第四解剖室　スティーヴン・キング　16

(「まあ、せんせいがぼくをかばーしてくれるのならーー」「もちろんよ」)

「まあ、先生が僕をカバーしてくれるのならーー」「もちろんよ」

(じょいはいう。「だれだって、いつかははつたいけんはすませなくちゃいけない)

女医は言う。「誰だって、いつかは初体験はすませなくちゃいけない

(のよ。それにもしひつようがあったら、てーぷをまきもどしてろくおん)

のよ。それにもし必要があったら、テープを巻き戻して録音

(しなおしたっていいんだし」ぴーとはおどろきもあらわなかおをみせる。)

し直したっていいんだし」ピートは驚きもあらわな顔を見せる。

(「そんなことができるのかい？」じょいはほほえみ、わざとどいつなまりでいう。)

「そんなことができるのかい？」女医は微笑み、わざとドイツ訛りでいう。

(「だいよんかいぼうしつには、たくさんのきょういがかくされているのよ、わがきみ」)

「第四解剖室には、たくさんの驚異が隠されているのよ、我が君」

(「そうだろうな」ぴーとはほほえみをかえし、わたしのこおりついたしせんをよこぎる)

「そうだろうな」ピートは微笑みを返し、私の凍り付いた視線を横切る

(ようにてをのばす。もとのばしょにひきもどされたそのてには、くろいこーどで)

ように手を伸ばす。元の場所に引き戻されたその手には、黒いコードで

(てんじょうからつられているまいくろふぉんがにぎられている。)

天井からつられているマイクロフォンが握られている。

(まいくがめにみえたことで、このきょうふのひとまくがこれまでとはちがったいみで)

マイクが目に見えた事で、この恐怖の一幕がこれまでとは違った意味で

(げんじつみをおびはじめる。これなら、こいつらもわたしをきりきざむことはあるまい？)

現実味を帯び始める。これなら、こいつらも私を切り刻むことはあるまい？

(ぴーとはべてらんではないものの、とにもかくにもいがくのくんれんは)

ピートはベテランではないものの、とにもかくにも医学の訓練は

(うけているはず。だったら、あのらふでぼーるをさがしているとき、)

受けているはず。だったら、あのラフでボールを探しているとき、

(わたしがなにかにかまれたこんせきをみつけだすだろうし、そうでなければ)

私が何かにかまれた痕跡を見つけ出すだろうし、そうでなければ

(すくなくともうたがいのねんくらいはいだくはず。ああ、うたがいはじめるに)

すくなくとも疑いの念くらいは抱くはず。ああ、疑いはじめるに

(きまっている。)

決まっている。

(それでもわたしは、ひじょうなきぬのかがやきをもついしゃたちのはさみやしんこうなりきんばんの)

それでも私は、非情な絹の輝きを持つ医者達のハサミや新興成金版の

(とりにくようかったーからめがはなせない。このおとこがわたしのしんぞうをきょうかくから)

鶏肉用カッターから目が離せない。この男が私の心臓を胸郭から

(とりだし、こおりついたわたしのめのまえにちのしたたるしんぞうをしばしささげもってから、)

取り出し、凍り付いた私の目の前に血の滴る心臓をしばし捧げ持ってから、

(おもむろにはかりにのせてじゅうりょうをけいそくしたあとでも、わたしはまだこうやって)

おもむろに秤に載せて重量を計測した後でも、私はまだこうやって