卒業16

(「しょうじきひがしこうはそんなにあまくない。」)

「正直東高はそんなに甘くない。」

(「・・・・・・。」)

「・・・・・・・。」

(「だいじょうぶだ、めぐみ、おれがついてる。」)

「大丈夫だ、恵、俺がついてる。」

(「ごうかくしてないおまえがいってもせっとくちからないよ。」)

「合格してないお前が行っても説得力ないよ。」

(「じゃあ、らいねんめぐみがうかったら、きょうとにつれてってくれないかな？」)

「じゃあ、来年恵が受かったら、京都に連れてってくれないかな？」

(「きょうとか、ひさしぶりだな・・よし！)

「京都か、久しぶりだな・・よし！

(らいねんごうかくしたらきょうとにごほうびりょこうだ。」)

来年合格したら京都にご褒美旅行だ。」

(「やった～。めぐみがんばれ。」)

「やった～。恵がんばれ。」

(むせきにんにはしゃいでる・・・。)

無責任にはしゃいでる・・・・。

(１がつのさいごのしゅうにじゅけんびがある。)

1月の最後の週に受験日がある。

(じゅけんなまはこうこうへむかっていった。)

受験生は高校へ向かって行った。

(１にちべんきょうもみがいらない。)

一日勉強も身が入らない。

(だいじょうぶとおもっていても、おちつかない。)

大丈夫と思っていても、落ち着かない。

(よくじつはめんせつ。)

翌日は面接。

(１しゅうかんほどでごうかくはっぴょう。)

一週間ほどで合格発表。

(けっかがわかるまできがきではない。)

結果がわかるまで気が気ではない。

(しけんがおわると、としひこくんはかたのにがおりたようで、)

試験が終わると、俊彦君は肩の荷が下りたようで、

(ぶかつにかおをだして、みんなにかといれていた。)

部活に顔を出して、みんなに克といれていた。

(わたしのべんきょうもこれまでいじょうにみっちりとみてくれている。)

私の勉強もこれまで以上にみっちりとみてくれている。

(がっきまつしけんのせいせきもあがっていた。)

学期末試験の成績も上がっていた。

(せんせいからはこのままがんばれば、らいねんのじゅけんはひがしこうも)

先生からはこのまま頑張れば、来年の受験は東高も

(ゆめではないといってもらえた。)

夢ではないと言ってもらえた。

(としひこくんはぶじひがしこうにごうかく。)

俊彦君は無事東高に合格。

(わたしはぎゃくにほめられたり、ごうかくなんてことばをきくとふあんになる。)

私は逆に褒められたり、合格なんて言葉を聞くと不安になる。

(じぶんはごうかくできないんじゃないか。)

自分は合格できないんじゃないか。

(まわりをがっかりさせてしまうんじゃないか。)

周りをがっかりさせてしまうんじゃないか。

(そんなおもいにおしつぶされそうになる。)

そんな思いに押しつぶされそうになる。

(みじかい３がっきはあっというまにすぎていく。)

短い3学期はあっという間に過ぎていく。

(そつぎょうまであと１しゅうかん。)

卒業まで後1週間。

(がっこうでとしひこくんのかおがみれなくなるとおもうと、)

学校で俊彦君の顔が見れなくなると思うと、

(さびしいきもちになる。)

淋しい気持ちになる。

(それとともに、いよいよじゅけんのほんばんにむけて、)

それとともに、いよいよ受験の本番に向けて、

(きもちもひきしめなければならない。)

気持ちも引き締めなければならない。

(ことばではいいあらわせないようなきもちになっている。)

言葉では言い表せないような気持になっている。

(そつぎょうしきのひは、とてもいいてんきになった。)

卒業式の日は、とてもいい天気になった。

(わたしはがっきのじゅんびをするためにすこしだけはやくがっこうへいった。)

私は楽器の準備をするために少しだけ早く学校へ行った。

(がっきをふめんだいをたいいくかんへもっていく。)

楽器を譜面台を体育館へ持って行く。

(まだ、だれもいないたいいくかんにいすがまっすくならんでいる。)

まだ、誰もいない体育館に椅子がまっすく並んでいる。

(ぶたいにはきれいにいけられたはながかざってある、)

舞台には綺麗に活けられた花が飾ってある、

(そつぎょうしきのもじがおおきくかかげられている。)

卒業式の文字が大きく掲げられている。

(きょうでとしひこくんはこのがっこうからいなくなる。)

今日で俊彦君はこの学校からいなくなる。

(４がつからはこうこうせい。)

4月からは高校生。

(おとなになっていくきがして、すこしとおいそんざいにおもえる。)

大人になって行く気がして、少し遠い存在に思える。

(はるやすみ。)

春休み。

(おさむさんが、としひこくんのごうかくいわいといってしょくじにつれていってくれた。)

修さんが、俊彦君の合格祝いと言って食事に連れて行ってくれた。

(しがいちにあるわしょくのれすとらん。)

市街地にある和食のレストラン。

(「すきなものたべていいぞ。」)

「好きなもの食べていいぞ。」

(「おれはすきやき。」)

「俺はすき焼き。」

(「わたしはおさしみていしょく。」)

「私はお刺身定食。」

(「おれもすきやきだな」)

「俺もすき焼きだな」

(としひこくんのうれしそうなかおがまぶしかった。)

俊彦君の嬉しそうな顔が眩しかった。

(わたしもこんなかおになれるのかな？)

私もこんな顔になれるのかな？

(としひこくんはせいふくすがたをわたしにだれよりもさきにみせてくれた。)

俊彦君は制服姿を私に誰よりも先に見せてくれた。

(ぼうずあたまにこんのぶれざーがあんばらんすではあったけど、)

坊主頭に紺のブレザーがアンバランスではあったけど、

(よくにあっていた。)

よく似合っていた。

(しんがっき。)

新学期。

(わたしもきょうからちゅうがく３ねんせい。)

私も今日から中学三年生。

(あさ、げんかんをでようとしたときぽすとにふくろがはいっていた。)

朝、玄関を出ようとしたときポストに袋が入っていた。

(としひこくんからだった。)

俊彦君からだった。

(なかにはのーとがはいっていた。)

中にはノートが入っていた。

(のーとには、)

ノートには、

(”めぐみへ、きょうからおれはこうこうせい。)

”恵みへ、今日から俺は高校生。

(まいにちあえなくなるだから、これはこうかんにっきだ。)

毎日会えなくなるだから、これは交換日記だ。

(なんでもいいからかいてくれ、なんでもおれにはなせよ。)

何でもいいから書いてくれ、何でも俺に話せよ。

(ひとりでなやむな、ひとりでなくな、いいな。)

一人で悩むな、一人で泣くな、いいな。

(らいねんはいっしょにでんしゃでつうがくしような！いってきます”)

来年は一緒に電車で通学しような！行ってきます”

(わたしのことをかんがえてくれるとしひこくんのきもちが)

私の事を考えてくれる俊彦君の気持ちが

(すごくうれしくて、あたたかいきもちになった。)

すごく嬉しくて、温かい気持ちになった。

(わたしもがんばらないといけないと、あらためてちかった。)

私も頑張らないといけないと、改めて誓った。