空とぶかばん 3
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問題文
(「あるところに、ひとたばのまっちがありました。)
「あるところに、一束のマッチがありました。
(このまっちは、すぐ、わたしはきみたちとはうまれもそだちもちがう)
このマッチは、すぐ、私は君たちとは生まれも育ちも違う
(とじまんするのがくせでした。いまはこんなにほそくちいさくされてしまったけれど)
と自慢するのが癖でした。今はこんなに細く小さくされてしまったけれど
(むかしはもりでいちばんふるい、おおきなまつのきだったというのです。)
昔は森で一番古い、大きな松の木だったというのです。
(まっちはたなのうえのひうちばこのとなりで、じまんばなしをはじめました。)
マッチは棚の上の火打ち箱の隣で、自慢話を始めました。
(「ぼくたちのわかいころは、すばらしかったなあ。そう、ぼくたちがまだ)
「僕たちの若い頃は、素晴らしかったなあ。そう、僕たちがまだ
(みどりのきのえだだったころだよ。あさもばんもきらきらひかるつゆの)
緑の木の枝だったころだよ。朝も晩もきらきら光るつゆの
(だいやもんどちゃをのんだものさ。そのつめたくておいしかったことといったら。)
ダイヤモンド茶を飲んだものさ。その冷たくて美味しかったことと言ったら。
(おひさまのひかりもいっぱいだった。かぜがやさしくうたってくれるし)
お日様の光もいっぱいだった。風が優しくうたってくれるし
(いつも、ことりたちがきておはなしをしてくれたよ。)
いつも、小鳥たちが来ておはなしをしてくれたよ。
(それにぼくたちはかねもちだった。だって、ふゆになるとはだかでくらすきもあるのに)
それに僕たちは金持ちだった。だって、冬になると裸で暮らす木もあるのに
(ぼくたちはなつもふゆもみどりのふくをきていられたんだもの。)
僕たちは夏も冬も緑の服を着ていられたんだもの。
(ふゆ、はだかのきたちがうらやましそうにみていたっけ。)
冬、裸の木たちがうらやましそうに見ていたっけ。
(ところがあるひ、きこりがやってきた。きこりははなうたをうたいながら)
ところがある日、木こりがやって来た。木こりは鼻歌をうたいながら
(ぼくたちいっかをきりたおしてすっかりかえってしまったのさ。)
僕たち一家を切り倒してすっかり帰ってしまったのさ。
(ぼくたちはこのときからちりぢりばらばらなんだよ。)
僕たちはこの時からちりぢりばらばらなんだよ。
(だいこくばしらだったふといみきは、りっぱなふねのますとになった。)
大黒柱だった太い幹は、立派な船のマストになった。
(いまごろは、どのあたりのうみをはしっているだろう。)
今ごろは、どのあたりの海を走っているだろう。
(なにしろせかいじゅうのうみをまわっているんだからね。たいしたもんなのさ。)
何しろ世界中の海をまわっているんだからね。たいしたもんなのさ。
(ほかのえだもあちこちへでかけていったよ。そしてこのぼくたちはみんなのために)
ほかの枝もあちこちへ出かけて行ったよ。そしてこの僕たちはみんなのために
(ひをともすというすばらしいやくめをすることになった。)
火をともすという素晴らしい役目をすることになった。
(どうだ、ぼくはこんなだいどころにいてもきみたちとはそだちがちがうというわけさ、ははは」)
どうだ、僕はこんな台所にいても君たちとは育ちが違うという訳さ、ははは」
(「まあ、まっちさんはこんなだいどころとばかになさるけどわたしはちがいます」)
「まあ、マッチさんはこんな台所と馬鹿になさるけど私は違います」
(と、まっちのそばのふるいてつなべがいいました。)
と、マッチのそばの古い鉄鍋が言いました。
(「わたしはうまれるとすぐひにあぶられたり)
「私は生まれるとすぐ火にあぶられたり
(ごしごしからだをこすられたりしてきたわ。)
ごしごし体をこすられたりしてきたわ。
(だけどわたしはとってもたのしいの。ここがだいすきよ。だってわたしはだれよりもふるくから)
だけど私はとっても楽しいの。ここが大好きよ。だって私は誰よりも古くから
(ここにいるからみんながたよりにしてくれるし・・・。)
ここにいるからみんなが頼りにしてくれるし・・・。
(わたしのいちばんのたのしみは、ゆうはんのあときれいにぴかぴかにしてもらってから )
私の一番の楽しみは、夕飯の後きれいにぴかぴかにしてもらってから
(たなにもどってこうしてみんなとおしゃべりすることなの。)
棚に戻ってこうしてみんなとおしゃべりすることなの。
(ときどきみずくみにそとへいくみずさしさんのほかは、ねんがらねんじゅういっぽもそとへでないんだもの)
時々水汲みに外へ行く水差しさんの他は、年がら年中一歩も外へでないんだもの
(まーけっとへいくかいものかごさんだけがにゅーすのはこびやさんだけど)
マーケットへ行く買い物かごさんだけがニュースの運び屋さんだけど
(あのひとは、せいふがどうのじんみんがどうのってむずかしいえんぜつばかりするでしょ。)
あの人は、政府がどうの人民がどうのって難しい演説ばかりするでしょ。
(このあいだもとしよりのつぼさんがおどろいてころげおち、うでがおれちゃったじゃないの。)
この間も年寄りの壷さんが驚いて転げ落ち、腕が折れちゃったじゃないの。
(あのひとのえんぜつにはごようじんよ」)
あの人の演説にはご用心よ」
(「へえ、よくしゃべるなあ」ひうちばこがぱちぱちひばなをちらしました。)
「へえ、よくしゃべるなあ」火打ち箱がパチパチ火花を散らしました。
(「それよりこんやは、もっとたのしくやろうよ」)
「それより今夜は、もっとたのしくやろうよ」
(「いいね。だれのいえがらがいちばんかはなしあおう」とまっちがまたからだをのりだしました。)
「いいね。誰の家柄が一番か話し合おう」とマッチがまた体を乗り出しました。