先生 後編 -12-(完)

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師匠シリーズ
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関連タイピング

問題文

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(まったくかんけいのないしらべものをしていたのに、ふとめにとまったぺーじに)

全く関係のない調べ物をしていたのに、ふと目に止まった頁に

(ながいじかんをへだてたさいごのなぞのこたえがあっけなくころがっていた。)

長い時間を隔てた最後の謎の答えがあっけなく転がっていた。

(そしてそれはぼくをひとときのついおくのかなたへとさそったのだ。)

そしてそれは僕をひと時の追憶の彼方へと誘ったのだ。

(けっかくがくめいtuberculosis)

【結核】学名tuberculosis

(けっかくきんによってひきおこされるかんせんしょう。こきゅうきかんやりんぱそしき、)

結核菌によって引き起こされる感染症。呼吸器官やリンパ組織、

(かんせつやひふなどはっしょうするきかんはたきにわたる。)

関節や皮膚など発症する器官は多岐にわたる。

(なかでもだいひょうてきなはいけっかくはにほんにおいてはこらいよりろうがいとよばれ、)

なかでも代表的な肺結核は日本においては古来より労咳と呼ばれ、

(りかんしゃもおおくしびょうとしておそれられていた。)

罹患者も多く死病として恐れられていた。

(・・・・・ちゅうりゃく・・・・・いしのしようするりゃくしょうであるtb(がくめいから)が)

・・・・・中略・・・・・石の使用する略称であるTB(学名から)が

(みんかんにおいてもひろまり、いんごてきにてーべーとこしょうされることも・・・・・)

民間においても広まり、隠語的にテーベーと呼称されることも・・・・・

(あのひのきょうしつで、あてねをあてないとしないのにてーべだけを)

あの日の教室で、アテネをアテナイとしないのにテーベだけを

(てーばいとかきなおしたせんせいの、おもくしずんだせなかがきのうのことのように)

テーバイと書き直した先生の、重く沈んだ背中が昨日のことのように

(まぶたのうらによみがえる。)

瞼の裏に蘇る。

(あのときのせんせいは、じぶんがまぼろしであることをしっていたのだろうか。)

あの時の先生は、自分が幻であることを知っていたのだろうか。

(そしてまぼろしをみているぼくのことを、どうおもっていたのだろう。)

そして幻を見ている僕のことを、どう思っていたのだろう。

(あれからなんどかべつのとしにちんじゅのもりをぬけてあのはいこうにあしをむけたことがある。)

あれから何度か別の年に鎮守の森を抜けてあの廃校に足を向けたことがある。

(けれどただのいちども、せんせいにはあえなかった。)

けれどただの一度も、先生には会えなかった。

(またあいたいか、といわれれば、いまではちゅうちょしてしまう。)

また会いたいか、と言われれば、今では躊躇してしまう。

(せんせいにいわれたとおりにめをあけていられたかどうか、ふあんなのだ。)

先生に言われたとおりに目を開けていられたかどうか、不安なのだ。

(あのころのぼくがおもっていたよりもずっと、あまりにそこしれないあくいが)

あのころの僕が思っていたよりもずっと、あまりに底知れない悪意が

など

(このよにはみちているのだから。)

この世には満ちているのだから。

(ちゅうがくさんねんせいのころ、あのはいこうがとりこわされたというはなしをきいた。)

中学三年生のころ、あの廃校が取り壊されたという話を聞いた。

(だいきぼなこうじで、おおきなみちがぬけたらしい。あのすてられたしゅうらくをのみこんで。)

大規模な工事で、大きな道が抜けたらしい。あの捨てられた集落を飲み込んで。

(ぼくがそのばにうめなおしたおりづるたちもほりかえされ、)

僕がその場に埋め直した折り鶴たちも掘り返され、

(そしてもっとふかくうめられてしまっただろうか。)

そしてもっと深く埋められてしまっただろうか。

(ぼくは、あのぼろぼろのおりづるのなかにうずもれるようにして)

僕は、あのボロボロの折り鶴の中に埋もれるようにして

(いちまいのかみがまざっていたことをおもいだす。)

一枚の紙が混ざっていたことを思い出す。

(それはどこかでみたひっせきで、しのようであり、だれかへあてた)

それはどこかで見た筆跡で、詩のようであり、誰かへ宛てた

(てがみのようであった。ぼくはそれだけをもちかえって、)

手紙のようであった。僕はそれだけを持ち帰って、

(やがてそのかみでおりづるをつくった。)

やがてその紙で折り鶴を作った。

(じっかにかえったあと、しばらくぼくのへやのまどぎわにつるされてゆれていたけれど、)

実家に帰った後、しばらく僕の部屋の窓際に吊るされて揺れていたけれど、

(いつのまにかどこかへいってしまった。)

いつのまにかどこかへ行ってしまった。

(おさなきひのきおくのつどう、りんぼかいのどこかへ。)

幼き日の記憶のつどう、リンボ界のどこかへ。

(めあてのほんをさがしあて、かしだしのてつづきをしてからそれをこわきにかかえて)

目当ての本を探し当て、貸出しの手続きをしてからそれを小脇に抱えて

(としょかんをでると、かおがきられるようなつめたいかぜがふきつけてきた。)

図書館を出ると、顔が切られるような冷たい風が吹きつけてきた。

(まふゆだった。)

真冬だった。

(すっかりなつのようなきがしていたのに。)

すっかり夏のような気がしていたのに。

(ぼくはくしょうして、こーとのえりをよせた。)

僕は苦笑して、コートの襟を寄せた。

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