『妖怪博士』江戸川乱歩19

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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1 berry 7380 7.5 97.4% 602.4 4567 121 98 2024/10/06

関連タイピング

問題文

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(「すべてのせっこうぞうがしたまでころもにおおわれて、つりがねを)

「全ての石膏像が下まで衣におおわれて、釣り鐘を

(ふせたようなかたちになっている。なぜじゃろう。)

ふせたような形になっている。 なぜじゃろう。

(あんたがた、おわかりにならんかな。わしはいま、ふと)

あんた方、お分かりにならんかな。わしは今、ふと

(それにきがついたのじゃ。このいえのしゅじんは、わざと)

それに気がついたのじゃ。この家の主人は、わざと

(あしのないせっこうぞうをつくらせておいたのじゃ。なぜか)

足のない石膏像を作らせておいたのじゃ。なぜか

(というと、このぞうのなかへなにかをかくすためじゃ。なにか)

というと、この像の中へ何かを隠すためじゃ。何か

(おおきなものをかくしてもぞうがたおれないように、)

大きなものを隠しても像が倒れないように、

(あらかじめつくっておいたのじゃ。ははは。)

あらかじめ作っておいたのじゃ。ハハハ。

(まだわからんかね。まあ、みていてごらんなさい。)

まだ分からんかね。まあ、見ていてご覧なさい。

(わしがいま、このせっこうぞうのひみつをあばくから。まてまて、)

わしが今、この石膏像の秘密を暴くから。待て待て、

(こんなすてっきじゃむりだ。たしか、あのひみつべやの)

こんなステッキじゃ無理だ。確か、あの秘密部屋の

(なかにかなづちがあったはずじゃ」とのむらはそんなことを)

中にカナヅチがあったはずじゃ」殿村はそんなことを

(いいながら、あたふたとおびただしいいしょうがかけ)

言いながら、アタフタとおびただしい衣装が掛け

(ならべてあるへやへはいっていきましたが、まもなく)

並べてある部屋へ入って行きましたが、まもなく

(いっちょうのおおきなかなづちをもって、もどってきました。)

一丁の大きなカナヅチを持って、戻って来ました。

(「さあ、よくみていてごらんなさい。わしのそうぞうが)

「さあ、よく見ていてご覧なさい。わしの想像が

(まちがっていなければ、このなかからとんでもないものが)

間違っていなければ、この中からとんでもないものが

(とびだしてくるはずじゃ」そういいおわらないうちに)

飛び出してくるはずじゃ」そう言い終わらないうちに

(とのむらのみぎてがちゅうにおどって、かなづちのさきがだんがんの)

殿村の右手が宙におどって、カナヅチの先が弾丸の

(ように、せっこうぞうにぶつかっていきました。いっかい、)

ように、石膏像にぶつかっていきました。一回、

など

(にかい、さんかいと、なおもたたきつづけていると、たちまち)

二回、三回と、なおも叩き続けていると、たちまち

(せっこうぞうはおおきなおとをたてて、こなごなにくずれていきます。)

石膏像は大きな音をたてて、粉々に崩れていきます。

(すると、せっこうぞうのないぶから、なにかみょうなものが)

すると、石膏像の内部から、何かみょうなものが

(みえはじめました。にんげんのあたまです。しろいぬので)

見え始めました。人間の頭です。白い布で

(さるぐつわをはめられている、あおざめたしょうねんのかお)

さるぐつわをはめられている、青ざめた少年の顔

(です。「おお」あいかわぎしちょうのくちから、おどろきのこえが)

です。「おお」相川技師長の口から、驚きの声が

(もれました。とのむらはそれにかまわずかなづちをふるい)

もれました。殿村はそれに構わずカナヅチをふるい

(つづけ、とうとうせっこうぞうを、あとかたもなくたたきこわして)

続け、とうとう石膏像を、あとかたもなく叩き壊して

(しまいました。そのなかには、さるぐつわをはめられ、)

しまいました。 その中には、さるぐつわをはめられ、

(からだじゅうをぐるぐるまきにしばられた、ひとりのねまきすがたの)

体中をグルグル巻きにしばられた、一人の寝間着姿の

(しょうねんがうずくまっていたのですが、ぞうがこわれてささえる)

少年がうずくまっていたのですが、像が壊れて支える

(ものがなくなったものですから、ふらふらとだいのうえから)

物がなくなったものですから、フラフラと台の上から

(ころがりおちてゆかにたおれてしまったのです。「たいじ、)

転がり落ちて床に倒れてしまったのです。「泰二、

(たいじじゃないか」あいかわぎしちょうはさけびながら、そのばに)

泰二じゃないか」相川技師長は叫びながら、その場に

(かけよって、たおれているしょうねんをだきおこしました。)

駆け寄って、倒れている少年を抱き起しました。

(それはまぎれもなく、ぎしちょうのむすこのあいかわたいじくん)

それはまぎれもなく、技師長の息子の相川泰二君

(でした。ゆうかいされたときのまま、ぱじゃますがたで)

でした。誘拐された時のまま、パジャマ姿で

(しばられていたのです。なかむらそうさかかりちょうもてつだって、)

しばられていたのです。 中村捜査係長も手伝って、

(おおいそぎでさるぐつわをはずし、なわをといてみると、)

大急ぎでさるぐつわを外し、縄をといて見ると、

(たいじくんはべつにふしょうしているわけでもなく、ただ)

泰二君は別に負傷している訳でもなく、ただ

(おそろしさといきぐるしさに、きがとおくなっていただけ)

恐ろしさと息苦しさに、気が遠くなっていただけ

(ですから、たちまちしょうきにもどって、あいかわぎしちょうのすがたを)

ですから、たちまち正気に戻って、相川技師長の姿を

(みると、いきなり「おとうさん」とさけび、そのなつかしい)

見ると、いきなり「お父さん」と叫び、その懐かしい

(むねにすがりつくのでした。「ははは、どうです。)

胸にすがりつくのでした。「ハハハ、どうです。

(あいかわさん、ぞくのまじゅつがおわかりになりましたかな。)

相川さん、賊の魔術がお分かりになりましたかな。

(それにしても、せっこうぞうのなかにかくすとは、じつにきばつな)

それにしても、石膏像の中に隠すとは、実に奇抜な

(おもいつきじゃありませんか。いや、ちょっとまて。)

思いつきじゃありませんか。いや、ちょっと待て。

(まだ、みっつのぞうがのこっている。あいつらもたたきこわして)

まだ、三つの像が残っている。あいつらも叩き壊して

(みなくてはならん」とのむらたんていはとくいらしく)

みなくてはならん」殿村探偵は得意らしく

(かなづちをてにしたまま、よちよちとみょうな)

カナヅチを手にしたまま、ヨチヨチとみょうな

(あるきかたで、べつのすみにあるせっこうぞうにちかより、それもまた)

歩き方で、別の隅にある石膏像に近寄り、それもまた

(いきおいをこめてたたきこわしました。すると、はげしい)

勢いを込めて叩き壊しました。 すると、激しい

(ものおととともにせっこうのかけらがゆきのようにとびちるなか)

物音と共に石膏のカケラが雪のように飛び散る中

(から、こんどはくろいふくをきたしょうねんが、たいじくんとおなじ)

から、今度は黒い服を着た少年が、泰二君と同じ

(ように、さるぐつわをはめられ、ぐるぐるまきに)

ように、さるぐつわをはめられ、グルグル巻きに

(しばられたまま、ころがりでてきました。それが)

しばられたまま、転がり出てきました。それが

(おおのとしおくんだったのです。とのむらは、ますますとくいげ)

大野敏夫君だったのです。殿村は、ますます得意気

(でした。「おれのちえは、どんなもんだ」といわない)

でした。「おれの知恵は、どんなもんだ」といわない

(ばかりにきいろいはをむきだして、げらげらわらい)

ばかりに黄色い歯をむきだして、ゲラゲラ笑い

(ながら、まるでおさないこどもがおもちゃをこわしでも)

ながら、まるで幼い子どもがオモチャを壊しでも

(するように、のこりのふたつのせっこうぞうもあっというまに)

するように、残りの二つの石膏像もあっという間に

(たたきこわしてしまいました。そのふたつのぞうのなかに、)

叩き壊してしまいました。その二つの像の中に、

(さいとうとうえむらのふたりのしょうねんがかくされていたことも、)

斎藤と上村の二人の少年が隠されていたことも、

(とのむらのそうぞうどおりでした。このようにして、とのむらたんていは)

殿村の想像通りでした。このようにして、殿村探偵は

(なんのくもなく、よにんのしょうねんをはっけんしてしまった)

何の苦もなく、四人の少年を発見してしまった

(のです。しょうねんたちはみな、べつにけがをしているようすも)

のです。少年たちはみな、別にケガをしている様子も

(なく、さるぐつわとなわをといてやるとげんきにたち)

なく、さるぐつわと縄をといてやると元気に立ち

(あがって、よにんがひとかたまりによりそって、おたがいの)

上がって、四人が一塊に寄り添って、お互いの

(ぶじをよろこびあい、そこにいるさんにんのおとなたちに、)

無事を喜び合い、そこにいる三人の大人たちに、

(くちぐちにおれいをいうのでした。なかむらかかりちょうと)

口々にお礼を言うのでした。中村係長と

(あいかわぎしちょうはすこしまえまで、このたんていをなんだかおおうそ)

相川技師長は少し前まで、この探偵を何だか大ウソ

(つきのようにかんじていたのですが、いまめのまえで、)

つきのように感じていたのですが、いま目の前で、

(このふしぎをみせつけられては、とのむらのすばらしい)

この不思議を見せつけられては、殿村の素晴らしい

(うでまえをみとめないわけにはいきませんでした。ばけもの)

腕前を認めない訳にはいきませんでした。バケモノ

(みたいなみにくいすがたはしているけれど、なるほど、この)

みたいな醜い姿はしているけれど、なるほど、この

(おとこはめいたんていにちがいないと、こころからかんしんしないでは)

男は名探偵に違いないと、心から感心しないでは

(いられませんでした。)

いられませんでした。

(「あけちは、ここにいる」)

「明智は、ここにいる」

(そうしているところへ、しょさいのどあのそとにどかどかと)

そうしているところへ、書斎のドアの外にドカドカと

(おおぜいのあしおとがして、なにかはげしくいいあらそっているこえが、)

大勢の足音がして、何か激しく言い争っている声が、

(へやのなかまできこえてきました。なにがおこったのかと、)

部屋の中まで聞こえてきました。何が起こったのかと、

(なかむらかかりちょうがどあをひらいてみると、そのろうかに)

中村係長がドアをひらいてみると、その廊下に

(ぶかのけいじたちと、みなれないすうめいのせびろすがたのおとこが)

部下の刑事たちと、見なれない数名の背広姿の男が

(くちぐちになにかわめきながら、もみあっているのでした。)

口々に何かわめきながら、もみあっているのでした。

(「どうしたんだ。そのひとたちはいったい、なにものだ」)

「どうしたんだ。その人たちは一体、何者だ」

(かかりちょうがおおごえでたずねると、けいじのひとりが)

係長が大声でたずねると、刑事の一人が

(「しんぶんきしゃです。いくらとめても、とのむらさんとやくそくが)

「新聞記者です。いくら止めても、殿村さんと約束が

(してあるんだから、どうしてもいれろといって)

してあるんだから、どうしても入れろと言って

(きかないのです」と、もうしわけなさそうにこたえました。)

聞かないのです」と、申し訳なさそうに答えました。

(するととのむらたんていは、そのこえをききつけて、よちよちと)

すると殿村探偵は、その声を聞きつけて、ヨチヨチと

(どあのところへやってきました。「やあ、しんぶんきしゃさん。)

ドアの所へやって来ました。「やあ、新聞記者さん。

(よくきてくれた。さあ、かまわんからはいりたまえ。)

よく来てくれた。さあ、構わんから入りたまえ。

(なかむらさん、このれんちゅうはわしがここへくるまえに、)

中村さん、この連中はわしがここへ来る前に、

(でんわでしらせておいたのですよ。にじかんごくらいに、)

電話で知らせておいたのですよ。二時間後くらいに、

(このはんざいじけんのしんそうをはっぴょうするからといってね」)

この犯罪事件の真相を発表するからと言ってね」

(「そんなことをされてはこまりますね。まだ、われわれは)

「そんなことをされては困りますね。まだ、我々は

(はんにんもつかまえていないのだから」なかむらかかりちょうはかおを)

犯人も捕まえていないのだから」 中村係長は顔を

(しかめて、とのむらをひなんしました。)

しかめて、殿村を非難しました。

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