレスの像には、衣の下から

(にほんのあしがにゅっとでていたはずじゃ。ところが、)

二本の足がニュッと出ていたはずじゃ。ところが、

(このせっこうぞうにはあしがない。したまですっかりころもでかくれて)

この石膏像には足がない。下まですっかり衣で隠れて

(しまっている。ほかのみっつのぞうも、みなおなじことだ。)

しまっている。他の三つの像も、みな同じことだ。

(ひとつとしてあしがむきだしになっているやつはない。)

一つとして足がむきだしになっているやつはない。

(あんたがた、これをふしぎにはおもわないのかね。)

あんた方、これを不思議には思わないのかね。

(こだいぎりしゃのちょうこくは、まっぱだかのばあいをのぞき、)

古代ギリシャの彫刻は、真っ裸の場合をのぞき、

(ころもをきていれば、てやあしはにゅっとむきだしになって)

衣を着ていれば、手や足はニュッとむきだしになって

(いるのがふつうじゃ。それがとうじのふうしゅうなのじゃ。)

いるのが普通じゃ。それが当時の風習なのじゃ。

(ところが、そのぎりしゃちょうこくをもしたこのせっこうぞう)

ところが、そのギリシャ彫刻を模したこの石膏像

(には、よんたいともにあしがない」)

には、四体ともに足がない」

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