怖い話《本当に怖かったのは》

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問題文

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(わたしが10だいのころのはなしです。)

私が10代の頃の話です。

(とうじよくあそんでいたゆうじんがいて、いつもおたがいのいえのまんなかあたりにある)

当時よく遊んでいた友人がいて、いつもお互いの家の真ん中辺りにある

(こうえんでまちあわせをしていました。)

公園で待ち合わせをしていました。

(こうえんはとくにおもしろいゆうぐがあったわけではないのですが、さくらのきやいちょうのきで)

公園は特に面白い遊具があった訳ではないのですが、桜の木やイチョウの木で

(かこまれていて、きせつごとにいろどられるきれいでひろいこうえんでした。)

囲まれていて、季節ごとに彩られる綺麗で広い公園でした。

(こうえんのきのちかくにはべんちがあり、いつもそこにすわって)

公園の木の近くにはベンチがあり、いつもそこに座って

(じめんにえだでえでもかきながらともだちをまっていました。)

地面に枝で絵でも描きながら友達を待っていました。

(あるふゆのひ、ともだちのならいことがおわるのをまってからすこしいっしょにあそぼう)

ある冬の日、友達の習い事が終わるのを待ってから少し一緒に遊ぼう

(ということになったのでゆうがたでそらがあかきいろにそまるくらいのじかんに)

という事になったので夕方で空が赤黄色に染まるくらいの時間に

(ひとりこうえんのべんちでまっていました。)

一人公園のベンチで待っていました。

(ふだんからゆうがたにはあまりひとのこないこうえんで、そのひはわたししかいませんでした。)

普段から夕方にはあまり人の来ない公園で、その日は私しかいませんでした。

(「ひとりですか?」)

「一人ですか?」

(うしろからこえがきこえてきました。)

後ろから声が聞こえてきました。

(ふりかえるとうしろにはおおきなきがあり、きのかげからかおをだすように)

振り返ると後ろには大きな木があり、木の影から顔を出すように

(ひとがたっているのはみえました。)

人が立っているのは見えました。

(えがおのだんせいでしたが、からだはかんぜんにかくれておりかおしかみえません。)

笑顔の男性でしたが、体は完全に隠れており顔しか見えません。

(なんでかくれてるんだろ・・・とおもいながらもむしもできず、)

何で隠れてるんだろ・・・と思いながらも無視も出来ず、

(かんたんに「いいえ」とか「まちあわせです」とかへんじをしたとおもいます。)

簡単に「いいえ」とか「待ち合わせです」とか返事をしたと思います。

(すると)

すると

(「いきませんか?」といわれました。)

「いきませんか?」と言われました。

など

(おとこはまだきのうしろからかおだけだしてるじょうたいです。)

男はまだ木の後ろから顔だけ出してる状態です。

(あきらかにふしんなのですが、いやいや・・・ともだちくるし・・・くらいにしか)

明らかに不審なのですが、いやいや・・・友達来るし・・・くらいにしか

(そのときはおもわず、「ともだちまってます!」とこたえ、じめんにえをかいていました。)

その時は思わず、「友達待ってます!」と答え、地面に絵を描いていました。

(するとうしろからばきっとおとがきこえました。)

すると後ろからバキッと音が聞こえました。

(おもわずふりむいたのですが、おとこのからだはきのうしろにかくれたままで、)

思わず振り向いたのですが、男の体は木の後ろに隠れたままで、

(なにがおきたのかわかりません。おとこはあいかわらずえがおです。)

何が起きたのか分かりません。男は相変わらず笑顔です。

(このあたりからなんとなくきもちわるさをかんじたのをおぼえています。)

この辺りから何となく気持ち悪さを感じたのを覚えています。

(そもそもなんでかくれているのか?ずっとえがおなのもぶきみだし、)

そもそも何で隠れているのか?ずっと笑顔なのも不気味だし、

(「いきませんか」というしつもんもなにかいようにかんじました。)

「いきませんか」という質問も何か異様に感じました。

(ばきっというおとにふりむきましたがおとこはなにもいわずにかたまったようなえがおで)

バキッという音に振り向きましたが男は何も言わずに固まったような笑顔で

(こちらをみています。こんどはなにもいいません。)

こちらを見ています。今度は何も言いません。

(ちょっとへんなひとかもしれない・・・とおもい、べんちからたちあがり)

ちょっと変な人かもしれない・・・と思い、ベンチから立ち上がり

(じてんしゃがおいてるこうえんのまんなかあたりまでむかおうとするとうしろから)

自転車が置いてる公園の真ん中辺りまで向かおうとすると後ろから

(「お  い」)

「お  い」

(いままででいちばんおおきいこえでした。)

今までで一番大きい声でした。

(びくっとからだがはねあがるほどにおどろきました。きょうふでふりむくことができません。)

ビクッと体が跳ね上がるほどに驚きました。恐怖で振り向く事が出来ません。

(やばい、このひとはなにかおかしい)

やばい、この人は何かおかしい

(そうおもい、はんぶんぱにっくになりながらもいそいでじてんしゃのかぎをはずし、)

そう思い、半分パニックになりながらも急いで自転車の鍵を外し、

(にげようとしました。)

逃げようとしました。

(ですがあせっていたこともありよろめいてしまい、)

ですが焦っていた事もありよろめいてしまい、

(おもわずおとこのいるほうにめをむけてしまいました。)

思わず男のいる方に目を向けてしまいました。

(そこにはおとこのかおがありました、かわらぬつくりもののようなえがおで、)

そこには男の顔がありました、変わらぬ作り物のような笑顔で、

(「いきますか、いきませんか」)

「いきますか、いきませんか」

(そういいました。)

そう言いました。

(それをみたわたしはきょうふでくちがうまくまわらなかったのですが、)

それを見た私は恐怖で口がうまく回らなかったのですが、

(「いきません、いきません、いきません」)

「いきません、いきません、いきません」

(といいながらひっしでこうえんからでました。)

と言いながら必死で公園から出ました。

(こうえんからでたらちょうどゆうじんがこっちにくるのがみえたためすこしあんしんしました。)

公園から出たらちょうど友人がこっちに来るのが見えた為少し安心しました。

(ゆうじんはこうえんであそびたかったようなのですがひっしでとめ、)

友人は公園で遊びたかったようなのですが必死で止め、

(そのひはいえのちかくのだがしやだけいってかえることにしました。)

その日は家の近くの駄菓子屋だけ行って帰る事にしました。

(あとからきくとゆうじんもわたしがいつもとちがうようすでこうえんからはなれたがるものだから、)

後から聞くと友人も私がいつもと違う様子で公園から離れたがるものだから、

(なにかおかしいとかんじじょうところをかえることをしょうだくしてくれたようです。)

何かおかしいと感じ場所を変える事を承諾してくれたようです。

(ことのてんまつをゆうじんにはなすと、)

事の顛末を友人に話すと、

(「あーそういうぶつぶついっているひとたまにこうえんいるよねー」)

「あーそういうぶつぶつ言っている人たまに公園いるよねー」

(といったのですが、そんなものではありませんでした。)

と言ったのですが、そんなものではありませんでした。

(「でもそんなはなしかけられたくらいでびびるのだせーな!」)

「でもそんな話しかけられたくらいでビビるのだせーな!」

(とゆうじんにちゃかされたのですが、そうじゃない。)

と友人に茶化されたのですが、そうじゃない。

(ほんとうにこわかったのはよくわからないことをいわれたことでも、)

本当に怖かったのは良く分からない事を言われた事でも、

(きをけったようなおとがしたことでもない。)

木を蹴ったような音がした事でもない。

(さいごにおとこが)

最後に男が

(「いきますか、いきませんか」)

「いきますか、いきませんか」

(そういったとき、えがおのおとこのくちがまったくうごいていなかったことが、いちばんこわかったです。)

そう言った時、笑顔の男の口が全く動いていなかった事が、一番怖かったです。

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