横光利一 機械 10
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | kkk | 7043 | 王 | 7.4 | 94.9% | 597.6 | 4445 | 236 | 57 | 2024/11/06 |
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問題文
(しかしわたしはそうしてかるべになぐられているうちにこんどはふしぎにもかるべとわたしとが)
しかし私はそうして軽部に殴られているうちに今度は不思議にも軽部と私とが
(しめしあわせてかれになぐらせてでもいるようでまるではんたいにかるべとわたしとがきょうぼうして)
示し合せて彼に殴らせてでもいるようでまるで反対に軽部と私とが共謀して
(うったしばいみたいにおもわれだすと、かえってこんなにもなぐられてへいぜんとしていては)
打った芝居みたいに思われだすと、却ってこんなにも殴られて平然としていては
(やしきにきょうぼうだとおもわれはすまいかとけねんされはじめ、ふとやしきのほうをみるとかれは)
屋敷に共謀だと思われはすまいかと懸念され始め、ふと屋敷の方を見ると彼は
(なぐられたものがふたりであることにまんぞくしたものらしくきゅうにげんきになって、)
殴られたものが二人であることに満足したものらしく急に元気になって、
(きみ、なぐれ、というとどうじにかるべのはいごからかれのあたまをつづけさまになぐりだした。)
君、殴れ、というと同時に軽部の背後から彼の頭を続けさまに殴り出した。
(すると、わたしもべつにはらはたててはいないのだがいままでなぐられていたいたさのために)
すると、私も別に肚は立ててはいないのだが今迄殴られていた痛さのために
(なぐりかえすうんどうがゆかいになってぽかぽかとかるべのあたまをなぐってみた。かるべはぜんごから)
殴り返す運動が愉快になってぽかぽかと軽部の頭を殴ってみた。軽部は前後から
(なぐりだされるとしゅりょくをやしきにむけてかれをけりつけようとしたのでわたしはかるべを)
殴り出されると主力を屋敷に向けて彼を蹴りつけようとしたので私は軽部を
(はいごへひいてじゃまをすると、そのひまにやしきはかるべをおしたおしてうまのりになって)
背後へ引いて邪魔をすると、その暇に屋敷は軽部を押し倒して馬乗りになって
(またなぐりつづけた。わたしはやしきのそんなにもげんきになったのにおどろいたがいくぶんわたしが)
また殴り続けた。私は屋敷のそんなにも元気になったのに驚いたが幾分私が
(りゆうもなくなぐられたのでわたしがはらをたててかれといっしょにかるべにむかってかかっていくに)
理由もなく殴られたので私が腹を立てて彼と一緒に軽部に向ってかかっていくに
(ちがいないとおもったからであろう。しかし、わたしはもうそれいじょうはかるべにふくしゅうする)
ちがいないと思ったからであろう。しかし、私はもうそれ以上は軽部に復讐する
(ようもないのでまただまってなぐられているかるべをみているとかるべはすぐくもなく)
要もないのでまた黙って殴られている軽部を見ていると軽部は直ぐ苦もなく
(やしきをひっくりかえしてうえになってはんたいにかれをまえよりいっそうはげしくなぐりだした。)
屋敷をひっくり返して上になって反対に彼を前より一層激しく殴り出した。
(そうなるとやしきはいちばんさいしょとおなじことでどうすることもできないのだ。だが、)
そうなると屋敷は一番最初と同じことでどうすることも出来ないのだ。だが、
(かるべはしばらくやしきをなぐっていてからわたしがはいごからかれをおそうだろうとおもったのか)
軽部は暫く屋敷を殴っていてから私が背後から彼を襲うだろうと思ったのか
(きゅうにたちあがるとわたしにむかってつっかかってきた。かるべとひとりどうしのなぐりあいなら)
急に立上がると私に向かって突っかかって来た。軽部と一人同志の殴り合いなら
(わたしがまけるにきまっているのでまたわたしはだまってやしきのおきあがってくるまでなぐらせて)
私が負けるに決っているのでまた私は黙って屋敷の起き上って来るまで殴らせて
(やると、おきあがってきたやしきはふいにかるべをなぐらずにわたしをなぐりだした。ひとりでも)
やると、起き上って来た屋敷は不意に軽部を殴らずに私を殴り出した。一人でも
(こまるのにふたりいっしょにこられてはわたしももうしかたがないのでゆかのうえにたおれたまま)
困るのに二人一緒に来られては私ももう仕方がないので床の上に倒れたまま
(ふたりのするままにさせてやったが、しかしわたしはさきからそれほどもいったい)
二人のするままにさせてやったが、しかし私はさきからそれほどもいったい
(あくぎょうをしてきたのであろうか。わたしはりょううでであたまをかかえてまんまるくなりながらわたしの)
悪行をして来たのであろうか。私は両腕で頭をかかえてまん丸くなりながら私の
(したことがふたりからなぐられねばならぬそれほどもわるいかどうかかんがえた。なるほど)
したことが二人から殴られねばならぬそれほども悪いかどうか考えた。なるほど
(わたしはじけんのおこりはじめたときからふたりにとってはいひょうがいのこういばかりをしつづけて)
私は事件の起り始めたときから二人にとっては意表外の行為ばかりをし続けて
(いたにちがいない。しかし、わたしいがいのふたりもわたしにとってはいがいなことばかりを)
いたにちがいない。しかし、私以外の二人も私にとっては意外なことばかりを
(したではないか。だいいちわたしはやしきからなぐられるりゆうはない。たとえわたしがやしきと)
したではないか。だいいち私は屋敷から殴られる理由はない。たとえ私が屋敷と
(いっしょにかるべにかからなかったからとはいえわたしをもそんなときにかからせてやろう)
一緒に軽部にかからなかったからとはいえ私をもそんなときにかからせてやろう
(などとおもったやしきじしんがばかなのだ。そうおもってはみてもけっきょくふたりから、どうじに)
などと思った屋敷自身が馬鹿なのだ。そう思ってはみても結局二人から、同時に
(なぐられなかったのはやしきだけでいちばんなぐられるべきせきにんのあるはずのかれがいちばんうまい)
殴られなかったのは屋敷だけで一番殴られるべき責任のある筈の彼が一番うまい
(ことをしたのだからわたしもかれをいちどなぐりかえすぐらいのことはしてもよいのだが)
ことをしたのだから私も彼を一度殴り返すぐらいのことはしても良いのだが
(とにかくもうそのときはぐったりわたしたちはつかれていた。じっさいわたしたちのこの)
とにかくもうそのときはぐったり私たちは疲れていた。実際私たちのこの
(ばかばかしいかくとうもげんいんはやしきがあんしつへはいったことからだとはいえごまんまいの)
馬鹿馬鹿しい格闘も原因は屋敷が暗室へ這入ったことからだとはいえ五万枚の
(ねーむぷれーとをたんじじつのあいだにしあげたひろうがよりおおきなげんいんになっていたに)
ネームプレートを短時日の間に仕上げた疲労がより大きな原因になっていたに
(きまっているのだ。ことにしんちゅうをふしょくさせるときのえんかてつのえんそはそれがたりょうに)
決まっているのだ。殊に真鍮を腐蝕させるときの塩化鉄の塩素はそれが多量に
(つづいてでればでるほどしんけいをひろうさせるばかりではなくにんげんのりせいをさえ)
続いて出れば出るほど神経を疲労させるばかりではなく人間の理性をさえ
(こんらんさせてしまうのだ。そのくせほんのうだけはますますからだのなかでめいりょうにせいしつを)
混乱させてしまうのだ。その癖本能だけはますます身体の中で明瞭に性質を
(あらわしてくるのだからこのねーむぷれーとせいぞうしょでおこるじけんにはらをたてたりして)
表して来るのだからこのネームプレート製造所で起る事件に腹を立てたりして
(いてはきりがないのだがそれにしてもやしきになぐられたことだけはあいてがやしきで)
いてはきりがないのだがそれにしても屋敷に殴られたことだけは相手が屋敷で
(あるだけにわたしはわすれることはできない。わたしをなぐったやしきはわたしにどういうたいどを)
あるだけに私は忘れることは出来ない。私を殴った屋敷は私にどういう態度を
(とるであろうか、かれのでかたでひとつかれをせきめんさせてやろうとおもっていると)
とるであろうか、彼の出方でひとつ彼を赤面させてやろうと思っていると
(いつおわったともわからずにおわったじけんのあとでやしきがいうにはどうもあのとききみを)
いつ終ったとも分らずに終った事件の後で屋敷がいうにはどうもあのとき君を
(なぐったのはわるいとおもったがきみをあのときなぐらなければいつまでかるべにじぶんが)
殴ったのは悪いと思ったが君をあのとき殴らなければいつまで軽部に自分が
(なぐられるかもしれなかったからじけんにおわりをつけるためにきみをなぐらせて)
殴られるかもしれなかったから事件に終りをつけるために君を殴らせて
(もらったのだ、ゆるしてくれという。じっさいわたしもきづかなかったのだがあのときいちばん)
貰ったのだ、赦してくれという。実際私も気附かなかったのだがあのとき一番
(わるくないわたしがふたりからなぐられなかったならじけんはまだまだつづいていたに)
悪くない私が二人から殴られなかったなら事件はまだまだ続いていたに
(ちがいないのだ。それではわたしはまだやっぱりこんなときにもやしきのぬすみをまもって)
ちがいないのだ。それでは私はまだ矢っ張りこんなときにも屋敷の盗みを守って
(いたのかとおもってくしょうするよりしかたがなくなりせっかくやしきをせきめんさせて)
いたのかと思って苦笑するより仕方がなくなりせっかく屋敷を赤面させて
(やろうとおもっていたたのしみもうしなってしまってますますやしきのすぐれたちぼうに)
やろうと思っていた楽しみも失ってしまってますます屋敷の優れた智謀に
(おどろかされるばかりとなったので、わたしもいまいましくなってきてやしきにそんなにうまく)
驚かされるばかりとなったので、私も忌々しくなって来て屋敷にそんなにうまく
(きみがわたしをつかったからにはあんしつのほうもさだめしうまくいったのであろうというと、)
君が私を使ったからには暗室の方も定めしうまくいったのであろうというと、
(かれはかれでてなれたものできみまでそんなことをいうようではかるべがわたしを)
彼は彼で手馴れたもので君までそんなことをいうようでは軽部が私を
(なぐるのだってとうぜんだ、かるべにひをつけたのはきみではないのかといってわらって)
殴るのだって当然だ、軽部に火を点けたのは君ではないのかといって笑って
(のけるのだ。なるほどそういわれればかるべにひをつけたのはわたしだとおもわれたって)
のけるのだ。なるほどそういわれれば軽部に火を点けたのは私だと思われたって
(べんかいのしようもないのでこれはひょっとするとやしきがわたしをなぐったのもわたしとかるべが)
弁解の仕様もないのでこれはひょっとすると屋敷が私を殴ったのも私と軽部が
(きょうぼうしたからだとおもったからではなかろうかともおもわれだし、いったいほんとうは)
共謀したからだと思ったからではなかろうかとも思われ出し、いったい本当は
(どちらがどんなふうにわたしをおもっているのかますますわたしにはわからなくなりだした。)
どちらがどんな風に私を思っているのかますます私には分らなくなり出した。