怖い話《3つ目のねがいごと》1

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問題文

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(わたしがしょうがっこう4ねんせいのとき。)

私が小学校4年生の時。

(ちかくのすーぱーのにかいにあったぶんぼうぐやさんに、)

近くのスーパーの二階にあった文房具屋さんに、

(ともだちのさきちゃんとまりこちゃんとあつまるのがにっかだった。)

友達のサキちゃんとマリコちゃんと集まるのが日課だった。

(もちろんべんきょうにひつようなのーとやえんぴつなんかにはぜんぜんきょうみがない。)

勿論勉強に必要なノートや鉛筆なんかには全然興味がない。

(いろんなにおいのするけしごむやからふるできれいなぺん、)

色んな匂いのする消しゴムやカラフルで綺麗なペン、

(かわいいきゃらくたーもののこものなんかを、さんにんでいつもぶっしょくしていた。)

可愛いキャラクターものの小物なんかを、三人でいつも物色していた。

(そのなかでもわたしたちがむちゅうになったのは、)

その中でも私達が夢中になったのは、

(「まほうつかいのあいてむ」というしりーずだ。)

「まほうつかいのアイテム」というシリーズだ。

(よくあるおんなのこのすきな「おまじない」につかうがんぐで)

よくある女の子の好きな「おまじない」に使う玩具で

(「すきなひとのなまえをかくとこいがみのるぺん」だとか)

「すきなひとの名前を書くと恋が実るペン」だとか

(「まほうのみずがはいったこびん」だとか、いまおもえばたわいのないしろものだった。)

「まほうの水が入った小瓶」だとか、今思えば他愛のない代物だった。

(あるひいつものようにすくないおこづかいでこものをかっておみせをでたあと、)

ある日いつものように少ないお小遣いで小物を買ってお店を出た後、

(さきちゃんが「まほうつかい」しりーずのなかの)

サキちゃんが「まほうつかい」シリーズの中の

(「ねがいごとがかなうかみ」というのをとりだしてわたしたちにわけてくれた。)

「ねがいごとが叶う紙」というのを取り出して私達に分けてくれた。

(「ねがうごとがかなうかみ」は1ぱっくに3まいうすいぴんくいろのかみがはいっていて、)

「ねがうごとが叶う紙」は1パックに3枚薄いピンク色の紙が入っていて、

(そのうすいかみにねがいごとをかいてみずにとかすとねがいごとがかなう、というものだ。)

その薄い紙に願い事を書いて水に溶かすと願い事が叶う、というものだ。

(さきちゃんは3つあるから1つずつね、とわたしとまりこちゃんにそれをくれた。)

サキちゃんは3つあるから1つずつね、と私とマリコちゃんにそれをくれた。

(おみせもしまって、さっそくさきちゃんのいえにいきねがいごとをしようということになった。)

お店も閉まって、早速サキちゃんの家に行き願い事をしようという事になった。

(そとはもうすっかりくらかったけど、やっぱり「まほう」なんだからくらいほうが)

外はもうすっかり暗かったけど、やっぱり「まほう」なんだから暗い方が

(むーどがでるし、よるにひっそりこどもだけであそぶというのはどきどきするものだ。)

ムードが出るし、夜にひっそり子供だけで遊ぶというのはドキドキするものだ。

など

(さきわいさきちゃんいえのおかあさんはよしごとでいないし、)

幸いサキちゃん家のお母さんは夜仕事でいないし、

(まりこちゃんのいえもおやはおそくまでかえってこない。)

マリコちゃんの家も親は遅くまで帰ってこない。

(わたしのままもこのまえうまれたいもうとにかかりきりで、)

私のママもこの前生まれた妹にかかりきりで、

(わたしがちょっとくらいそとでおそくまであそんでてもなにもいわなかった。)

私がちょっとくらい外で遅くまで遊んでても何も言わなかった。

(とはいえ、さぁねがいごとをしようなんていわれてもそうそうおもいうかばない。)

とはいえ、さぁ願い事をしようなんて言われてもそうそう思い浮かばない。

(さんにんでそれぞれかんがえてやっとでたねがいごとは、じつにばかばかしいものだった。)

三人でそれぞれ考えてやっと出た願い事は、実に馬鹿馬鹿しいものだった。

(わたしは「32しょくのいろえんぴつがほしい」)

私は「32色の色えんぴつがほしい」

(さきちゃんは「びじんになりたい」)

サキちゃんは「びじんになりたい」

(まりこちゃんは「じぶんひとりのへやがほしい」)

マリコちゃんは「じぶん一人のへやがほしい」

(ほんとうにかなうのかなぁ、なんてさんにんでわらいながら、)

本当に叶うのかなぁ、なんて三人で笑いながら、

(こっぷにいれたみずにかみをいれると、きえるようにいっしゅんでとけてなくなった。)

コップに入れた水に紙を入れると、消えるように一瞬で溶けて無くなった。

(いまおもえばとけやすいそざいをつかっていたのだろう。)

今思えば溶けやすい素材を使っていたのだろう。

(でも、わたしたちにはまほうのようにふしぎにうつった。)

でも、私達には魔法のように不思議に映った。

(「ねがいごとがかなうかみ」のことなんてすっかりわすれたすうしゅうかんご。)

「ねがいごとが叶う紙」の事なんてすっかり忘れた数週間後。

(しんせきのいえのようじからかえってきたままがわたしに、とつぜんいろえんぴつをくれた。)

親戚の家の用事から帰ってきたママが私に、突然色えんぴつをくれた。

(ひらたいかんにはいった32しょくのいろえんぴつ。)

平たい缶に入った32色の色えんぴつ。

(しんせきのみーちゃんのだったけどもういらないから、ともらってきてくれたらしい。)

親戚のみーちゃんのだったけどもういらないから、と貰ってきてくれたらしい。

(なかをあけるとほとんどのいろがつかわれてないまま、)

中を開けるとほとんどの色が使われてないまま、

(すらっとながいきれいないろえんぴつがならんでいた。)

すらっと長い綺麗な色鉛筆が並んでいた。

(ねがいごとが、かなった!)

ねがいごとが、叶った!

(わたしははっと「ねがいごとがかなうかみ」のことをおもいだして、すごくこうふんした。)

私はハッと「ねがいごとが叶う紙」の事を思い出して、凄く興奮した。

(さきちゃんやまりこちゃんにはやくつたえたくて、)

サキちゃんやマリコちゃんに早く伝えたくて、

(そのひはどきどきしてねむれなかったのをおぼえている。)

その日はドキドキして眠れなかったのを覚えている。

(がっこうでふたりにいろえんぴつのことをつたえると、さいしょはうたがっていたさきちゃんだったが)

学校で二人に色えんぴつの事を伝えると、最初は疑っていたサキちゃんだったが

(わたしがもっていたひらたいかんをひらいてみせたらめをかがやかせてよろこんだ。)

私が持っていた平たい缶を開いて見せたら目を輝かせて喜んだ。

(「ねがいごとがかなうかみ」はほんものだ!)

「ねがいごとが叶う紙」はほんものだ!

(さんにんできゃっきゃっいいながらはしゃいだ。)

三人でキャッキャッ言いながらはしゃいだ。

(そのひはいちがっきのおわりのしゅうぎょうしき。)

その日は一学期の終わりの終業式。

(はやめのがっこうがおわるといそいでさきちゃんのいえにあつまった。)

早めの学校が終わると急いでサキちゃんの家に集まった。

(もちろんにまいめのかみにねがいごとをかくために。)

勿論二枚目の紙に願い事を書く為に。

(さいしょのねがいよりもわたしたちはなやみになやんだ。)

最初の願いよりも私達は悩みに悩んだ。

(なんせげんにねがいがかなったのだから。)

なんせ現に願いが叶ったのだから。

(ああでもない、こうでもない、とそうだんするうちにきづいたらひはくれ、)

ああでもない、こうでもない、と相談するうちに気付いたら日は暮れ、

(いつのまにははなしはだっせん。いつものくらすのだれかのわるくちたいかいにはってんしていた。)

いつの間には話は脱線。いつものクラスの誰かの悪口大会に発展していた。

(さきちゃんがなにげなくいった。)

サキちゃんが何気なく言った。

(「たかなしゆうや、あいつきたないよね」)

「タカナシユウヤ、あいつ汚いよね」

(それはわたしたちももちろんしってるくらすめいとのひとりのなまえだった。)

それは私達も勿論知ってるクラスメイトの一人の名前だった。

(たかなしくんはくらすでもわるいいみでめだつこだった。)

タカナシくんはクラスでも悪い意味で目立つ子だった。

(しんたいがすごくおおきくてらんぼうで、いつもぼろぼろのふくをきていやなにおいがした。)

身体が凄く大きくて乱暴で、いつもボロボロの服を着て嫌な臭いがした。

(そのときわたしはかれとおなじ「はん」だった。)

その時私は彼と同じ「班」だった。

(ちびできのよわいわたしはときたまかれにこづかれたり、)

ちびで気の弱い私は時たま彼に小突かれたり、

(むしをおしつけられてないたりしていた。)

虫を押し付けられて泣いたりしていた。

(しょうじき、わたしもかれをひどくきらいで、なつやすみのあいだかれにあわなくてすむことに)

正直、私も彼をひどく嫌いで、夏休みの間彼に会わなくて済む事に

(すごくほっとしていたくらいだった。)

凄くホッとしていたくらいだった。

(かれのわるくちをひととおりいいあったわたしたちはふざけながらいじわるくけらけらわらい、)

彼の悪口を一通り言い合った私達はふざけながら意地悪くケラケラ笑い、

(にまいめのかみにおなじねがいごとをかいた。)

二枚目の紙に同じ願い事を書いた。

(「たかなしゆうやが、しにますように」)

「タカナシユウヤが、しにますように」

(かみはまたきえるようにこっぷのみずにとけた。)

紙はまた消えるようにコップの水に溶けた。

(なつやすみがおわってにがっきがはじまった。)

夏休みが終わって二学期が始まった。

(しぎょうしきのひ、たかなしゆうやくんはきょうしつにいなかった。)

始業式の日、タカナシユウヤくんは教室にいなかった。

(せんせいはたんたんと「たかなしくんはかていのじじょうでひっこしました」)

先生は淡々と「タカナシくんは家庭の事情で引っ越しました」

(とだけみんなにせつめいした。)

とだけみんなに説明した。

(かれをしんぱいしたりかえりみるこはだれもいなかったのが、)

彼を心配したり顧みる子は誰もいなかったのが、

(かれのまわりからのひょうかをなまなましくあらわしていた。)

彼の周りからの評価を生々しく表していた。

(わたしじしん、ああそうなのか、くらいにきにもとめずかえりじたくをしていると、)

私自身、ああそうなのか、くらいに気にも留めず帰り支度をしていると、

(かえりぎわさきちゃんがわらいをこたえきれないというかんじで)

帰り際サキちゃんが笑いを堪えきれないという感じで

(おかしそうにわたしにみみうちした。)

可笑しそうに私に耳打ちした。

(「またかなったね」)

「また叶ったね」

(わたしはきゅうにとてもこわくなった。)

私は急にとても怖くなった。

(しんぞうがばくばくうるさくなっていた。)

心臓がバクバクうるさく鳴っていた。

(まりこちゃんのほうをみると、わたしとおなじようにあおいかおをしてめをふせていた。)

マリコちゃんの方を見ると、私と同じように青い顔をして目を伏せていた。

(まさか。そんなわけない。でも、もしかして。)

まさか。そんなわけない。でも、もしかして。

(いえにかえるまでぐるぐるしこうがまわりつづけていた。)

家に帰るまでグルグル思考が廻り続けていた。

(それから、なんとなくわたしたちさんにんはあまりあそばなくなった。)

それから、なんとなく私達三人はあまり遊ばなくなった。

(さきちゃんはちゅうがくにあがるとほかのじょしやだんしとなかよくするようになったし、)

サキちゃんは中学に上がると他の女子や男子と仲良くするようになったし、

(まりこちゃんはあまりがっこうにこなくなった。)

マリコちゃんはあまり学校に来なくなった。

(わたしもなんとなくほかのともだちとそれなりにつきあって、がくねんをかさねていった。)

私も何となく他の友達とそれなりに付き合って、学年を重ねていった。

(きづけばわたしもしゃかいじんになり、いまあるにんげんかんけいのはばにおさまって、)

気付けば私も社会人になり、今ある人間関係の幅に収まって、

(なやみといえばしごとのことくらい。)

悩みと言えば仕事の事くらい。

(ちいさいころはあまりなかがよくなかったいもうとも、こんどだいがくせいになるらしい。)

小さい頃はあまり仲が良くなかった妹も、今度大学生になるらしい。

(しょうがっこうじだいなかのよかったふたりのかおなんて、)

小学校時代仲の良かった二人の顔なんて、

(おもいだそうとしてもおぼろげになってきたころだった。)

思い出そうとしても朧げになってきた頃だった。

(すーぱーでかいものをしていたわたしに、)

スーパーで買い物をしていた私に、

(きんぱつにはでなかんじのじょせいがこうふんしたようすでこえをかけてきた。)

金髪に派手な感じの女性が興奮した様子で声を掛けてきた。

(さきちゃんだった。)

サキちゃんだった。

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