花火から逃げて
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歌詞(問題文)
(ああてをつないではなびをよこにもった)
嗚呼、手を繋いで花火を横に持った。
(つないだにぎりこんだみぎのひだりてはしめった)
繋いだ。握り込んだ。右の左手は湿った。
(はちがつのよるみたいに)
八月の夜みたいに。
(てもちはなびみたいに)
手持ち花火みたいに。
(ゆくえしらずのうちあげはなびがわたしみたいだ)
「行方知らずの打ち上げ花火が私みたいだ」
(とわらった)
と、笑った。
(よるをまったはなびらひとつ)
夜を舞った花びら、一つ。
(きょうをまったことばをひとつ)
今日を待った言葉を一つ。
(はなびからとおざかろうなれないげたではしろう)
花火から遠ざかろう。慣れない下駄で走ろう。
(せめてひとことつたわるように)
せめて、一言伝わるように。
(じゃあてをはなしたなつのにおいがさった)
「じゃあ」手を放した。夏の匂いが去った。
(ふたりはきろについたぎゃくがわのえきをめざした)
二人は帰路に着いた。逆側の駅を目指した。
(いまそのそでをつかんでにげだしてしまおうか)
今、その袖を掴んで逃げ出してしまおうか。
(はんたいほうこうはしりだすあなたのせをおう)
反対方向、走り出す。あなたの背を追う。
(ふいにやなぎがうつった)
不意に柳が映った。
(よるをまったはなびらひとつ)
夜を舞った花びら、一つ。
(きょうをまったことばをひとつ)
今日を待った言葉を一つ。
(どうせならいっしょにいようあさまでいっしょにいよう)
「どうせなら一緒に居よう。朝まで一緒に居よう」
(まつりがおわっていく)
祭りが終わっていく。
(わたしたちはにげていくはなびからこのよるから)
私たちは逃げていく。花火から。この夜から。
(このはがゆいかんけいから)
この、歯がゆい関係から。
(はいごでさいごがなったあくるそらとおとでわかった)
背後で最後が鳴った。明くる空と音で分かった。
(いまはふりむかないようにゆびをからめてにげた)
今は振り向かないように指を絡めて逃げた。
(よるをまったはなびらひとつ)
夜を舞った花びら、一つ。
(きょうをまったことばをひとつ)
今日を待った言葉を一つ。
(はなびからとおざかろうなれないげたではしろう)
花火から遠ざかろう。慣れない下駄で走ろう。
(せめてひとこと)
せめて一言。
(ゆくあてのないよるをはしる)
行く宛てのない夜を走る。
(つかまらないようにとはしる)
捕まらないようにと走る。
(なにもいみがなくてもあまりにはかなくても)
何も意味がなくても、あまりに儚くても、
(それはわたしのいきるかてになった)
それは、私の生きる糧になった。