ウラルの彼方

(うらるのかなたかぜあれて)

ウラルの彼方風荒れて

(ひがしにかけるわしいちわ)

東に翔ける鷲一羽

(びょうびょうとおきしべりあも)

渺々遠きシベリアも

(はやときのまにとびすぎて)

はや時の間に飛び過ぎて

(めいじさんじゅうしちのとし)

明治三十七の年

(こくうんみだれつきくらき)

黒雲乱れ月暗き

(けいりんのきたまんしゅうに)

鷄林の北満州に

(こえものすごくさけぶなり)

声物凄く叫ぶなり

(ああぜっとうのくんしこく)

ああ絶東の君子国

(そうろうひたすいちことう)

蒼波浸す一孤島

(ぎんせつたかしふようほう)

銀雪高し芙蓉峰

(こうえいきよしよしのやま)

紅英清し吉野山

(これときむねのうまれしち)

これ時宗の生まれし地

(これひでよしのうまれしち)

これ秀吉の生まれし地

(いっせんのじがふそのくに)

一千の児が父祖の国

(こうえいしるきにほんこく)

光栄しるき日本国

(あらわしいまやなんかしつ)

荒鷲今や南下しつ

(はちどうのやまあとにみて)

八道の山後に見て

(やまとしまねをつかんとす)

大和島根を衝かんとす

(きんしょくのたみほことれや)

金色の民鉾取れや

(ととせのむかしますらおが)

十年の昔丈夫が

(ちしおにそめしりょうとうの)

血潮に染めし遼東の

(さんがあざむきうばいてし)

山河欺き奪いてし

(ああそのうらみわすれんや)

ああその恨み忘れんや

(ほくしゅうのきたくまほゆる)

北州の北熊吼ゆる

(さがれんのしまこれむかし)

サガレンの島これ昔

(わがしんしゅうのりょうなるを)

我が神洲の領なるを

(うばいさりしもまたかれぞ)

奪い去りしもまた彼ぞ

(せいれきいっせんきゅうひゃくねん)

西暦一千九百年

(うらみはふかきあむーるや)

恨みは深きアムールや

(ろじんのあばれにしんのたみ)

露人の暴に清の民

(つみなくゆけりかずごせん)

罪無く逝けり数五千

(いうなかれただしんびとと)

言う莫れ唯清人と

(きんしょくのたみかれもまた)

金色の民彼もまた

(ああうらみなりざんぎゃくの)

ああ恨みなり残虐の

(ばんぞくいかでゆるすべき)

蛮族いかで許すべき

(たまなすおてにつるぎとり)

玉なす御手に剣取り

(かがんうしおにうるおして)

華顔潮に潤して

(こうらいはんとうをきためにし)

高麗半島を懲めにし

(じんぐうこうごうきみみずや)

神功皇后君見ずや

(うみをおおいてよせきたる)

海を覆いて寄せ来る

(てきかんよんせんちんぜいの)

敵艦四千鎮西の

(そうめいふかくしずめたる)

蒼溟深く沈めたる

(かれときむねをきみみずや)

彼時宗を君見ずや

(みんちょうせんをうちとりて)

明朝鮮を討ち取りて

(ほうれんとおくちょうようと)

鳳輦遠く迢遙と

(とうのみやこにはかりたる)

唐の都に謀りたる

(かれひでよしをきみみずや)

彼秀吉を君見ずや

(ときむねのえいほことれや)

時宗の裔鉾取れや

(ひでよしのえいたちはけや)

秀吉の裔太刀佩けや

(うらみつきせぬばんぞくを)

恨み尽きせぬ蛮族を

(ほふりつくさんときいたる)

屠り尽くさん時至る

(ひきゅうたちまちうみをこえ)

貔貅忽ち海を越え

(りょじゅんだるにーばんぞくの)

旅順ダルニー蛮族の

(ちしおにあらいりょうとうの)

血潮に洗い遼東の

(さんがふたたびてにおさめ)

山河再び手に収め

(あさひしきしまもうどうの)

朝日敷島艨艟の

(せいをつくしてなみをけり)

精を尽くして波を蹴り

(ろしあかんたいほうむりて)

ロシア艦隊葬りて

(すいはおさまるにほんかい)

翠波治まる日本海

(ほうかにやかんうらじおや)

砲火に焼かんウラジオや

(かばねをつまんはるぴんふ)

屍を積まんハルピン府

(しべりあふかくせめいらば)

シベリア深く攻め入らば

(ろじんもついになすなけん)

露人も遂になすなけん

(かくてあがらんわがこくい)

斯くて揚がらん我が国威

(かくてはれなんかのうらみ)

斯くて晴れなん彼の恨み

(きんしょくのたみほことれや)

金色の民鉾取れや

(やまとみんぞくたちはけや)

大和民族太刀佩けや

(ああぜっとうのくんしこく)

ああ絶東の君子国

(ふじのたかねのしらゆきや)

富士の高嶺の白雪や

(よしののはるのさくらばな)

吉野の春の桜花

(ひかりしめさんときいたる)

光示さん時至る

(しのぶにたえぬりょうとうや)

忍ぶに耐えぬ遼東や

(またさがれんやあむーるや)

またサガレンやアムールや

(ああざんぎゃくのばんぞくに)

ああ残虐の蛮族に

(うらみかえさんときいたる)

恨み返さん時至る

(きんしょくのたみいざやいざ)

金色の民いざやいざ

(やまとみんぞくいざやいざ)

大和民族いざやいざ

(たたかわんかなじきいたる)

戦わんかな時機至る

(たたかわんかなじきいたる)

戦わんかな時機至る