mononoke16

(あのどろどろにさわるとしぬぞ)

あのどろどろに触ると死ぬぞ

(みずのなかへいけ。どろどろがおそくなる)

水の中へ行け。どろどろが遅くなる

(おとこたちとえぼしはたいがんをこっちへむかっている)

男たちとエボシは対岸をこっちへ向かっている

(わたしたちはくびをとりもどしてししがみにかえす)

私たちは首を取り戻してシシ神に返す

(あしたかいそげ)

アシタカ　急げ

(くるよ)

来るよ

(どうしよう、こっちへくるよ)

どうしよう、こっちへ来るよ

(くるぞ)

来るぞ

(どうしよう、おとき)

どうしよう、おトキ

(さわぐんじゃない。みんなをみずうみへ)

騒ぐんじゃない。みんなを湖へ

(はい)

はい

(おちついて。けがにんやびょうにんにてをかすんだよ)

落ち着いて。怪我人や病人に手を貸すんだよ

(はやくはやく)

早く早く

(そっちへいっちゃだめだよ)

そっちへ行っちゃ駄目だよ

(おおやねが)

大屋根が

(もうだめだ。たたらばがもえちまったら、なにもかもおしめえだ)

もう駄目だ。タタラ場が燃えちまったら、何もかもお仕舞えだ

(いきてりゃ、なんとかなる。もっとふかいところへ。はやく)

生きてりゃ、何とかなる。もっと深いところへ。早く

(いた、あそこ)

いた、あそこ

(おいき)

お行き

(そのくび、まて)

その首、待て

(おお、おぬしもいきとったか。よかった)

おお、お主も生きとったか。よかった

(くびをししがみにかえします。おいてはやくにげなさい)

首をシシ神に返します。置いて早く逃げなさい

(ばかをいうな。いまさらとりかえしはつかん。ひがでればすべておわる)

馬鹿を言うな。今更取り返しはつかん。日が出れば全て終わる

(みろ。いのちをすってふくらみすぎたのろまなしにがみだ)

見ろ。命を吸って膨らみすぎたのろまな死神だ

(ひにあたればやつはきえちまう)

日に当たれば奴は消えちまう

(じこぼうさま、おいつかれます、はやく)

ジコ坊さま、追いつかれます、早く

(な。あまつちのあいだにあるすべてのものをほっするはひとのごうというものだ)

な。天地の間にある全てのものを欲するは人の業というものだ

(あなたをころしたくはない)

あなたを殺したくはない

(へへ、いやまいったな。そうこわいかおをするな)

へへ、いや参ったな。そう恐い顔をするな

(はしれ)

走れ

(だめだ)

駄目だ

(あしたか)

アシタカ

(いかんかこまれた)

いかん　囲まれた

(あさひよいでよ)

朝日よ出でよ

(おけをあけろ)

桶を開けろ

(わからんやつだな。もうておくれだ)

分からん奴だな。もう手遅れだ

(あしたか、にんげんにはなしたってむだだ)

アシタカ、人間に話したって無駄だ

(ひとのてでかえしたい)

人の手で返したい

(ええい、どうなってもしらんぞ)

ええい、どうなっても知らんぞ

(ししがみよ。くびをおかえしする。しずまりたまえ)

シシ神よ。首をお返しする。鎮まりたまえ

(きよる、きよる、きよるぞ)

来よる、来よる、来よるぞ

(うごかなくなったぞ)

動かなくなったぞ

(おとこたちだ)

男たちだ

(えぼしさま)

エボシさま

(ええ、さわぐな。きずにさわる)

ええ、騒ぐな。傷に障る

(たおれる、たおれる)

倒れる、倒れる

(つかまれ)

掴まれ

(すげえ。ししがみははなさかじじいだったんだ)

すげえ。シシ神は花咲か爺だったんだ