『少年探偵団』江戸川乱歩1

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少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 BE 4060 C 4.3 93.5% 1020.3 4449 306 100 2024/10/23

関連タイピング

問題文

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(「くろいまもの」)

「黒い魔物」

(そいつはぜんしんに、すみをぬったような、おそろしく)

そいつは全身に、墨を塗ったような、おそろしく

(まっくろなやつだということでした。「くろいまもの」の)

真っ黒なやつだということでした。「黒い魔物」の

(うわさは、もう、とうきょうじゅうにひろがっていましたけれど、)

ウワサは、もう、東京中に広がっていましたけれど、

(ふしぎにもはっきり、そいつのしょうたいをみきわめたひとは、)

不思議にもハッキリ、そいつの正体を見極めた人は、

(だれもいませんでした。そいつは、くらやみのなかでしか)

だれもいませんでした。 そいつは、暗闇の中でしか

(すがたをあらわしませんので、なにかしらやみのなかに、やみとおなじ)

姿を現しませんので、何かしら闇の中に、闇と同じ

(いろのものがもやもやと、うごめいていることは)

色のものがモヤモヤと、うごめいていることは

(わかっても、それがどんなおとこであるのか、あるいは)

わかっても、それがどんな男であるのか、あるいは

(おんなであるのか、おとななのかこどもなのかさえ、)

女であるのか、大人なのか子どもなのかさえ、

(はっきりわからないのです。とあるさびしい)

ハッキリわからないのです。 とあるさびしい

(やしきまちのよるのばんをしているおじさんが、)

屋敷まちの夜の番をしているおじさんが、

(ながくくろいへいのまえを、ひょうしぎをたたきながらあるいて)

長く黒い塀の前を、ひょうし木を叩きながら歩いて

(いますと、そのくろいへいのいちぶぶんが、ちぎれでもした)

いますと、その黒い塀の一部分が、ちぎれでもした

(ように、へいとまったくおなじいろをしたにんげんのような)

ように、塀とまったく同じ色をした人間のような

(ものが、ひょろひょろとみちのまんなかへすがたをあらわし、)

ものが、ヒョロヒョロと道の真ん中へ姿を現し、

(おじさんのちょうちんのまえで、まっしろなはを)

おじさんのちょうちんの前で、真っ白な歯を

(むきだして、けらけらとわらったかとおもうと、さーっと)

むきだして、ケラケラと笑ったかと思うと、サーッと

(くろいかぜのように、どこかへはしりさってしまったと)

黒い風のように、どこかへ走り去ってしまったと

(いうことでした。よるのばんをしているおじさんは、)

いうことでした。 夜の番をしているおじさんは、

など

(あさになって、みんなにそのことをはなして)

朝になって、みんなにそのことを話して

(きかせましたが、そいつのすがたが、あまりにもまっくろな)

聞かせましたが、そいつの姿が、あまりにも真っ黒な

(ものですから、まるでしろいはばかりがちゅうにういてわらって)

ものですから、まるで白い歯ばかりが宙に浮いて笑って

(いるようで、あんなきみのわるいことはなかったと、)

いるようで、あんな気味の悪いことはなかったと、

(まだあおいかおをして、おそろしそうにそっと、)

まだ青い顔をして、おそろしそうにソッと、

(うしろをふりむきながら、はなすのでした。)

うしろを振り向きながら、話すのでした。

(あるやみのばんに、すみだがわをくだっていたひとりのせんどうが、)

ある闇の晩に、隅田川をくだっていた一人の船頭が、

(じぶんのふねのそばにみょうななみがたっているのに)

自分の船のそばにみょうな波がたっているのに

(きづきました。ほしもないやみよのことで、かわのみずは)

気づきました。 星もない闇夜のことで、川の水は

(すみのようにまっくろでした。ただふねをこぐかいが)

墨のように真っ黒でした。ただ舟をこぐカイが

(みずをきるごとに、うすくしろいなみがたつばかりです。)

水を切るごとに、薄く白い波がたつばかりです。

(ところが、そのかいのなみとはべつに、ふしぎなしらなみが)

ところが、そのカイの波とは別に、不思議な白波が

(たっているではありませんか。まるでひとがおよいでいる)

たっているではありませんか。 まるで人が泳いでいる

(ようななみでした。しかし、ただ、そういうかたちのなみが)

ような波でした。しかし、ただ、そういう形の波が

(みえるばかりで、にんげんのすがたはすこしもめにとまらない)

見えるばかりで、人間の姿は少しも目にとまらない

(のです。せんどうは、あまりのふしぎさに、ぞーっと)

のです。 船頭は、あまりの不思議さに、ゾーッと

(せすじへみずをあびせられたようなきがしたと)

背すじへ水をあびせられたような気がしたと

(いいます。でも、やせがまんをして、おおきなこえで、)

言います。でも、やせ我慢をして、大きな声で、

(そのすがたのみえないおよぎてに、どなりつけたということ)

その姿の見えない泳ぎ手に、どなりつけたということ

(です。「おーい、そこでおよいでいるのは、だれだ」)

です。「オーイ、そこで泳いでいるのは、だれだ」

(すると、みずをかくようなしろいなみがちょっととまって、)

すると、水をかくような白い波がちょっと止まって、

(ちょうど、そのめにみえないやつのかおのあるへんに、)

ちょうど、その目に見えないやつの顔のあるへんに、

(しろいものがあらわれたといいます。よくみると、そのしろい)

白いものが現れたといいます。 よく見ると、その白い

(ものはにんげんのまえばでした。しろいまえばだけが、くろいみずの)

ものは人間の前歯でした。白い前歯だけが、黒い水の

(うえにふわふわとただよって、けらけらと、)

上にフワフワとただよって、ケラケラと、

(れいのぶきみなこえでわらいだしたというのです。)

例の不気味な声で笑い出したと言うのです。

(せんどうは、あまりのおそろしさに、もうむがむちゅうで、)

船頭は、あまりのおそろしさに、もう無我夢中で、

(あともみずにふねをこいでにげだしたということです。)

あとも見ずに舟をこいで逃げ出したということです。

(また、こんなおかしいはなしもありました。)

また、こんなおかしい話もありました。

(あるつきのうつくしいばん、うえのこうえんのひろっぱにたたずんで、)

ある月の美しい晩、上野公園の広っぱにたたずんで、

(つきをながめていたひとりのだいがくせいが、ふときがつくと、)

月をながめていた一人の大学生が、ふと気がつくと、

(あしもとのじめんに、じぶんのかげがくろぐろとうつっている)

足元の地面に、自分の影が黒々とうつっている

(のですが、みょうなことに、そのかげがすこしもうごかない)

のですが、みょうなことに、その影が少しも動かない

(のです。いくらくびをふったり、てをうごかしたり)

のです。いくら首を振ったり、手を動かしたり

(してもかげは、じっとしていてみうごきもしないのです。)

しても影は、ジッとしていて身動きもしないのです。

(だいがくせいはだんだん、きみがわるくなってきました。)

大学生は段々、気味が悪くなってきました。

(かげだけがしんでしまってうごかないなんて、)

影だけが死んでしまって動かないなんて、

(かんがえてみればおそろしいことです。もしやじぶんは)

考えてみればおそろしいことです。もしや自分は

(きでもちがったのではあるまいかと、もうじっと)

気でも違ったのではあるまいかと、もうジッと

(していられなくなって、だいがくせいは、いきなりあるき)

していられなくなって、大学生は、いきなり歩き

(はじめたといいます。すると、ああ、どうしたという)

始めたと言います。 すると、ああ、どうしたという

(のでしょう。かげはやっぱりうごかないのです。)

のでしょう。影はやっぱり動かないのです。

(だいがくせいが、そこからさんめーとる、ごめーとるとはなれて)

大学生が、そこから三メートル、五メートルと離れて

(いっても、かげだけはすこしもうごかずもとのじめんに、)

行っても、影だけは少しも動かず元の地面に、

(よこたわっているのです。だいがくせいは、あまりの)

横たわっているのです。 大学生は、あまりの

(ぶきみさに、たちすくんでしまいました。)

不気味さに、立ちすくんでしまいました。

(そして、いくらみないようにきをつけても、)

そして、いくら見ないように気を付けても、

(きみがわるければわるいほど、かえってそのかげを、)

気味が悪ければ悪いほど、かえってその影を、

(じっとみつめないではいられませんでした。)

ジッと見つめないではいられませんでした。

(ところが、そうしてみつめているうちに、もっと)

ところが、そうして見つめているうちに、もっと

(おそろしいことがおこったのです。そのかげのかおの)

おそろしいことが起こったのです。その影の顔の

(まんなかがとつぜん、ぱっくりとわれたようにしろくなった)

真ん中が突然、パックリと割れたように白くなった

(のです。つまり、かげがくちをひらいて、しろいはをみせ、)

のです。つまり、影が口をひらいて、白い歯を見せ、

(れいのけらけらというわらいごえがきこえてきたのです。)

例のケラケラという笑い声が聞こえて来たのです。

(みなさん、じぶんのかげがはをむきだしてわらったところを)

みなさん、自分の影が歯をむき出して笑った所を

(そうぞうしてごらんなさい。よのなかに、こんなきみのわるい)

想像してご覧なさい。世の中に、こんな気味の悪い

(ことがあるでしょうか。さすがのだいがくせいも、あっと)

ことがあるでしょうか。 さすがの大学生も、アッと

(さけんで、あともみずににげだしたということです。)

叫んで、あとも見ずに逃げだしたということです。

(それがやっぱり、れいのくろいまものだったのです。)

それがやっぱり、例の黒い魔物だったのです。

(あとでかんがえてみますと、だいがくせいはつきにむかっていた)

あとで考えてみますと、大学生は月に向かっていた

(のですから、かげはうしろにあるはずなのに、)

のですから、影はうしろにあるはずなのに、

(めのまえに、くろぐろとひとのすがたがよこたわっていたものです)

目の前に、黒々と人の姿が横たわっていたものです

(から、ついじぶんのかげだとおもってしまったのでした。)

から、つい自分の影だと思ってしまったのでした。

(そういうふうにして、くろいまもののうわさは、)

そういう風にして、黒い魔物のウワサは、

(いちにちいちにちと、たかくなっていきました。やみのなかから)

一日一日と、高くなっていきました。 闇の中から

(とびだしてきて、つうこうにんのくびをしめようとしたとか、)

飛び出して来て、通行人の首をしめようとしたとか、

(よる、こどもがひとりであるいていると、まるでくろいふろしき)

夜、子どもが一人で歩いていると、まるで黒い風呂敷

(のようにこどもをつつんで、じめんをころころころがって)

のように子どもを包んで、地面をコロコロ転がって

(いってしまうとか、さまざまなうわさがつたえられ、)

行ってしまうとか、様々なウワサが伝えられ、

(かいだんはかいだんをうんで、わかいむすめさんや、ちいさいこども)

怪談は怪談を生んで、若い娘さんや、小さい子ども

(などは、もうおびえあがってしまって、けっしてよるは)

などは、もうおびえあがってしまって、決して夜は

(がいしゅつしないほどになってきました。このまものは、)

外出しないほどになってきました。 この魔物は、

(むかしのどうわにある、「かくれみの」をもっているのと)

昔の童話にある、「かくれみの」を持っているのと

(おなじことでした。「かくれみの」というのは、いちど)

同じことでした。「かくれみの」というのは、一度

(そのみのをみにつけますと、ひとのすがたがかきけすように)

そのミノを身につけますと、人の姿がかき消すように

(みえなくなって、おおくのひとがいるなかでも)

見えなくなって、多くの人がいる中でも

(おもうがままで、どんなわるいことをしても、つかまる)

思うがままで、どんな悪いことをしても、つかまる

(きづかいはないという、べんりなまほうなのです。)

気づかいはないという、便利な魔法なのです。

(くろいまものは、それとおなじように、やみのなかに)

黒い魔物は、それと同じように、闇の中に

(とけこんで、ひとのめをくらますことができるのです。)

溶け込んで、人の目をくらますことが出来るのです。

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