アナザー：ロミオとシンデレラ

(わたしのこいをひげきのじゅりえっとにしないで)

「私の恋を悲劇のジュリエットにしないで

(ここからつれだして)

ここから連れ出して」

(それじゃいこうか)

それじゃ行こうか

(ぱぱとままにおわかれしたね)

パパとママにお別れしたね

(えいえんのたびにでるからね)

永遠の旅に出るからね

(おとなもゆめみるじかんだ)

大人も夢見る時間だ

(ふかくふかくそこにもぐって)

フカク深く底に潜って

(まただれかのそこにおくって)

また誰かの其処に送って

(こんやはどこまでいくだろう)

今夜はどこまで行くだろう？

(たのしみなんだそのかじつを)

楽しみなんだその果実を

(かじるひょうじょうすてきなんだろう)

かじる表情素敵なんだろう

(なまぬるいものがたりさよならつげよう)

生温い物語さよなら告げよう

(むじゃきにわらうなにもしらず)

無邪気に笑う何も知らず

(しらずしらずにしろうとする)

知らず知らずに知ろうとする

(さらけだしてよきみのすべてを)

曝け出してよ君のスベテを

(そのゆめのさきまで)

そのユメの先まで……

(ずっとこいしくてしんでれら)

ずっと恋しくてシンデレラ

(くろいりんごはおすきですか)

黒いリンゴはお好きですか？

(このぺーじをめくらなければ)

このページを捲らなければ

(そのじかんはとまったまま)

その時間は止まったまま

(にげだしたいのじゅりえっと)

逃げ出したいのジュリエット

(でもそのなまえはいやだろうね)

でもその名前はイヤだろうね

(そうだなむすばれないとね)

そうだな結ばれないとね

(でもそれだとたのしくないな)

でもそれだと楽しくないな

(さあぼくをたのしませてくれる)

さぁボクを楽しませてくれる？

(あつくあついこのみちのりと)

熱く厚いこの道のりと

(おもいおもいとおいいのりを)

重い思い遠い祈りを

(まだみぬあのこにとどいて)

まだ見ぬあの子に届いて

(めのまえのつむにきをつけて)

目の前の紡錘に気をつけて

(うたかたのようにきえちゃうよ)

泡沫のように消えちゃうよ

(ほえたらそこまでいけるの)

吠えたらそこまでいけるの？

(こびとがこっちにてまねきして)

小人がこっちに手招きして

(ふしぎのくにをぬけだせるの)

不思議の国を抜け出せるの

(だれかよんでる)

誰か呼んでる

(はくしのぺーじかけだす)

白紙のページ駆け出す

(なんどうまれていつかきえて)

何度生まれていつか消えて

(それでもてをさしのべるだろう)

それでも手を差し伸べるだろう

(このえぴそーどにひめとおうじは)

このエピソードに姫と王子は

(ひとりでじゅうぶんだろう)

一人で充分だろう？

(かねがなりひびくしんでれら)

鐘が鳴り響くシンデレラ

(うまくくつをおいてにげてね)

上手く靴を置いて逃げてね

(じゃないとさがせないから)

じゃないと探せないから

(くろいゆめにじらされちゃうよ)

黒い夢に焦らされちゃうよ

(えほんをたびするしょうじょは)

絵本を旅する少女は

(いまもどこかでまっているのか)

今もどこかで待っているのか

(あいとかゆめもきぼうも)

愛とか夢も希望も

(すべてすててさそってるよ)

全て捨てて誘ってるよ

(いまからむかえにいくから)

今から迎えに行くから

(あなたのこころそっとのぞいていいですか)

貴女の心そっと覗いていいですか

(けさきまですべてほしいとねがっていいですか)

毛先まで全て欲しいと願っていいですか

(もうのこりもないぺーじをしずかにとき)

もう残りもないページを静かに解き

(じぶんのいばしょはそこにはないようですか)

自分の居場所はそこには無いようですか

(あとはきみだけがしる)

「後は読者(キミ)だけが知る」

(おおきなはこよりちいさなはこにいれってむちゃなはなし)

大きな箱より小さな箱に入れって無茶な話

(おいおいちょっとまってよ)

おいおいちょっと待ってよ

(ぼくがろみおじゃこれはひげきだ)

僕がロミオじゃこれは悲劇だ

(もっとよくばっていいんだよ)

もっと欲張っていいんだよ

(それがおひめさまってものだ)

それがお姫様ってものだ

(ここはいやとうそついた)

「現実（ここ）は嫌」と嘘ついた

(このおおかみがたべにむかうよ)

このオオカミが食べに向かうよ

(やっぱおうじもすてがたいけど)

やっぱ王子も捨てがたいけど

(それはべつのじぶんにまかせよう)

それは別の自分に任せよう

(がらすのくつぴったりだね)

ガラスの靴ピッタリだね

(これでぼくらはれてきげきだ)

これで僕ら晴れて喜劇だ

(あなたをたすけにきました)

貴女を食べ（助け）に来ました