ヒューマとニズム〈対話篇〉

(りんじんをあいしたにんのためにこうどうしていきよ)

♦隣人を愛し、他人のために行動して生きよ

(しんじんぶかいことですね)

♠信心深いことですね

(ではめのまえのどちらかひとりしかたすけられないときはどうすりゃいい)

では目の前のどちらか一人しか助けられない時はどうすりゃいい？

(りんじんはどっちたにんはどっち)

隣人はどっち？他人はどっち？

(だれをあいしてだれのためにこうどうすればいいのですおしえてよ)

誰を愛して誰のために行動すればいいのです？教えてよ

(あしたしぬかのようにいきこうかいのないじんせいにせよ)

♦明日死ぬかのように生き、後悔のない人生にせよ

(しゅしょうなかんがえかたですね じゃあほんとうにあしたしんでしまったら)

♠殊勝な考え方ですね　 じゃあ、本当に明日、死んでしまったら

(ゆういぎにいきられたとか くいがのこったとかだれがかんじるの)

有意義に生きられたとか 悔いが残ったとか誰が感じるの？

(われおもわぬゆえにわれなし かえりみるわたしはねえどこにいるの)

我思わぬ故に我なし 顧みる私はねえ？どこにいるの？

(しゅうかんやことばやりろんやせいどやじょうしきでどろだらけになって)

習慣や言葉や理論や制度や常識で泥だらけになって

(じゆうというふあんをきりうり ふじゆうというあんしんをかうの)

自由という不安を切り売り 不自由という安心を買うの？

(おいてかないでちょっとまって しるべよほらひかっててってて)

♦置いてかないでちょっと待って 標よほら光って照ってて

(このてをぎゅっととってひいてくれるそんざいをまってるの)

この手をぎゅっと取って引いてくれる存在を待ってるの

(ふあんばかりかってほうじゅううって あんしんかってもうじゅう)

♠不安ばかり、勝手、放縦売って 安心勝って、盲従

(じゅうじゅんにみえるもんはたいてい ていさいをととのえたたいだだ)

従順にみえるもんは大抵 体裁を整えた怠惰だ

(わたしはいったいなんなのか たえずじぶんをさがしてまして)

♦私は一体なんなのか？ 絶えず自分を探してまして

(なんともりっぱなことですね ではあなたはじぶんをさがすというけど)

♠なんとも立派なことですね ではあなたは「自分」を探すというけど

(どっかにおちてるものですか それはれでぃめいどなものですか)

どっかに落ちてるものですか？ それは既製品(レディメイド）なものですか？

(じぶんはさがすものですか みずからでつくるものじゃないの)

「自分」は探す"物"ですか？ 自らで創る"者"じゃないの？

(ひとというじのようにささえあっていきていく)

♦「人」という字のように支えあって生きていく

(たすけあいのそのなかでぼくらはあいをしるんだ)

助け合いのその中で僕らは愛を知るんだ

(ひとというじのようにからだをあずけすぎては)

♠「人」という字のように体を預けすぎては

(ささえがなくなったときもうたてないとしるんだ)

支えがなくなった時もう立てないと知るんだ

(ろまんにみちたうつくしいにんげん)

♦♠浪漫(欺瞞)に満ちた美しい(愚かしい)人間！

(れっとうてんこもってもって じぶんにかちないっていって)

♦劣等、天鼓盛って、持って 自分に価値ないっていって

(おちこむことないってだって そうぞうそれだけですばらしい)

落ち込むことないってだって 創造、それだけで素晴らしい

(こういをみずにわっぱさっぱ そんざいをほめてぱっぱらっぱ)

♠「行為」を見ずにわっぱさっぱ 「存在」を褒めてぱっぱらっぱ

(きみのきからみのってなった かじつのかちでかたってくれ)

君の木から実って生った 果実の価値で語ってくれ

(なぜぼくはうまれてきたの)

♦なぜ、僕は生まれてきたの？

(あなたのりょうしんがそれをのぞんだから)

♠あなたの両親がそれを望んだから

(じゃあそのりょうしんはなぜうまれてきたの)

♦じゃあその両親はなぜ生まれてきたの？

(そのまたりょうしんがのぞんだから)

♠そのまた両親が望んだから

(じゃあいちばんさいしょのおやはだれにのぞまれたの)

♦じゃあ一番最初の親は誰に臨まれたの？

(かみさまだとしたら)

♠神様だとしたら？

(そのかみさまはだれにのぞまれてうまれてきたの)

♦その神様は誰に望まれて生まれてきたの？

(どうしてなぜなんのために)

♠どうして？なぜ？何のために？

(ぎもんをかさねいきつく そのさいごのくうはくがさうまらなければふあんかい)

疑問を重ね、行き着く その最後の空白がさ埋まらなければ不安かい？

(それはただむげんにれんさするいみのちえん)

♠(それはただ、無限に連鎖する意味の遅延)

(むげんこうたいじゅんかんろんぽうなまのじじつふじょうりのふあん)

(無限後退　循環論法　ナマの事実　不条理の不安)

(なぜなにもないのではなくなにかがあるのか)

(なぜ何もないのではなく、何かがあるのか)

(わたしのことばのげんかいはわたしのせかいのげんかいをいみする)

(私の言葉の限界は私の世界の限界を意味する)

(なにかのためにきっとちゃんと うまれおちたんだってもって)

♦何かのために屹度ちゃんと 生まれ落ちたんだって以て

(ぴーすはほらぴたっとふぃっと せかいのどこかにはまるんだ)

ピース(あなた)はほらピタッとフィット 世界のどこかに嵌まるんだ

(せいのいみとかいっていってんもののじぶんつねにそうてい こうていどおりしたがってかんせい)

♠「生」の意味とか言って、一点物の自分、常に想定 行程通り従って完成？

(じぶんくらいじぶんでつくれ)

自分くらい自分で創れ

(ぼくはだれだにっちさっち きしかたゆくすえってどっち)

♦僕は誰だ？二進、三進 来し方行く末ってどっち？

(こたえはどれふいっちがっち このせいのいみをおしえてくれ)

答えはどれ？不一致？合致？ この「生」の意味を教えてくれ

(まだそんなこといって せかいにいみはないないない)

♠まだそんなこと言って 世界に意味はナイナイナイ

(じぶんをみだしたいなら あなたがいみをあたえるんだ)

自分を見出したいなら あなたが意味を与えるんだ

(せかいはだからからなんだ)

世界はだから空なんだ