なくしもの

(ひっしになってむちゅうになってはしってきたせいで)

必死になって夢中になって走ってきたせいで

(だいじにしてたものをどっかでなくしてきてしまったよ)

大事にしてたものをどっかで失くしてきてしまったよ

(へやのなかもぽけっとのなかもほりおこしたけれど)

部屋の中もポケットの中も掘りおこしたけれど

(どこからもでてきてはくれなかった)

どこからも出てきてはくれなかった

(いつおとしたのかなだれかにとられてしまったかな)

いつ落したのかな？　誰かに盗られてしまったかな？

(なにかとまちがえたままじぶんですててしまったかな)

何かと間違えたまま　自分で捨ててしまったかな？

(このひろいひろいまちのなかでふりかえることもままならぬまま)

この広い広い街の中で　振り返ることもままならぬまま

(いそぎあしをやめないでよごれたすそにもきづくことなく)

急ぎ足を止めないで　汚れた裾にも気づくことなく

(おおざっぱにひつようなもんいがいすてていかなきゃもたないしゃかい)

大雑把に必要なもん以外捨てていかなきゃもたない社会

(ほんとうにたいせつなことがたまにわけわかんなくなっちまうよ)

本当に大切なことが　たまに訳分かんなくなっちまうよ

(まちをいくあのひとたちのさがしものはなんだろう)

街を行くあの人たちの探し物はなんだろう

(おのおのべつのものかそれともおなじいっこのものか)

各々別のものか　それとも同じ一個のものか

(ひっしになってむちゅうになってさがしてきたあげく)

必死になって夢中になって探してきたあげく

(あんがいそれをやめたときにみつかったりして)

案外それをやめたときに見付かったりして

(ほんものをもとめるひとにせものをつくろうとするひと)

本物を求める人　偽物を作ろうとする人

(わけあいたいひととうばいあうことをやめないひと)

分け合いたい人と　奪い合うことを止めない人

(このひろいひろいまちのなかでくりかえされていることぜんぶ)

この広い広い街の中で　繰り返されていること全部

(ひとごとのようにおもえなくてくるしくなっちまうのは)

他人事のように思えなくて苦しくなっちまうのは

(たいようもつきもほかのぜんぶもさいしょはいっこだったってこと)

太陽も月も他の全部も最初は一個だったってこと

(みんながかたわれだってことおもいださせるためなんでしょうか)

みんなが「かたわれ」だってこと　思い出させる為なんでしょうか

(いつみつかるかなみんなはもうみつけちゃったのかな)

いつ見付かるかな？　みんなはもう見付けちゃったのかな？

(そもそもぼくらはなにをさがしもとめていきてんだろう)

そもそも僕らは何を　探し求めて生きてんだろう？

(このひろいひろいまちのなかでふりかえることもままならぬまま)

この広い広い街の中で　振り返ることもままならぬまま

(いそぎあしをとめないでよごれたすそにもきづくことなく)

急ぎ足を止めないで　汚れた裾にも気づくことなく

(おおざっぱにひつようなもんいがいすてていかなきゃもたないしゃかい)

大雑把に必要なもん以外捨てていかなきゃもたない社会

(ほんとうにたいせつなものっていったいどんなんだったっけ)

本当に大切なものって一体どんなんだったっけ

(おおきなきたいにむねおどらせるそれとおなじだけがっかりもする)

大きな期待に胸躍らせる　それと同じだけガッカリもする

(みつけてはなくしてたいせつにしてはなげすててる)

見付けては失くして　大切にしては投げ捨ててる

(たいようもつきもほかのぜんぶもめぐりめぐりてらしあっている)

太陽も月も他の全部も巡り巡り照らし合っている

(なくされたものどうしたがいをてらしあってひかってるんだよ)

なくされたもの同士　互いを照らし合って光ってるんだよ