mononoke３

(され！)

去れ！

(こだま。ここにもこだまがいるのか)

コダマ。ここにもコダマがいるのか

(しずかに。うごくときずにふれるぞ)

静かに。動くと傷に触れるぞ

(すきにさせておけばわるさはしない。もりがゆたかなしるしだ)

好きにさせておけば悪さはしない。森が豊かなしるしだ

(こいつらししがみをよぶんだ)

こいつらシシ神を呼ぶんだ

(ししがみ？おおきなやまいぬか)

シシ神？大きな山犬か

(ちがう！もっとおっかねえ、ばけもののおやだまだ)

違う！もっとおっかねえ、化け物の親玉だ

(やっくるがへいきでいる。きけんなものはちかくにはいない)

ヤックルが平気でいる。危険なものは近くにはいない

(すまぬが、そなたたちのもりをとおらせてもらうぞ)

すまぬが、そなたたちの森を通らせてもらうぞ

(おねげえです、もどりましょうよ)

お願えです、戻りましょうよ

(むこうぎしならみちがありやす。このもりをぬけるなんてむちゃだ)

向こう岸なら道がありやす。この森を抜けるなんて無茶だ

(ながれがつよすぎてわたれない。それに、このけがにんははやくしないとておくれになるぞ)

流れが強すぎて渡れない。それに、この怪我人は早くしないと手遅れになるぞ

(みちあんないをしてくれてるのか、まよいこませるきなのか)

道案内をしてくれてるのか、迷い込ませる気なのか

(だんな、こいつらわしらをかえさねえきなんですよ。どんどんふえてやすぜ)

旦那、こいつらわしらを返さねえ気なんですよ。どんどん増えてやすぜ

(おまえたちのははおやか。りっぱなきだ)

お前たちの母親か。立派な木だ

(あのしょうじょとやまいぬのあしあとだ。ここはかれらのなわばりか)

あの少女と山犬の足跡だ。ここは彼らの縄張りか

(だんな。こんどこそやばいですよ。ここはあのよのいりぐちだ)

旦那。今度こそやばいですよ。ここはあの世の入り口だ

(そうだな。ちょっとやすもう)

そうだな。ちょっと休もう

(あしあと)

足跡

(ひづめがみっつ。まだあたらしい)

蹄が三つ。まだ新しい

(だ、だんな。どうしたんで)

だ、旦那。どうしたんで

(だんな、だいじょうぶですかい。かおいろがまっさおですぜ)

旦那、大丈夫ですかい。顔色が真っ青ですぜ

(だからやばいって)

だからやばいって

(おまえ、なにかみたか)

お前、なにか見たか

(え)

え

(いや、いい)

いや、いい

(もうちょっとのしんぼうだ。しっかりしろ)

もうちょっとの辛抱だ。しっかりしろ

(すまねえ)

すまねえ

(いってしまった)

行ってしまった

(なぜだ。あれからきゅうにからだがかるくなった)

なぜだ。あれから急に体が軽くなった

(あれ、いたくねえ。なおった！)

あれ、痛くねえ。治った！

(あ、やっぱりおれてる)

あ、やっぱり折れてる

(だんなすげえ、どんぴしゃだ。たたらについた！)

旦那すげえ、どんぴしゃだ。タタラに着いた！

(まるでしろだな)

まるで城だな

(えぼしさまのおおたたらでさあ。さてつをわかしててつをつくってるんです)

エボシさまの大タタラでさあ。砂鉄を沸かして鉄を造ってるんです