old winter

(あいしていたなんてのはぼくだけのことだったか)

愛していた、なんてのは僕だけのことだったか

(あんたにはいちあくもとどきやしないか)

あんたには一握も届きやしないか

(ふゆのまちがいとうがやけにさわがしい)

冬の街、街頭がやけに騒がしい

(あぁきょうはゆきがまちにふっているんだな)

あぁ、今日は雪が街に降っているんだな

(もらったことばをはんすうしていた)

貰った言葉を反芻していた

(なきそうになるのがよくわかった)

泣きそうになるのがよくわかった

(ふゆのうえしろくつもるゆきみたいなきもちさえ)

冬の上、白く積もる雪みたいな気持ちさえ

(ゆきのようにはとけない)

雪のようには溶けない

(じゃあなあんたはげんきでやれよ)

じゃあな、あんたは元気でやれよ

(ぼくをわらえるようどうかしあわせにやってくれ)

僕を笑えるよう、どうか幸せにやってくれ

(おもいだすのはふるいふゆのひ)

思い出すのは、古い冬の日

(しろいいきがさよならによくにあってたひ)

白い息が「さよなら」によく似合ってた日

(あいしていたしんじていたなんてことばは)

愛していた、信じていた、なんて言葉は

(あいしてもしんじてもほこりをかぶった)

愛しても、信じても、埃を被った

(けいこうがすいそうがけんかしたあとが)

蛍光が、水槽が、喧嘩した跡が

(きりとったふゆがやけになつかしいな)

切り取った冬がやけに懐かしいな

(だからあんたはあるいていけよ)

だから、あんたは歩いていけよ

(うしろにいるぼくなんてすうほでおいていってくれ)

後ろにいる僕なんて、数歩で置いていってくれ

(かたてでかいたありがとうなんて)

片手で書いた「ありがとう」なんて

(いらないんだよわかってくれよ)

要らないんだよ　わかってくれよ

(じゃあなあなたはげんきでいてよ)

じゃあな、あなたは元気でいてよ

(おもいだすのはとおいふゆのひ)

思い出すのは、遠い冬の日

(しろいといきあやまるのはあなた)

白い吐息、謝るのはあなた

(おもわずなまえをよんだこと)

思わず名前を呼んだこと

(あなたがくれたふゆのえがゆきでうまっていく)

あなたがくれた冬の画が雪で埋まっていく