空腹

(よろこびもしらないぼくらに)

喜びも知らないボクらに

(みかねたかみさまのいうことには)

見かねた神様の言うことには

(いのちをやどしてみたんだとそまつなものだな)

命を宿してみたんだと 粗末なものだな

(これはかんじょうというのかこのいたみはあいというのか)

これは感情というのか この痛みは愛というのか

(そしてこのみたされないかんかくをくうふくとよぶようでした)

そしてこの満たされない感覚を 空腹と呼ぶようでした

(いきるためなんだしかたないよな)

生きるためなんだ 仕方ないよな

(あじつけはどんなゆめがいいかな)

味付けはどんな夢がいいかな

(ああぼくはだれだばけものがとりついた)

ああ ボクは誰だ 化け物が取り憑いた

(ゆびさきできょうをしょくしている)

指先で今日を食している

(ああきみのかぼそいこえがいぶくろをしげきしてたまらないや)

ああ 君のか細い声が 胃袋を刺激してたまらないや

(おなかがすいたの)

お腹が空いたの

(なみだをわかしたすーぷときくにたえないゆめのはなしが)

涙を沸かしたスープと 聞くに堪えない夢の話が

(しょくたくについたぼくらをむちゅうにさせていく)

食卓についたボクらを 夢中にさせていく

(ああむしょうにかわくのどかききって)

ああ 無性に乾く喉掻き切って

(したつづみをうちぶれるほんのうのままに)

舌鼓を打ち ぶれる本能のままに

(きれいにごちそうさま)

綺麗にご馳走様

(もういいっていうのにもういいっていうのに)

もういいっていうのに もういいっていうのに

(はいてはくらってここはどこだ)

吐いては喰らって 此処は何処だ

(あきるほどくりかえす)

飽きるほど繰り返す

(きみのなきごえによっている)

君の鳴き声に酔っている

(ああこえがだれかのふこうがひびわれたこころみたしていく)

ああ 声が 誰かの不幸がひび割れた心満たしていく

(おなかがすいたの)

お腹が空いたの

(くちびるをかみつめをへしおり)

唇を噛み 爪をへし折り

(なんどいぶくろをたたいてないた)

何度胃袋を叩いて泣いた？

(これでいいだろうこれでいいだろう)

これでいいだろう これでいいだろう

(なんどつみをかさねてきただろう)

何度 罪を重ねてきただろう

(あたまがおかしくなりそうだ)

頭がおかしくなりそうだ

(ぼくはなにひとつしらない)

ボクは何一つ知らない

(いらないいらないよ)

いらない いらないよ

(これいじょうきずつけてまでいらないたべたくないよ)

これ以上傷つけてまでいらない 食べたくないよ

(こころがたりないこのからだをなんとよぶのだろう)

心が足りない この身体をなんと呼ぶのだろう

(ぐしゃぐしゃにないておいて)

ぐしゃぐしゃに泣いておいて

(したをなめずっていきてきた)

舌を舐ずって生きてきた

(ああきみのかぼそいこえがいぶくろをしげきしてたまらないや)

ああ 君のか細い声が 胃袋を刺激してたまらないや

(おなかがすいたの)

お腹が空いたの

(もういらないよもっとないてみせて)

もういらないよ もっと泣いてみせて

(いらないよおかわりをちょうだい)

いらないよ おかわりを頂戴

(こころがこのからだがいうことをきかないんだ)

心が この身体がいうことを聞かないんだ

(おなかがすいたの)

お腹が空いたの