黒蜥蜴13

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プレイ回数1495難易度(4.5) 3526打 長文 長文モード可
明智小五郎シリーズ
江戸川乱歩の作品です。句読点以外の記号は省いています。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 デコポン 6748 S+ 6.9 97.7% 502.8 3474 81 53 2024/03/22
2 ROBIN 2897 E+ 3.0 95.6% 1153.7 3502 159 53 2024/03/26

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問題文

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(ふたりともまいばんすいみんざいをのんでねるのだそうです。おそろしいよこくじょうで、)

「二人とも毎晩睡眠剤を呑んで寝るのだそうです。恐ろしい予告状で、

(しんけいすいじゃくになっているのですね あら、もういっぷんしかありませんわ。あけちさん)

神経衰弱になっているのですね」「あら、もう一分しかありませんわ。明智さん

(だいじょうぶでしょうか ふじんがたちあがってとんきょうなこえをたてた。だいじょうぶですとも、)

大丈夫でしょうか」夫人が立ちあがって頓狂な声を立てた。「大丈夫ですとも、

(このとおりなにごともおこらないじゃありませんか あけちもおもわずたって、いように)

この通り何事も起こらないじゃありませんか」明智も思わず立って、異様に

(こうふんしているふじんのかおを、ふしぎそうにのぞきこんだ。でも、まださんじゅうびょう)

昂奮している夫人の顔を、不思議そうにのぞきこんだ。「でも、まだ三十秒

(あります みどりかわふじんは、もえるようなめであけちをみかえしながらさけんだ。ああ、)

あります」緑川夫人は、燃えるような眼で明智を見返しながら叫んだ。ああ、

(にょぞくはいま、しょうりのかいかんによっているのだ。めいたんていあけちこごろうをむこうにまわして、)

女賊は今、勝利の快感に酔っているのだ。名探偵明智小五郎を向こうに廻して、

(ついにがいかをあげるときがきたのだ。おくさん、あなた、そんなにぞくのうでまえを)

ついに凱歌をあげる時がきたのだ。「奥さん、あなた、そんなに賊の腕前を

(しんようなさるのですか あけちのめにもいっしゅのひかりがやどっていた。かれはふじんの)

信用なさるのですか」明智の眼にも一種の光が宿っていた。彼は夫人の

(げしがたいひょうじょうのなぞをとこうとしてくもんしているのだ。なんだろう。)

解しがたい表情の謎を解こうとして苦悶しているのだ。なんだろう。

(このえたいのしれないびじんは、いったいなにをかんがえてこんなにこうふんしているのだろう。)

このえたいの知れない美人は、一体何を考えてこんなに昴奮しているのだろう。

(ええ、しんようしますわ。あんまりしょうせつてきなくうそうかもしれませんけど。でも、)

「ええ、信用しますわ。あんまり小説的な空想かも知れませんけど。でも、

(いまにもくらやみのきしが、どこからかそっとしのびこんできて、うつくしいおじょうさんを)

今にも暗闇の騎士が、どこからかソッと忍びこんできて、美しいお嬢さんを

(かどわかしていくのではないかと、こうありありとめにみえるようにおもわれて)

かどわかして行くのではないかと、こうアリアリと眼に見えるように思われて

(なりませんの うふふふふふ あけちがとうとうふきだしてしまった。)

なりませんの」「ウフフフフフ」明智がとうとうふきだしてしまった。

(おくさん、ごらんなさい。あなたがそんなちゅうせいきのかくうだんをやっていらっしゃる)

「奥さん、ごらんなさい。あなたがそんな中世期の架空談をやっていらっしゃる

(あいだに、とけいはもうじゅうにじをすぎてしまいましたよ。やっぱりかけはぼくの)

あいだに、時計はもう十二時を過ぎてしまいましたよ。やっぱり賭けは僕の

(かちでしたね。では、あなたのほうせきをいただきましょうか。ははははは)

勝ちでしたね。では、あなたの宝石を頂きましょうか。ハハハハハ」

(あけちさん、あなたはほんとうにかけにおかちになったとおもいまして?ふじんは)

「明智さん、あなたはほんとうに賭けにお勝ちになったと思いまして?」夫人は

(あかいくちびるをどくどくしくゆがめて、わざとゆっくり、ゆっくりものをいった。かのじょは)

紅い唇を毒々しくゆがめて、わざとゆっくり、ゆっくり物をいった。彼女は

など

(しょうりのせつなのかいかんに、ついきふじんらしいさほうをさえわすれてしまったのだ。)

勝利の刹那の快感に、つい貴婦人らしい作法をさえ忘れてしまったのだ。

(えっ、すると、あなたは......あけちはびんかんにそのいみをさとって、)

「えっ、すると、あなたは......」明智は敏感にその意味をさとって、

(なんともしれぬきょうふに、さっとかおいろをかえた。あなたはまだ、さなえさんが)

なんとも知れぬ恐怖に、サッと顔色を変えた。「あなたはまだ、早苗さんが

(はたしてかどわされなかったかどうか、たしかめてもごらんなさらないじゃ)

果たしてかどわされなかったかどうか、確かめてもごらんなさらないじゃ

(ありませんか ふじんはかちほこったようにいうのだ。しかし、しかし、)

ありませんか」夫人は勝ちほこったようにいうのだ。「しかし、しかし、

(さなえさんは、ちゃんと......さすがのめいたんていもしどろもどろであった。)

早苗さんは、ちゃんと......」さすがの名探偵もしどろもどろであった。

(きのどくにも、かれのひろいひたいには、じっとりとあぶらあせがうかんでいた。ちゃんと)

気の毒にも、彼の広い額には、じっとりと脂汗が浮かんでいた。「ちゃんと

(べっどにおやすみになっているとおっしゃるのでしょう。でも、あすこに)

ベッドにおやすみになっているとおっしゃるのでしょう。でも、あすこに

(ねているのがほんとうにさなえさんでしょうかしら。もしやだれかまったくべつの)

寝ているのがほんとうに早苗さんでしょうかしら。もしやだれか全く別の

(むすめさんではないでしょうかしら そんな、そんなばかなことが・・・・・・)

娘さんではないでしょうかしら」「そんな、そんなばかなことが……」

(くちではつよくいうものの、あけちがふじんのことばにおびやかされていたしょうこには、かれは)

口では強くいうものの、明智が夫人の言葉におびやかされていた証拠には、彼は

(いきなりしんしつにかけこんで、ねいっているいわせしをゆりおこした。)

いきなり寝室に駈けこんで、寝入っている岩瀬氏をゆり起こした。

(な、なんです。どうかしたのですか いわせしはさいぜんから、すいまとたたかって)

「な、なんです。どうかしたのですか」岩瀬氏はさいぜんから、睡魔と戦って

(なかばいしきをとりもどしていたので、ゆりうごかされると、がばとはんしんをおこして、)

半ば意識を取りもどしていたので、ゆり動かされると、ガバと半身を起こして、

(うろたえてたずねた。おじょうさんをみてください。そこにやすんで)

うろたえてたずねた。「お嬢さんを見てください。そこにやすんで

(いらっしゃるのは、たしかにおじょうさんにちがいありませんね あけちらしくもない)

いらっしゃるのは、確かにお嬢さんにちがいありませんね」明智らしくもない

(ぐもんである。なにをおっしゃるのだ。むすめですよ。あれがむすめでなくして)

愚問である。「なにをおっしゃるのだ。娘ですよ。あれが娘でなくして

(いったいだれが......いわせしのことばが、ぷっつりきれてしまった。かれは)

一体だれが......」岩瀬氏の言葉が、プッツリ切れてしまった。彼は

(なにかしらはっとしたように、さなえさんのうしろむきのとうぶをぎょうししているのだ。)

何かしらハッとしたように、早苗さんのうしろ向きの頭部を凝視しているのだ。

(さなえ!さなえ!いわせしのせきこんだこえが、れいじょうのなをよびつづけた。)

「早苗!早苗!」岩瀬氏のせきこんだ声が、令嬢の名を呼びつづけた。

(へんじがない。かれはべっどをはなれて、よろよろとさなえさんのべっどにちかづき、)

返事がない。彼はベッドをはなれて、よろよろと早苗さんのベッドに近づき、

(かのじょのかたにてをかけてゆりおこそうとした。だが、ああ、いったいぜんたいこれは)

彼女の肩に手を掛けてゆり起こそうとした。だが、ああ、一体全体此は

(どうしたことだ。そこにはじつにへんてこなことには、かたというものが)

どうしたことだ。そこには実にへんてこなことには、肩というものが

(なかったのだ。おさえるともうふがぺこんとへこんでしまったのだ。あけちさん、)

なかったのだ。押さえると毛布がペコンとへこんでしまったのだ。「明智さん、

(やられた。やられました いわせろうじんのくちから、なんともいえぬどごうが)

やられた。やられました」岩瀬老人の口から、なんともいえぬ怒号が

(ほとばしった。だれです。そこにねているのは、おじょうさんではないのですか)

ほとばしった。「だれです。そこに寝ているのは、お嬢さんではないのですか」

(これをみてください、にんげんじゃないのです。わしらはじつにとんでもない)

「これを見てください、人間じゃないのです。わしらは実に飛んでもない

(ぺてんにかかったのです あけちとみどりかわふじんがかけよってみると、なるほど、)

ペテンにかかったのです」明智と緑川夫人が駈け寄って見ると、なるほど、

(それはにんげんではなかった。さなえさんだとばかりおもいこんでいたのは、いっこむしょうの)

それは人間ではなかった。早苗さんだとばかり思いこんでいたのは、一個無生の

(にんぎょうのくびにすぎなかった。よくようひんてんのしょう・うぃんどうなどにみかける)

人形の首にすぎなかった。よく洋品店のショウ・ウィンドウなどに見かける

(あのくびばかりのにんぎょうにめがねをかけ、さなえさんとそっくりのようはつのかつらを)

あの首ばかりの人形に目がねをかけ、早苗さんとそっくりの洋髪のカツラを

(かぶせたものにすぎなかった。どうたいのかわりにはしきぶとんをそれらしいかたちにまるめて)

かぶせたものにすぎなかった。胴体のかわりには敷蒲団をそれらしい形に丸めて

(もうふがかぶせてあった。)

毛布がかぶせてあった。

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