怖い話《RPG》

(でもあんのじょうそうさがわからないらしく、がめんとずっとにらめっこしてるもんだから、)

でも案の定操作が分からないらしく、画面とずっと睨めっこしてるもんだから、

(おれがそうさおしえながらいっしょにげーむすすめることにしたんよ。)

俺が操作教えながら一緒にゲーム進める事にしたんよ。

(ぱーてぃーにんげんおとこのしゅじんこう「りょーた（おれのなまえ）」で、)

パーティー人間・男の主人公「リョータ(俺の名前)」で、

(なかまはにんげんおんな「さやか（かのじょのなまえ）」あとはえすぱーがーると)

仲間は人間・女「さやか(彼女の名前)」あとはエスパーガールと

(ろぼっとにそれぞれどうしつのばあちゃんとおじさんのなまえつけたっけ。)

ロボットにそれぞれ同室のばあちゃんとおじさんの名前付けたっけ。

(それからどんどんそのこなかよくなって、ふたりでげーむぼーい)

それからどんどんその子仲良くなって、二人でゲームボーイ

(やるだけじゃなく、いろんなはなしもするようになった。)

やるだけじゃなく、いろんな話もするようになった。

(がっこうのこと、かぞくのこと、すきなおんがくのこと、ちかくにせまったなつやすみのこと・・・)

学校の事、家族の事、好きな音楽の事、近くに迫った夏休みの事・・・

(それからのじかんはあっというまだった。すぐにおれがたいいんするときがやってきた。)

それからの時間はあっという間だった。すぐに俺が退院する時がやってきた。

(かんごしやどうしつのおじさん、ばあちゃんたちがくちぐちに「おめでとう」って)

看護師や同室のおじさん、ばあちゃん達が口々に「おめでとう」って

(いってくれてるなか、かのじょだけないてた。それみておれもなきそうになったさ。)

言ってくれてる中、彼女だけ泣いてた。それ見て俺も泣きそうになったさ。

(でもぐっとこらえて「おまえがたいいんするまでこれかしてやるよ。たいいんしたら)

でもグッと堪えて「お前が退院するまでこれ貸してやるよ。退院したら

(れんらくくれよな」ってそのままげーむぼーいとｓｅｇａ２おいていったのよ。)

連絡くれよな」ってそのままゲームボーイとSEGA2置いて行ったのよ。

(それからなんかいもおみまいしにいこうとおもった。)

それから何回もお見舞いしに行こうと思った。

(・・・でもいざいこうかとおもうとなんかてれくさくていけなかった。)

・・・でもいざ行こうかと思うとなんか照れくさくて行けなかった。

(れんらくがないままいちねんはんがすぎて、おれもしょうがっこうをそつぎょうするころになった。)

連絡がないまま一年半が過ぎて、俺も小学校を卒業する頃になった。

(せめてそつぎょうまえにもういちどあっておきたいな、とおもっていをけっして)

せめて卒業前にもう一度会っておきたいな、と思って意を決して

(おみまいにいくことにしたんよ。びょうしつにいったけどかのじょはいなかった。)

お見舞いに行く事にしたんよ。病室に行ったけど彼女は居なかった。

(びょうしついりぐちのなまえらんにもない。もうとっくにたいいんしてたのかな・・・？)

病室入口の名前欄にもない。もうとっくに退院してたのかな・・・？

(とおもってとりあえずなーすせんたーできいてみた。)

と思ってとりあえずナースセンターで聞いてみた。

(「とおいところにいった」とかうまくはぐらかされたけど、おれもしょう６だったし、)

「遠い所に行った」とかうまくはぐらかされたけど、俺も小６だったし、

(そこまでばかじゃない。そのばのくうきやうしろのかんごふがなきだしたのをみても)

そこまで馬鹿じゃない。その場の空気や後ろの看護婦が泣き出したのを見ても

(あきらかだった。おれがしょっくじょうたいでぼうぜんとしているなか、そのかんごふが、)

明らかだった。俺がショック状態で呆然としている中、その看護婦が、

(「ああ、そういえばさやかちゃんから、りょーたくんがきたらわたしといて、)

「ああ、そういえばさやかちゃんから、リョータ君が来たら渡しといて、

(っていわれたものがあるのよ」といっておれにそれをわたしてくれた。)

って言われた物があるのよ」と言って俺にそれを渡してくれた。

(かしてあげたげーむぼーいとｓｅｇａ２。おれはそれをうけとっていえにかえった。)

貸してあげたゲームボーイとSEGA2。俺はそれを受け取って家に帰った。

(かえるなりめしもくわないで、くらいじぶんのへやでげーむぼーいのすいっちをいれた。)

帰るなり飯も食わないで、暗い自分の部屋でゲームボーイのスイッチを入れた。

(なつかしいあのｏｐのおんがく。それといっしょにでてくるろーどがめん。)

懐かしいあのOPの音楽。それと一緒に出てくるロード画面。

(ひとつはかのじょとおれがいっしょにぷれいしたでーた。あのときからほとんどかわってない、)

一つは彼女と俺が一緒にプレイしたデータ。あの時からほとんど変わってない、

(なつかしさとかなしさでむねがいっぱいになった。)

懐かしさと悲しさで胸がいっぱいになった。

(もうひとつのでーたはやたられべるのひくいでーただった。)

もう一つのデータはやたらレベルの低いデータだった。

(さいしょからはじめてすぐあきたんかな？とおもってそのでーたをろーどしてみた。)

最初から始めてすぐ飽きたんかな？と思ってそのデータをロードしてみた。

(ぱーてぃーよんにんのなまえがこうなっていた。)

パーティー四人の名前がこうなっていた。

(「かんごふ」)

「かんごふ」

(「さんにこ」)

「さんにこ」

(「ろされる」)

「ろされる」

(「たすけて」)

「たすけて」