第四解剖室　スティーヴン・キング　10

(したがわのはは、ばたーをきりさくようにやすやすとふくぶにすべりこむ。)

下側の刃は、バターを切り裂くようにやすやすと腹部にすべりこむ。

(それから”ちょきん”－－たいようしんけいそうにしゅうちゅうしたしんけいのたばがせつだんされ、)

それから”ちょきん”－－太陽神経叢に集中した神経の束が切断され、

(そのうえにあるびーふじゃーきーのようにおりあわされたきんにくとけんを)

その上にあるビーフジャーキーのように折り合わされた筋肉と腱を

(きりさいていく。おつぎはきょうこつ。このだんかいでじょうげのはがひとつになる)

切り裂いていく。お次は胸骨。この段階で上下の刃が一つになる

(ときには、かなりおおきなおとがでる。きょうぶやきょうかくが、ろーぷでつながれた)

ときには、かなり大きな音が出る。胸部や胸郭が、ロープでつながれた

(ふたつのたるのように、いっきにさゆうにわかれるからだ。)

二つの樽のように、一気に左右に分かれるからだ。

(そして、なによりすーぱーまーけっとのせいにくぎょうしゃがとりにくを)

そして、なによりスーパーマーケットの精肉業者が鶏肉を

(きるのにつかうどうぐにそっくりなこのはさみは、)

切るのに使う道具にそっくりなこのハサミは、

(おとをたてながらほねをたちきり、きんにくをきりさき、さらにうえへうえへと)

音を立てながら骨を断ち切り、筋肉を切り裂き、さらに上へ上へと

(いどうしてはいをかいほうし、そのあときかんをめざしていく。)

移動して肺を開放し、そのあと気管を目指していく。

(せいふくおうはわーどさまをだれもたべたがらないかんしゃさいでぃなーもどきの)

征服王ハワード様をだれも食べたがらない感謝祭ディナーもどきの

(にくかいにかえながら。)

肉塊に変えながら。

(しんけいにさわるかんだかいこえがひびくーーそう、はいしゃのどりるにそっくりなおとだ。)

神経に障る甲高い声が響くーーそう、歯医者のドリルにそっくりな音だ。

(ぴーと。「こいつをつかっちゃだめかなーー？」)

ピート。「こいつを使っちゃだめかなーー？」

(どくたーしすこーーしんじがたいことに、いささかははおやめいたちょうしで。)

ドクター・シスコーー信じがたいことに、いささか母親めいた調子で。

(「だめよ、つかうのはこっち」ぴーとのためにはさみのうごかしかたを)

「だめよ、つかうのはこっち」ピートのためにはさみの動かし方を

(じっせんしているのだ。＜こんなことがゆるされるわけはない！＞わたしはおもう。)

実践しているのだ。＜こんなことが許される訳はない！＞私は思う。

(＜わたしをきりきざむようなまねがゆるされるわけがない・・・わたしにはかんかくが)

＜私を切り刻むような真似が許される訳がない・・・私には感覚が

(あるんだから＞「どうして？」ぴーとがたずねる。)

あるんだから＞「どうして？」ピートが訪ねる。

(「わたしがそうのぞんでいるから」じょいがこたえるくちょうからは、)

「私がそう望んでいるから」女医が答える口調からは、