進化劇/カンザキイオリ
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歌詞(問題文)
(「ゆめはいつかかなう」)
「夢はいつか叶う」
(「あきらめたらだめだ」)
「諦めたら駄目だ」
(そんなきれいごとばかりがすきなかのじょだった。)
そんな綺麗事ばかりが好きな彼女だった。
(そのひいつものようにやすいばいとをおえて、)
その日いつものように安いバイトを終えて、
(おもいどあをあけてもかのじょの「おかえり」はなかった。)
重いドアを開けても彼女の「おかえり」は無かった。
(しんでいた。)
死んでいた。
(つめたかった。)
冷たかった。
(きれいだった。)
綺麗だった。
(かわいかった。)
可愛かった。
(かたわらにははくしのいしょがおいてあった。)
傍らには白紙の遺書が置いてあった。
(ものかきになろうとおもったのはついさいきんのはなしだ。)
物書きになろうと思ったのはつい最近の話だ。
(かのじょのしをぼくだけがしらなかったからだ。)
彼女の死を僕だけが知らなかったからだ。
(そのあと、そうしきはいつのまにかおわり、)
その後、葬式はいつの間にか終わり、
(ぼくはもとのばいとでかせぎながらかいた。)
僕は元のバイトで稼ぎながら書いた。
(しょうせつのしゅじんこうは、きみとおなじなまえだ。)
小説の主人公は、君と同じ名前だ。
(ぷろのあーてぃすとをめざしじょうきょうしたおんなのこ。)
プロのアーティストを目指し上京した女の子。
(ありきたりなはなしをじまんげにかいていた。)
ありきたりな話を自慢気に書いていた。
(せんぱいにはばかにされ、ばいとさきをやめた。)
先輩には馬鹿にされ、バイト先を辞めた。
(ためたちょきんをかてにしんだようにかいた。)
貯めた貯金を糧に死んだように書いた。
(きみのそばにいけるようなきがしたのはまぐれだ。)
君の側に行けるような気がしたのはまぐれだ。
(あらすじはこうしよう。)
あらすじはこうしよう。
(「ゆめはいつかかなう、あきらめたらおわりだ、まけいぬにはならない」)
「夢はいつか叶う、諦めたら終わりだ、負け犬にはならない」
(「わたしのいままでがむくわれるそのひまで」)
「私の今までが報われるその日まで」
(「わたしのいままでをしょうしゃだってわらうために」)
「私の今までを勝者だって笑うために」
(「わたしのいままでをしょうしゃだってうたうために」)
「私の今までを勝者だって歌うために」
(もっといろんなものをかいてみたくなった。)
もっといろんなものを書いてみたくなった。
(なんとなくおうぼした。)
何となく応募した。
(よのなかはどよめいた。)
世の中はどよめいた。
(くうはくでうもれていたいままでのじんせいが、)
空白で埋もれていた今までの人生が、
(あめのかおりのようにあたりにちらばっていく。)
雨の香りのように辺りに散らばっていく。
(かねがわいてひとがわいてそのなかでわらった。)
金が湧いて人が湧いてその中で笑った。
(ぼくはやっといまこそ、すべてむくわれたのだ。)
僕はやっと今こそ、全て報われたのだ。
(おかねのつかいかたがあらくなったあるひ、)
お金の使い方が荒くなったある日、
(すきでもないこうはいとののみかいでいわれた。)
好きでもない後輩との飲み会で言われた。
(「かこになってよかった」)
「過去になって良かった」
(「いま、しあわせそうですね」)
「今、幸せそうですね」
(かねがあって、ひとがあって、おんなだってすてるほどいて、)
金があって、人があって、女だって捨てるほどいて、
(ああ、こんなものがしあわせだったのか。)
ああ、こんなものが幸せだったのか。
(かのじょのいしょがいえのどこにもなくて、)
彼女の遺書が家のどこにもなくて、
(そうだ、ついさいきんなにくわぬかおですてた。)
そうだ、つい最近何食わぬ顔で捨てた。
(もはやいきるいみとなりはてたしょうせつの)
もはや生きる意味と成り果てた小説の
(きっかけなんてちいさなものだった。)
きっかけなんて小さなものだった。
(かわりはてたいえのかぐ、きみのにおいははじけた。)
変わり果てた家の家具、君の匂いは弾けた。
(なみだした、くずれおちた、みにくく、くるしく。)
涙した、崩れ落ちた、醜く、苦しく。
(それでもぼくだけがいきるのだ。)
それでも僕だけが生きるのだ。
(かねがわいて、ひとがわいて、そんなぼくのれきしだ。)
金が湧いて、人が湧いて、そんな僕の歴史だ。
(ああそうだ。)
ああそうだ。
(ぼくすらもしらないきみがしんだいみを、)
僕すらも知らない君が死んだ意味を、
(ぼくすらもしらないきみがいきたいみを、)
僕すらも知らない君が生きた意味を、
(ぼくすらもしらないきみがしんだわけを、)
僕すらも知らない君が死んだ理由を、
(ぼくはずっとはくしのかこにきざみたいのだ。)
僕はずっと白紙の過去に刻みたいのだ。
(ぼくすらもしらないきみがいきたひびを、)
僕すらも知らない君が生きた日々を、
(ぼくだけがしってるきみがしんだひびを。)
僕だけが知ってる君が死んだ日々を。
(「ゆめはいつかかなう」)
「夢はいつか叶う」
(「あきらめたらだめだ」)
「諦めたら駄目だ」
(そんなきれいごとばかりがすきなかのじょだった。)
そんな綺麗事ばかりが好きな彼女だった。
(そのひいつものようにやすいばいとをおえて、)
その日いつものように安いバイトを終えて、
(おもいどあをあけても「おかえり」はなかった。)
重いドアを開けても「おかえり」は無かった。
(そこにいつものようなかのじょのえがおはなく、)
そこにいつものような彼女の笑顔はなく、
(かたわらにははくしのいしょがおいてあった。)
傍らには白紙の遺書が置いてあった。
(かのじょのしをぼくだけがみとめたくなかった。)
彼女の死を僕だけが認めたくなかった。
(ものかきになろうとおもったのはそんなわけだ。)
物書きになろうと思ったのはそんな理由だ。