『怪人二十面相』江戸川乱歩1
○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | berry | 7061 | 王 | 7.2 | 97.1% | 550.9 | 4009 | 119 | 97 | 2024/10/21 |
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問題文
(そのころ、とうきょうじゅうのまちというまち、いえといういえでは、)
その頃、東京中の町という町、家という家では、
(ふたりいじょうのひとがかおをあわせさえすれば、)
二人以上の人が顔を合わせさえすれば、
(まるでおてんきのあいさつでもするように、)
まるでお天気のあいさつでもするように、
(「かいじんにじゅうめんそう」のうわさをしていました。)
「怪人二十面相」のウワサをしていました。
(にじゅうめんそうというのは、まいにちしんぶんきじを)
二十面相というのは、毎日新聞記事を
(にぎわしている、ふしぎなとうぞくのあだなです。)
にぎわしている、不思議な盗賊のあだ名です。
(そのぞくはにじゅうの、まったくちがったかおをもっている)
その賊は二十の、まったく違った顔を持っている
(といわれていました。つまり、へんそうがとびきり)
と言われていました。つまり、変装がとびきり
(じょうずなのです。どんなにあかるいばしょで、)
上手なのです。 どんなに明るい場所で、
(どんなにちかよってながめても、すこしもへんそうとは)
どんなに近寄ってながめても、少しも変装とは
(わからない、まるでちがったひとにみえる)
分からない、まるで違った人に見える
(のだそうです。ろうじんにもわかものにも、ふごうにも)
のだそうです。老人にも若者にも、富豪にも
(こじきにも、がくしゃにもならずものにも、)
乞食にも、学者にもならず者にも、
(いや、おんなにさえも、まったくそのひとになりきって)
いや、女にさえも、まったくその人になりきって
(しまうことができるといいます。)
しまうことが出来るといいます。
(では、そのぞくのほんとうのとしはいくつで、どんなかおを)
では、その賊の本当の歳はいくつで、どんな顔を
(しているのかというと、それはだれひとりみたことが)
しているのかというと、それは誰一人見たことが
(ありません。にじゅうものかおをもっているけれど、)
ありません。二十もの顔を持っているけれど、
(そのうちのどれがほんとうのかおなのか、)
そのうちのどれが本当の顔なのか、
(だれもしらない。いや、ぞくじしんもほんとうのかおを)
だれも知らない。いや、賊自身も本当の顔を
(わすれてしまっているのかもしれません。)
忘れてしまっているのかもしれません。
(それほどたえずちがったかお、ちがったすがたで、)
それほど絶えず違った顔、違った姿で、
(ひとのまえにあらわれるのです。そういうへんそうのてんさいみたいな)
人の前に現れるのです。そういう変装の天才みたいな
(ぞくなものですから、けいさつでもこまってしまいました。)
賊なものですから、警察でも困ってしまいました。
(いったい、どのかおをめあてにそうさくしたらいいのか、)
一体、どの顔を目当てに捜索したらいいのか、
(まるでけんとうがつかないからです。)
まるで見当がつかないからです。
(ただ、せめてものしあわせは、このとうぞくは、)
ただ、せめてもの幸せは、この盗賊は、
(ほうせきやびじゅつひんだとか、うつくしくてめずらしい、)
宝石や美術品だとか、美しくて珍しい、
(ひじょうにこうかなしなものをぬすむばかりで、)
非常に高価な品物を盗むばかりで、
(げんきんにはあまりきょうみをもたないようですし、)
現金には余り興味を持たないようですし、
(それにひとをきずつけたりころしたりする、)
それに人を傷つけたり殺したりする、
(ざんこくなふるまいは、いちどもしたことがありません。)
残酷な振る舞いは、一度もしたことがありません。
(ちがきらいなのです。しかし、いくらちがきらい)
血が嫌いなのです。しかし、いくら血が嫌い
(だからといって、わるいことをするやつのこと)
だからといって、悪いことをする奴のこと
(ですから、じぶんのみがあぶないとなれば、)
ですから、自分の身が危ないとなれば、
(それからのがれるためには、なにをするか)
それからのがれるためには、何をするか
(わかったものではありません。とうきょうじゅうのひとが、)
分かったものではありません。東京中の人が、
(にじゅうめんそうのうわさばかりしているというのも、)
二十面相のウワサばかりしているというのも、
(じつはこわくてしかたがないからです。)
実は怖くて仕方がないからです。
(ことに、にほんにいくつというきちょうなしなものをもっている)
ことに、日本にいくつという貴重な品物を持っている
(ふごうなどは、ふるえあがってこわがっていました。)
富豪などは、震え上がって怖がっていました。
(いままでのようすをみると、いくらけいさつへたのんでも)
今までの様子を見ると、いくら警察へ頼んでも
(ふせぎようのない、おそろしいぞくなのですから。)
防ぎようのない、恐ろしい賊なのですから。
(このにじゅうめんそうには、ひとつのみょうな)
この二十面相には、一つのみょうな
(くせがありました。なにか、これというきちょうなしなものを)
クセがありました。何か、これという貴重な品物を
(ねらうと、かならずまえもって、いついって)
ねらうと、必ず前もって、いつ行って
(それをちょうだいにさんじょうするという、)
それをちょうだいに参上するという、
(よこくじょうをおくることです。ぞくながらも、ふこうへいな)
予告状を送ることです。賊ながらも、不公平な
(たたかいはしたくないとこころがけているのかも)
戦いはしたくないと心がけているのかも
(しれません。それともまた、いくらようじんしても、)
しれません。それともまた、いくら用心しても、
(ちゃんととってみせるぞ。おれのうでまえは、)
ちゃんと取ってみせるぞ。おれの腕前は、
(こんなものだと、ほこりたいのかもしれません。)
こんなものだと、誇りたいのかもしれません。
(いずれにしても、だいたんふてき、ぼうじゃくぶじんのかいとうと)
いずれにしても、大胆不敵、傍若無人の怪盗と
(いわねばなりません。このおはなしは、そういう)
いわねばなりません。このお話は、そういう
(しゅつぼつじざい、しんぺんふかしぎのかいぞくと、にほんいちのめいたんてい、)
出没自在、神変不可思議の怪賊と、日本一の名探偵、
(あけちこごろうとの、ちからとちから、ちえとちえ、)
明智小五郎との、力と力、知恵と知恵、
(ひばなをちらす、いっきうちのだいとうそうのものがたりです。)
火花をちらす、一騎打ちの大闘争の物語です。
(めいたんていあけちこごろうには、こばやしよしおというしょうねんじょしゅが)
名探偵明智小五郎には、小林芳雄という少年助手が
(おります。このかわいらしくてちいさなたんていの、)
おります。この可愛らしくて小さな探偵の、
(りすのようにうごきがすばやいさまも、なかなかの)
リスのように動きが素早い樣も、なかなかの
(みものでしょう。さて、まえおきはこのくらいにして、)
見ものでしょう。さて、前置きはこのくらいにして、
(いよいよものがたりにうつることにします。)
いよいよ物語に移ることにします。
(「てつのわな」)
「鉄の罠」
(あざぶの、いくつもやしきがつづいているまちに、ひゃくめーとる)
麻布の、いくつも屋敷が続いている町に、百メートル
(しほうもあるようなていたくがあります。よんめーとるぐらいも)
四方もあるような邸宅があります。四メートルぐらいも
(ありそうな、たかいたかいこんくりーとべいがずーっと、)
ありそうな、高い高いコンクリート塀がズーッと、
(めもはるかにつづいています。いかめしいてつのとびらの)
目も遥かに続いています。いかめしい鉄の扉の
(もんをはいると、おおきなそてつがどっかりと)
門を入ると、大きなソテツがドッカリと
(はえており、そのしげったはのむこうに、)
生えており、そのしげった葉の向こうに、
(りっぱなげんかんがみえています。ひろいにほんだてと、)
立派な玄関が見えています。広い日本建てと、
(きいろいけしょうれんがをはりつめた、にかいだての)
黄色い化粧レンガを張り詰めた、二階建ての
(おおきなようかんがちょっかくにならんでいて、)
大きな洋館が直角に並んでいて、
(そのうらにはこうえんのように、ひろくてうつくしいおにわが)
その裏には公園のように、広くて美しいお庭が
(あるのです。これは、じつぎょうかいをだいひょうする、)
あるのです。 これは、実業界を代表する、
(はしばそうたろうしのていたくです。はしばけにはいま、ひじょうな)
羽柴壮太郎氏の邸宅です。 羽柴家には今、非常な
(よろこびときょうふがおりまざるようにして、おそいかかって)
喜びと恐怖が織り混ざるようにして、襲いかかって
(いました。よろこびというのは、いまからじゅうねんいじょうまえにいえでを)
いました。喜びというのは、今から十年以上前に家出を
(したちょうなんのそういちくんが、なんようぼるねおとうから、)
した長男の壮一君が、南洋ボルネオ島から、
(おとうさんにおわびをするために、)
お父さんにおわびをするために、
(にほんへかえってくることでした。)
日本へ帰って来ることでした。
(そういちくんはうまれつきのぼうけんじで、ちゅうがっこうをそつぎょうすると、)
壮一君は生まれつきの冒険児で、中学校を卒業すると、
(がくゆうとふたりでなんようのしんてんちへとこうし、なにかかいてきな)
学友と二人で南洋の新天地へ渡航し、なにか快適な
(じぎょうをおこしたいとねがったのですが、)
事業をおこしたいと願ったのですが、
(ちちのそうたろうしは、がんとしてそれをゆるさなかった)
父の壮太郎氏は、がんとしてそれを許さなかった
(ので、とうとうむだんでいえをとびだし、ちいさな)
ので、とうとう無断で家を飛び出し、小さな
(ふねにのって、なんようにわたったのでした。それから)
船に乗って、南洋に渡ったのでした。 それから
(じゅうねんかん、そういちくんからはまったくなんのたよりもなく、)
十年間、壮一君からはまったく何の便りもなく、
(ゆくえさえわからなかったのですが、ついさんかげつ)
行方さえ分からなかったのですが、つい三ヵ月
(ほどまえ、とつぜん、ぼるねおとうのさんだかんから)
ほど前、突然、ボルネオ島のサンダカンから
(てがみをよこして、やっといちにんまえのおとこになったから、)
手紙を寄越して、やっと一人前の男になったから、
(おとうさんにおわびにかえりたい、)
お父さんにおわびに帰りたい、
(といってきたのです。そういちくんはげんざいでは、)
と言ってきたのです。 壮一君は現在では、
(さんだかんふきんにおおきなごむのきをうえていて、)
サンダカン付近に大きなゴムの木を植えていて、
(てがみには、そのごむのしゃしんと、そういちくんのさいきんの)
手紙には、そのゴムの写真と、壮一君の最近の
(しゃしんがどうふうしてありました。もうさんじゅっさいです。)
写真が同封してありました。もう三十歳です。
(はなのしたにきどったひげをはやして、)
鼻の下に気取ったヒゲを生やして、
(りっぱなおとなになっていました。)
立派な大人になっていました。