ねこにゃんこ(きなこ燃えちゃった事件)
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問題文
(うちのねこ「きなこ」はさんまがだいこうぶつである。)
うちの猫「きなこ」はサンマが大好物である。
(かいぬしであるぼくがすきでよくたべるのできなこもすきになったみたいだ。)
飼い主である僕が好きでよく食べるのできなこも好きになったみたいだ。
(さんまのしおやきのじゅんびにはいるとじょうきをいっしたこうどうにでる。)
サンマの塩焼きの準備に入ると常軌を逸した行動に出る。
(すきすぎるくらいだいすきでさんまをさばきはじめようとするあたりから、)
好きすぎるくらい大好きでサンマをさばき始めようととするあたりから、
(はんきょうらんになってきっちんのまわりをちょろちょろとうごきまわる。)
半狂乱になってキッチンの周りをちょろちょろと動き回る。
(とてもじゃまなので「まって」とこえをかけるが、さんまだけはいうことをきかない。)
とても邪魔なので「待って」と声をかけるがサンマだけはいうことを聞かない。
(ほうちょうをつかっているものの、まちがってさしたりするきけんはほとんどない。)
包丁を使っているものの、間違って刺したりする危険はほとんどない。
(ぼくもなれてしまったしまちがってささってしまうようなまあいにははいってこない。)
僕も慣れてしまったし間違って刺さってしまうような間合いには入ってこない。
(きっちんかうんたーのうえでおちつきなくあるきまわり、)
キッチンカウンターの上で落ち着きなく歩き回り、
(すきあらばまないたのところまでしんにゅうしてくる。)
隙あらばまな板のところまで侵入して来る。
(しかしそのひはちがった。)
しかしその日は違った。
(いつものようにさばきおわりぐりるにいれようとすると、)
いつものようにさばき終わりグリルに入れようとすると、
(きなこは「にゃにゃにゃ」とないてれんじのうえでおどっているのだ。)
きなこは「にゃにゃにゃ」と鳴いてレンジの上で踊っているのだ。
(そのときぼくはみそしるをつくりわすれていることにきがついた。)
その時僕は味噌汁を作り忘れていることに気が付いた。
(「あーしまった。まあいっか。」)
「あーしまった。まあいっか。」
(いつもならみそしるのなべがあるのでれんじのうえにははいってこれないのだ。)
いつもなら味噌汁の鍋があるのでレンジの上には入ってこれないのだ。
(このひはなべがないのをいいことにれんじのうえから)
この日は鍋がないのをいいことにレンジの上から
(ぐりるのうえでおどりながらのぞきこもうとする。)
グリルの上で踊りながら覗き込もうとする。
(ねこならではのきようさである。「おい、あぶないって!」)
猫ならではの器用さである。「おい、危ないって!」
(「やいたらあげるからいいこであっちいってまっててくれよ。」)
「焼いたらあげるからいい子であっち行って待っててくれよ。」
(といってもこうふんさめやらぬようすで「ううにゃ。ううにゃ。」)
といっても興奮冷めやらぬ様子で「ううにゃ。ううにゃ。」
(となきながられんじのうえをみぎにひだりにかけめぐる。)
と鳴きながらレンジの上を右に左に駆け巡る。
(「しょーがねぇな」となにげなしにぐりるのすいっちをおした。)
「しょーがねぇな」と何気なしにグリルのスイッチを押した。
(そのしゅんかん「ぼぼぼぼ、ぼぼ、ぼぼぼっ」)
その瞬間「ぼぼぼぼ、ぼぼ、ぼぼぼっ」
(とひのたまがすごいすぴーどでめのまえにあらわれみぎからひだりにきえた。)
と火の玉がすごいスピードで目の前に現れ右から左に消えた。
(どうやらぼくはうっかりぐりるではなく)
どうやら僕はうっかりグリルではなく
(れんじのすいっちをおしてしまったらしい。)
レンジのスイッチを押してしまったらしい。
(かおからちのけがひいていくのがはっきりとわかった。)
顔から血の気がひいていくのがはっきりとわかった。
(それがせすじをつたわってからだじゅうにまわるのにこんまいちびょうとは)
それが背筋を伝わってカラダ中に回るのにコンマ一秒とは
(かかっていないことはあきらかだった。)
かかっていない事は明らかだった。
(きなこにとってはまさにきしゅうである。)
きなこにとってはまさに奇襲である。
(ぼくはぐりるをのぞきこんでいるし、)
僕はグリルを覗き込んでいるし、
(まさかじぶんのはらのましたからとつぜんのほのおがまいあがるとは)
まさか自分の腹の真下から突然の炎が舞い上がるとは
(きなこもゆめにもおもっていなかったらしい。)
きなこも夢にも思っていなかったらしい。
(ひのたまのとんでいったほうこうをしゅんじにみると)
火の玉の飛んで行った方向を瞬時に見ると
(そこにはきなこがにほんあしでたっており、)
そこにはきなこが二本足で立っており、
(びどうだにせずかたまっており「なにすんだ。このやろう」)
微動だにせず固まっており「なにすんだ。この野郎」
(というこおりついたまなざしでむごんのいかりをはっしていた。)
という凍り付いたまなざしで無言の怒りを発していた。
(さいわいひはおなかのけをすこしこがしただけできえていた。)
幸い火はおなかの毛を少し焦がしただけで消えていた。
(ねこのけはもえにくくできているんだろうか?)
猫の毛は燃えにくくできているんだろうか?
(きなこはにほんあしでたったままかぶきのようにあたまをぐるぐるまわし)
きなこは二本足で立ったまま歌舞伎のように頭をぐるぐる回し
(そのままこげたおなかをけづくろいしはじめた。)
そのまま焦げたおなかを毛づくろいし始めた。
(「ごめん。ごめん。ほんっとごめん。」ぼくはせいしんせいいきなこにあやまった。)
「ごめん。ごめん。ほんっとごめん。」僕は誠心誠意きなこに謝った。
(「きょうはすきなだけさんまあげるからゆるしてね。」)
「今日は好きなだけサンマあげるから許してね。」
(いつもはさんまをむしりながらこうごにたべる。)
いつもはサンマをむしりながら交互に食べる。
(きなこはきほんよくできすぎたにゃんこなので)
きなこは基本よくできすぎたにゃんこなので
(ぼくのとなりでぎょうぎよくすわってまちながらむしって)
僕の隣りで行儀よく座って待ちながらむしって
(てのうえにのせたさんまをたべる。)
手の上にのせたサンマを食べる。
(やくまえのこうふんぐあいからくらべるとべつねこである。)
焼く前の興奮具合から比べると別猫である。
(このひはきなこがまんぞくするまでぼくはひたすらむしりつづけた。)
この日はきなこが満足するまで僕はひたすらむしり続けた。
(てのうえにのせてたべさせてあげるとねこのしたのざらざらかんがきもちいい。)
手の上に載せて食べさせてあげると猫の舌のざらざら感が気持ちいい。
(ねこずきにとってのしふくのときのひとつである。)
猫好きにとっての至福の時のひとつである。
(しかしこのひはてのひらすりむくんじゃねえかとおもうほどなめられた。)
しかしこの日は手のひらすりむくんじゃねえかと思うほどなめられた。
(きなこはさんまをまるまるいちびたいらげていた。)
きなこはサンマを丸々一尾たいらげていた。
(「すげぇな。おまえ・・・」「しょくよく・・・」)
「すげぇな。お前・・・」「食欲・・・」
(といいつつぼくはおなかのけをはやくのばそうとでもしているのかとおもった。)
と言いつつ僕はおなかの毛を早く伸ばそうとでもしているのかと思った。
(そのとき、ひとりといっぴきぐらしのぼくはじぶんのおかずのないことにきがついた。)
その時、一人と一匹暮らしの僕は自分のおかずのないことに気が付いた。
(いまさらべつのおかずをつくるのはめんどうだしむしりつかれてたつきもしないので、)
今更別のおかずを作るのは面倒だしむしり疲れて立つ気もしないので、
(さんまようのだいこんおろしをしろめしにかけ、むなしくもぼくのばんめしは)
サンマ用の大根おろしを白飯にかけ、むなしくも僕の晩飯は
(「だいこんおろしかけごはん」となった。)
「大根おろしかけごはん」となった。
(へるしーかんいっぱいだが、このひからりぴーとすることは)
ヘルシー感いっぱいだが、この日からリピートする事は
(いちどもないれしぴである。)
一度もないレシピである。
(このひいこうも、さんまをやくひのきなこのこうふんぶりはあいかわらずで)
この日以降も、サンマを焼く日のきなこの興奮ぶりは相変わらずで
(みそしるをつくっているひもじょうずにすりぬけれんじのうえで)
味噌汁を作っている日も上手にすり抜けレンジの上で
(はしゃぐようになってしまった。)
はしゃぐようになってしまった。
(きっちんのきけんどはましてきんちょうかんただようせんじょうになってしまった。)
キッチンの危険度は増して緊張感漂う戦場になってしまった。
(まさかきなこがはらのけをやかせたらまるまるいちびくえるぞと)
まさかきなこが腹の毛を焼かせたら丸々一尾喰えるぞと
(おもっていないことをいのっている。)
思っていないことを祈っている。