横光利一 機械 3
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | kkk | 6983 | S++ | 7.3 | 95.7% | 488.3 | 3569 | 159 | 47 | 2024/10/26 |
2 | だだんどん | 6602 | S+ | 7.1 | 93.3% | 496.0 | 3527 | 252 | 47 | 2024/12/20 |
3 | デコポン | 6539 | S+ | 6.8 | 96.1% | 519.3 | 3538 | 142 | 47 | 2024/11/08 |
4 | baru | 3835 | D++ | 4.2 | 90.9% | 837.9 | 3571 | 357 | 47 | 2024/11/19 |
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問題文
(さてそのひしゅじんとわたしはじがねをかいにいってもどってくるとそのとちゅうしゅじんはわたしに)
さてその日主人と私は地金を買いにいって戻って来るとその途中主人は私に
(きょうはこういうはなしがあったといっていうにはじぶんのいえのせきしょくぷれーとのせいほうを)
今日はこういう話があったといっていうには自分の家の赤色プレートの製法を
(ごまんえんでうってくれというのだがうってよいものかどうだろうかときくので、)
五万円で売ってくれというのだが売って良いものかどうだろうかと訊くので、
(わたしもそれにはこたえられずにだまっているとせきしょくぷれーともいつまでもだれにも)
私もそれには答えられずに黙っていると赤色プレートもいつまでも誰れにも
(こうあんされないものならともかくもうなかまたちがひっしにこっそりけんきゅうしているので)
考案されないものならともかくもう仲間達が必死にこっそり研究しているので
(せいほうをうるならいまのうちだという。それもそうだろうとおもってもしゅじんのながいくしんの)
製法を売るなら今の中だという。それもそうだろうと思っても主人の長い苦心の
(けっかのけんきゅうをわたしがとやかくいうけんりもなしそうかといってしゅじんひとりにまかして)
結果の研究を私がとやかくいう権利もなしそうかといって主人ひとりに任して
(おいてはしゅじんはいつのまにかさいくんのいうままになりそうだし、さいくんというものは)
おいては主人はいつの間にか細君のいうままになりそうだし、細君というものは
(まためさきのことだけよりかんがえないにきまっているのをおもうとわたしもどうかして)
また目さきのことだけより考えないに決っているのを思うと私もどうかして
(しゅじんのためになるようにとそればかりがそれからのふしぎにわたしのきょうみのちゅうしんに)
主人のためになるようにとそればかりがそれからの不思議に私の興味の中心に
(なってきた。いえにいてもいえのなかのうごきやぶっぴんがことごとくわたしのせいりをまたねばならぬか)
なって来た。家にいても家の中の動きや物品が尽く私の整理を待たねばならぬか
(のようにうつりだしてきてかるべまでがまるでわたしのけらいのようにみえてきたのは)
のように映り出して来て軽部までがまるで私の家来のように見えて来たのは
(よいとしても、ひまさえあればおぼえてきたべんしのこわいろばかりうなっているかれのようす)
良いとしても、暇さえあれば覚えて来た弁士の声色ばかり唸っている彼の様子
(までがうるさくなった。しかし、それからまもなくはんたいにかるべのめがまたはげしく)
までがうるさくなった。しかし、それから間もなく反対に軽部の眼がまた激しく
(わたしのどうさにびんかんになってきてしごとばにいるときはほとんどわたしからめをはなさなくなった)
私の動作に敏感になって来て仕事場にいるときは殆ど私から眼を放さなくなった
(のをかんじだした。おもうにかるべはしゅじんのしごとのさいきんのけいかやせきしょくぷれーとの)
のを感じ出した。思うに軽部は主人の仕事の最近の経過や赤色プレートの
(とっきょけんにかんするはなしをしゅふからきかされたにちがいないのだが、しゅふまでかるべに)
特許権に関する話を主婦から聞かされたにちがいないのだが、主婦まで軽部に
(わたしをかんしせよといいつけたのかどうかはわたしにはわからなかった。しかし、わたしまでが)
私を監視せよといいつけたのかどうかは私には分らなかった。しかし、私までが
(しゅふやかるべがいまにもしかするとこっそりしゅじんのしごとのひみつをぬすみだして)
主婦や軽部がいまにもしかするとこっそり主人の仕事の秘密を盗み出して
(うるのではないかとおもわれていくぶんのかんしさえするきもちになったところから)
売るのではないかと思われて幾分の監視さえする気持ちになったところから
(みてさえも、しゅふやかるべがわたしをどうようにうたがうきもちはそんなにごまかしていられる)
見てさえも、主婦や軽部が私を同様に疑う気持ちはそんなに誤魔化していられる
(ものではない。そこでわたしもそれらのうたがいをいだくしせんにみられるとふかいはふかいでも)
ものではない。そこで私もそれらの疑いを抱く視線に見られると不快は不快でも
(なんとなくおもしろくひとつどうすることかずうずうしくこちらもぎゃくにかんしをつづけてやろう)
何となく面白くひとつどうすることか図々しくこちらも逆に監視を続けてやろう
(というきになってきてこまりだした。ちょうどそういうときまたしゅじんはわたしにしゅじんの)
という気になって来て困り出した。丁度そういうときまた主人は私に主人の
(つづけているあたらしいけんきゅうのはなしをしていうには、じぶんはじがねをえんかてつでふしょくさせずに)
続けている新しい研究の話をしていうには、自分は地金を塩化鉄で腐蝕させずに
(そのままこくしょくをだすほうほうをながらくけんきゅうしているのだがいまだにおもわしく)
そのまま黒色を出す方法を長らく研究しているのだがいまだに思わしく
(いかないのでおまえもひまなときじぶんといっしょにやってみてくれないかというので)
いかないのでお前も暇なとき自分と一緒にやってみてくれないかというので
(ある。わたしはいかにしゅじんがおひとよしだからといってそんなじゅうだいなことをたにんに)
ある。私はいかに主人がお人好しだからといってそんな重大なことを他人に
(もらしてよいものであろうかどうかとおもいながらも、まったくわたしがねっからしんようされた)
洩して良いものであろうかどうかと思いながらも、全く私が根から信用された
(このことにたいしてはかんしゃをせずにはおれないのだ。いったいひとというものは)
このことに対しては感謝をせずにはおれないのだ。いったい人というものは
(しんようされてしまったらもうこちらのまけで、だからしゅじんはいつでもしゅういのものに)
信用されてしまったらもうこちらの負けで、だから主人はいつでも周囲の者に
(かちつづけているのであろうといちどはおもってみても、そうしゅじんのようにそこぬけな)
勝ち続けているのであろうと一度は思ってみても、そう主人のように底抜けな
(ばかさにはなかなかなれるものではなく、そこがつまりはしゅじんのえらいという)
馬鹿さにはなかなかなれるものではなく、そこがつまりは主人の豪いという
(りゆうになるのであろうとおもってもわたしもしゅじんのけんきゅうのてだすけならできるだけの)
理由になるのであろうと思っても私も主人の研究の手助けなら出来るだけの
(ことはさせてもらいたいとしんそこかられいをのべたのだが、ひとからしんそこかられいを)
ことはさせて貰いたいと心底から礼を述べたのだが、人から心底から礼を
(のべさせるということをいちどでもしてみたいとおもうようになったのも)
述べさせるということを一度でもしてみたいと思うようになったのも
(そのときからだ。だが、わたしのしゅじんはたにんにどうこうされようなどとそんなけちな)
そのときからだ。だが、私の主人は他人にどうこうされようなどとそんなけちな
(かんがえなどはないのだからいっそうわたしのあたまをさげさせるのだ。つまりわたしはあんじに)
考えなどはないのだから一層私の頭を下げさせるのだ。つまり私は暗示に
(かかったしんとみたいにしゅじんのにくたいからでてくるひかりにいぬかれてしまった)
かかった信徒みたいに主人の肉体から出て来る光りに射抜かれてしまった
(わけだ。きせきなどというものはむこうがきせきをおこなうのではなくじしんのみにくさがきせきを)
わけだ。奇蹟などというものは向うが奇蹟を行うのではなく自身の醜さが奇蹟を
(おこなうのにちがいない。それからというものはまったくわたしもかるべのようになによりしゅじんが)
行うのにちがいない。それからというものは全く私も軽部のように何より主人が
(だいいちになりはじめ、しゅじんをさゆうしているさいくんのなににかにはんかんをさえかんじてきて、)
第一になり始め、主人を左右している細君の何に彼に反感をさえ感じて来て、
(どうしてこういうふじんがこのりっぱなしゅじんをどくせんしてよいものかうたがわしくなった)
どうしてこういう婦人がこの立派な主人を独専して良いものか疑わしくなった
(ばかりではなくできることならこのしゅじんからさいくんをついほうしてみたくおもうことさえ)
ばかりではなく出来ることならこの主人から細君を追放してみたく思うことさえ
(ときどきあるのをかんがえてもかるべがわたしにつらくあたってくるきもちがてにとるように)
ときどきあるのを考えても軽部が私に虐くあたってくる気持ちが手にとるように
(わかってきて、かれをみているとしぜんにじぶんをみているようでますますまたそんな)
分って来て、彼を見ていると自然に自分を見ているようでますますまたそんな
(ことにまできょうみがわいてくるのである。)
ことにまで興味が湧いて来るのである。