第四解剖室　スティーヴン・キング　17

(げきつうのほんのいっぽてまえ。しかしきにしない。それどころか、その)

激痛のほんの一歩手前。しかし気にしない。それどころか、その

(とっきぶぶんがはだにくいこむことをいのり、はだがさけてしゅっけつすることを)

突起部分が肌に食い込むことを祈り、肌が裂けて出血することを

(いのるのみだ。したいなら、ぜったいにしゅっけつなどしないはずだから。)

祈るのみだ。死体なら、絶対に出血などしないはずだから。

(「よいしょっと」どくたーあーれんはそういってわたしのうでをもちあげ、)

「よいしょっと」ドクター・アーレンはそう言って私の腕を持ち上げ、

(からだのよこになげおとす。いまや、わたしのいしきのちゅうしんをしめているのははなだ。)

体の横に投げ落とす。今や、私の意識の中心を占めているのは鼻だ。

(はなはてーぶるにおしつぶされ、ここにきてはじめて、はいがくらい)

鼻はテーブルに押しつぶされ、ここに来て初めて、肺が暗い

(めっせーじをおくってきているーーはいにわたがつまったような、ふかいなかんかくが)

メッセージを送ってきているーー肺に綿が詰まったような、不快な感覚が

(あるのだ。くちはとじており、はなはぶぶんてきにおしつぶされている)

あるのだ。口は閉じており、鼻は部分的に押しつぶされている

(（ただし、どのていどまでつぶされているのかはわからない。それをいうなら)

（ただし、どの程度まで潰されているのかは分からない。それを言うなら

(じぶんのこきゅうさえかんじられない）。こんなふうにしてちっそくしたらどうなる？)

自分の呼吸さえかんじられない）。こんな風にして窒息したらどうなる？

(ついであるじたいがおこり、わたしのいしきはすっかりはなからそらされてしまう。)

次いである事態が起こり、私の意識はすっかり鼻からそらされてしまう。

(きょだいなぶったいーーたとえるならがらすせいのやきゅうのばっとかーーが、)

巨大な物体ーー例えるならガラス製の野球のバットかーーが、

(いきなりこうもんにねじこまれてきたのだ。こんどもわたしはひめいをあげようとし、)

いきなり肛門にねじ込まれてきたのだ。今度も私は悲鳴を上げようとし、

(こんかいもかぼそくくるしげなはなごえしかだせない。「たいおんそくていのかいし」)

今回もか細く苦しげな鼻声しか出せない。「体温測定の開始」

(ぴーとはいった。「たいまーはせっとずみです」「いいかんがえね」)

ピートは言った。「タイマーはセット済です」「いい考えね」

(じょいはそういってはなれていく。ぴーとにばしょをあけわたすのだ。)

女医はそう言って離れていく。ピートに場所を明け渡すのだ。

(こんかいのしごとで、このおとこにしうんてんをさせるために。それもわたしをざいりょう)

今回の仕事で、この男に試運転をさせるために。それも私を材料

(としたしうんてんを。おんがくのヴぉりゅーむがわずかにひくくなる。)

とした試運転を。音楽のヴォリュームがわずかに低くなる。

(「こんかいのたいしょうしゃははくじんだんせい、ねんれいはよんじゅうよんさい」こうせいのひとにつたえるため、)

「今回の対象者は白人男性、年齢は四十四歳」後世の人に伝えるため、

(ぴーとがまいくにむかってはなしている。)

ピートがマイクに向かって話している。