ねこにゃんこ(愛のキズ跡)

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一人と一匹暮らしの日常
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問題文

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(いいこすぎるくらいよくできたにゃんこのきなこは)

いい子過ぎるくらいよくできたにゃんこのきなこは

(よくぼくのめのまえにきてとつぜんごろんとおなかをみせてころがる。)

よく僕の目の前に来て突然ゴロンとおなかを見せて転がる。

(これはかまってほしいのあいずのようだ。)

これはかまって欲しいの合図のようだ。

(これをしてくるとまずはりんぱまっさーじをしてあげる。)

これをしてくるとまずはリンパマッサージをしてあげる。

(ひだりのわきのしたをやさしくなでてあげるとたたんでいた)

左の脇の下を優しく撫でてあげるとたたんでいた

(うでをばんざいしてきもちよさそうにめをほそめる。)

腕を万歳して気持ちよさそうに目を細める。

(しばらくするとはんたいがわにすこしからだをななめにして)

しばらくすると反対側に少し身体を斜めにして

(こんどはみぎのわきのしたをやってくれとようきゅうしてくる。)

今度は右の脇の下をやってくれと要求してくる。

(さいしゅうてきにはばんざいをしたようなかっこうになる。)

最終的には万歳をしたような恰好になる。

(「かわいいね~。きもちいいかい?」といいながらしばらくなでている。)

「かわいいね~。気持ちいいかい?」と言いながらしばらく撫でている。

(なにもこたえないがめをほそめているところをみると)

何も答えないが目を細めているところを見ると

(きもちいいんだろうなとかってにきめつけている。)

気持ちいいんだろうなと勝手に決めつけている。

(なでているぼくはというとねこのけのやわらかさと)

撫でている僕はというと猫の毛の柔らかさと

(ちょうもうのもふもふかんとあいまってきもちいい。うぃんうぃんのかんけいだ。)

長毛のモフモフ感とあいまって気持ちいい。ウィンウィンの関係だ。

(ねこかいにとってしふくのときのひとつである。)

猫飼いにとって至福の時のひとつである。

(しかしそれはとつぜんやってきた。すいっちがはいったのだ。きなこの・・・。)

しかしそれは突然やってきた。スイッチが入ったのだ。きなこの・・・。

(なにがきっかけかさっぱりわからないがせんとうもーどになってしまった。)

何がきっかけかさっぱり分からないが戦闘モードになってしまった。

(なでているひだりてをりょうてのつめでがっちりとかかえこみうごけないようにしてかじかじ。)

撫でている左手を両手の爪でがっちりと抱え込み動けないようにしてカジカジ。

(ほっておくとえすかれーとし、つめはどんどんくいこみちがにじみはじめた。)

ほって置くとエスカレートし、爪はどんどん食い込み血が滲み始めた。

(きばはみぎにひだりにくいちぎられるようないきおいでちからをましていくのだ。)

牙は右に左に食い千切られるような勢いで力を増していくのだ。

など

(それとどうじにこうそくかいてんのねこきっくがぼくのうでを)

それと同時に高速回転の猫キックが僕の腕を

(みぎあし、ひだりあしとこうごにくりだされえぐっていく。)

右足、左足と交互に繰り出されえぐっていく。

(さすがらいおんやとらのなかまである。)

さすがライオンやトラの仲間である。

(ぼくはなにごともいちどはげんかいまでいかないときがすまないたいぷなので)

僕は何事も一度は限界までいかないと気が済まないタイプなので

(ぎりぎりまでたえた。)

ギリギリまで耐えた。

(げんかいまできたそのとき、ぼくはさけんだ「いーたたたた、たーい。」)

限界まできたその時、僕は叫んだ「いーたたたた、たーい。」

(きなこのうごきがぴたりととまった。)

きなこの動きがピタリと止まった。

(おめめをまんまるにしてぼくをみてかたまっている。)

おめめを真ん丸にして僕を見て固まっている。

(「いたいよ。きなこ・・・」)

「痛いよ。きなこ・・・」

(するときなこはうわめづかいで「ごめんね」ってひょうじょうをして)

するときなこは上目遣いで「ごめんね」って表情をして

(ちがにじみでるかみあとをぺろぺろとなめてくれた。)

血が滲み出るかみあとをぺろぺろとなめてくれた。

(そのかおとひょうじょうのかわいさといったらこころにちょくせつつきささるかわいさなのだ。)

その顔と表情のかわいさと言ったら心に直接突き刺さるかわいさなのだ。

(まさにこいのとらうまきゅう、きゅうきょくのつんでれである。)

まさに恋のトラウマ級、究極のツンデレである。

(きなこにとってはほんのあそびでじゃれていたのだ。)

きなこにとってはほんの遊びでじゃれていたのだ。

(きなこのほんのうのなせるわざなのだ。)

きなこの本能の為せる業なのだ。

(もちろんいかれるはずもない。しかくもない。だってきなこはにゃんこなのだ。)

もちろん怒れるはずもない。資格もない。だってきなこはにゃんこなのだ。

(よくじつ、かいしゃにいくとわかいじょししゃいんがぼくのひだりてくびをみて)

翌日、会社に行くと若い女子社員が僕の左手首を見て

(おどろきのひょうじょうをかくせないめをしていった。)

驚きの表情を隠せない目をして言った。

(「ま、まさかりすとかっとじゃあないですよね・・・」)

「ま、まさかリストカットじゃあないですよね・・・」

(ぼくはだまってひだりうでのしゃつをまくりあげ、うでのきずすべてをみせた。)

僕は黙って左腕のシャツをまくり上げ、腕の傷すべてを見せた。

(じょししゃいんはりょうてをくちにあててめをきなこのようにまんまるくしてぼくをみた。)

女子社員は両手を口にあてて目をきなこのようにまんまるくして僕をみた。

(「きなこかっとだよ・・・」「いったいきなこちゃんとなにしてるんですか?」)

「きなこカットだよ・・・」「一体きなこちゃんと何してるんですか?」

(とわらいながらたちさっていった。)

と笑いながら立ち去っていった。

(そのあともぼくときなことのこのきんだんのあそびはつづいた。)

その後も僕ときなことのこの禁断の遊びは続いた。

(だがしだいにぼくも「いーたたたた、たーい。」のたいみんぐをおぼえ、)

だが次第に僕も「いーたたたた、たーい。」のタイミングを覚え、

(きなこもちからかげんをおぼえいまではちがでることはなくなって)

きなこも力加減を覚え今では血が出ることはなくなって

(きずにすらならなくなった。)

傷にすらならなくなった。

(それでもきなこは「ごめんね」ってかおしてあまがみしたあとを)

それでもきなこは「ごめんね」って顔して甘噛みした跡を

(ぺろぺろとなめてくれる。)

ペロペロとなめてくれる。

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