怖い話《あっくん》2

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問題文

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(けんたのはががたがたとふるえているのがみえる。)

健太の歯がガタガタと震えているのが見える。

(きづくとたおれこんでいたあっくんがかおをあげてにこにことけんたをみつめていた。)

気づくと倒れ込んでいたあっくんが顔を上げてニコニコと健太を見つめていた。

(りかいふのうなじょうきょうにかたまっているといいんちょうがけんたにむかってこえをかけようとした。)

理解不能な状況に固まっていると委員長が健太に向かって声をかけようとした。

(そのときだった、ひらいたとびら、てらされたくらやみのなかからうでがのびてきた。)

その時だった、開いた扉、照らされた暗闇の中から腕が伸びてきた。

(ほねとかわしかなくせいきをかんじられないそのうではみいらのようだった。)

骨と皮しかなく生気を感じられないその腕はミイラのようだった。

(そしていようにながい。)

そして異様に長い。

(そのうではとびらから2mいじょうはなれているけんたにむかってゆっくりとのびていった。)

その腕は扉から2m以上離れている健太に向かってゆっくりと伸びていった。

(そのうでがけんたのりょうわきをつかむ。)

その腕が健太の両脇を掴む。

(けんたは「ひっ・・・」とこえにならないこえをあげていた。)

健太は「ひっ・・・」と声にならない声を上げていた。

(ここからもけんたのりょうわきにゆびがくいこんでいるのがわかる。)

ここからも健太の両脇に指が食い込んでいるのが分かる。

(それをみているあっくんはにこにこしたままだ。)

それを見ているあっくんはニコニコしたままだ。

(いまにもさけびだしたいしょうどうにかられていたつぎのしゅんかん。)

今にも叫びだしたい衝動に駆られていた次の瞬間。

(けんたがとびらのなかにひきこまれ、とびらがしまった。)

健太が扉の中に引き込まれ、扉が閉まった。

(あまりのいきおいにけんたのからだがくのじにまがり、)

あまりの勢いに健太の体がくの字に曲がり、

(ぼきっとおとをたててくらやみへときえていった。)

ボキッと音を立てて暗闇へと消えていった。

(ひきこまれたあとほねがきしむような、おれるようないやなおとがあたりにひびきわたった。)

引き込まれた後骨が軋むような、折れるような嫌な音があたりに響き渡った。

(おとがなりやみ、いっしゅんのせいじゃくがながれたあと、)

音が鳴り止み、一瞬の静寂が流れた後、

(しんじとこうきがさけびながらにげだした。)

シンジとコウキが叫びながら逃げ出した。

(そのこえにはんのうするようにおれもいいんちょうもでぐちにむかってぜんりょくではしりだす。)

その声に反応するように俺も委員長も出口に向かって全力で走り出す。

(とちゅうふりかえったとき、あっくんがてをたたきながらおおごえでわらっているのがみえた。)

途中振り返った時、あっくんが手を叩きながら大声で笑っているのが見えた。

など

(そのままじたくへとにげかえったおれはじしつへとはいりふとんにくるまってふるえていた。)

そのまま自宅へと逃げ帰った俺は自室へと入り布団にくるまって震えていた。

(しんぱいしたははおやがへやにはいってきたが)

心配した母親が部屋に入ってきたが

(ぐあいがわるいといいわけをし、そのままねむってしまった。)

具合が悪いと言い訳をし、そのまま眠ってしまった。

(よくじつめをさまして、きのうのことはゆめだったとおもいこもうとした。)

翌日目を覚まして、昨日の事は夢だったと思い込もうとした。

(だがにげかえるときにころんですりむいたひざがゆめじゃなかったんだとじっかんさせる。)

だが逃げ帰るときに転んで擦りむいた膝が夢じゃなかったんだと実感させる。

(ねおきのあたまでおもいだすきのうのできごと。)

寝起きの頭で思い出す昨日の出来事。

(くらやみからのびるながいうで、つかまれたときのけんたのひょうじょう。)

暗闇から伸びる長い腕、掴まれた時の健太の表情。

(ひきこまれたあとのいやなあのおと。)

引き込まれた後の嫌なあの音。

(そしてあっくんの「あいつ」ということば。)

そしてあっくんの「あいつ」という言葉。

(がっこうへいくとちゅう、いいんちょうとごうりゅうしてとうこうした。)

学校へ行く途中、委員長と合流して登校した。

(ねむれなかったのかめのしたにはこいくまができていた。)

眠れなかったのか目の下には濃いクマができていた。

(「おはよう」とひとことかわしたあとは)

「おはよう」と一言交わした後は

(おたがいきのうのことをいいだせずしたをむいてあるいていた。)

お互い昨日の事を言い出せず下を向いて歩いていた。

(さきにくちをひらいたのはいいんちょうだった。)

先に口を開いたのは委員長だった。

(「きのうのさ・・・あれ・・・たぶんけんたは・・・」)

「昨日のさ・・・あれ・・・多分健太は・・・」

(そのさきのことばはいわなかった、おれもあたまではわかっていた。)

その先の言葉は言わなかった、俺も頭ではわかっていた。

(きっとけんたはなくなっている。)

きっと健太は亡くなっている。

(とびらがしまったあとのあのおと、)

扉が閉まった後のあの音、

(そうぞうもしたくないようなおそろしいことがおこっていただろう。)

想像もしたくないような恐ろしい事が起こっていただろう。

(だがしょうじきにいうとじごうじとくだともおもった。)

だが正直に言うと自業自得だとも思った。

(あっくんはたしかにへんだったがてんばつがくだったのだとなっとくするようにしていた。)

あっくんは確かに変だったが天罰が下ったのだと納得するようにしていた。

(それはいいんちょうもおなじだったようだ。)

それは委員長も同じだったようだ。

(がっこうにつき、きょうしつへはいる。)

学校に着き、教室へ入る。

(しんじとこうきもちゃんととうこうしてきたようだったが、)

シンジとコウキもちゃんと登校してきたようだったが、

(ふたりともようすがおかしい。)

二人とも様子がおかしい。

(ふたりとも、すわりながらまえをみつめてふるえている。)

二人共、座りながら前を見つめて震えている。

(ふたりがみつめるしせんのさきをみる、おれはせすじがこおりついた。)

二人が見つめる視線の先を見る、俺は背筋が凍り付いた。

(けんたがまえのせきにすわっていた。)

健太が前の席に座っていた。

(たすかっていた?いやそんなはずがない。)

助かっていた?いやそんなはずがない。

(あれはかくじつにけんたじしんのほねがおれてるおとだった・・・はずだ。)

あれは確実に健太自身の骨が折れてる音だった・・・はずだ。

(いいんちょうにめをむけるとかれもまたしんじられないといったひょうじょうで)

委員長に目を向けると彼もまた信じられないといった表情で

(まえのせきにすわるけんたをみつめていた。)

前の席に座る健太を見つめていた。

(なによりもとてつもないいわかんをかんじたのは、けんたのひょうじょうだった。)

何よりもとてつもない違和感を感じたのは、健太の表情だった。

(にこにこしている、あっくんとおなじかおで。)

ニコニコしている、あっくんと同じ顔で。

(せいかくまでもかわっていた。)

性格までも変わっていた。

(あいつはいつもえにかいたようなわるいかおをして、ぼうじゃくぶじんにふるまい、)

あいつはいつも絵にかいたような悪い顔をして、傍若無人に振る舞い、

(しんじとこうきいがいにはきょりをおかれているようなやつだった。)

シンジとコウキ以外には距離を置かれているような奴だった。

(それがいまはあのにこにことしたかおでくらすめいととたのしそうにかいわをしている。)

それが今はあのニコニコとした顔でクラスメイトと楽しそうに会話をしている。

(だれもふしぎにおもっていない。)

誰も不思議に思っていない。

(まるでもとからそういったじんぶつであったかのように。)

まるで元からそういった人物であったかのように。

(おれもいいんちょうもほかのふたりもけんたにはなしかけるゆうきはなかった。)

俺も委員長も他の二人も健太に話しかける勇気はなかった。

(ふとおれはきづいた。)

ふと俺は気づいた。

(「あっくんは・・・?」)

「あっくんは・・・?」

(ほーむるーむもはじまるというのにあっくんがきていなかった。)

ホームルームも始まるというのにあっくんが来ていなかった。

(きょうしつのどあがひらき、せんせいがはいってきた。)

教室のドアが開き、先生が入ってきた。

(「えー、みなさんあつやくんのことですが、)

「えー、皆さんアツヤくんのことですが、

(いえのつごうでひっこしをすることになったそうです。」)

家の都合で引っ越しをすることになったそうです。」

(そのことばにおれはおどろくとともにあんどした。)

その言葉に俺は驚くと共に安堵した。

(けんたももちろんだがこれからさき、)

健太ももちろんだがこれから先、

(あっくんとふつうにせっすることができないきがしていたから。)

あっくんと普通に接することができない気がしていたから。

(それいらい、おれはじしゃぶっかくのたぐいのところにいくことがこわくなった。)

それ以来、俺は寺社仏閣の類のところに行くことが怖くなった。

(たてもののなかからあのいようにながいうでがのびてきそうなきがするから。)

建物の中からあの異様に長い腕が伸びてきそうな気がするから。

(そしておれといいんちょうがおなじくおもっていたことがある。)

そして俺と委員長が同じく思っていたことがある。

(あのときいらい、かわってしまったけんた。)

あの時以来、変わってしまった健太。

(あっくんとおなじはりつけたようなえがお。)

あっくんと同じ貼り付けたような笑顔。

(「もしかして、あっくんは・・・」)

「もしかして、あっくんは・・・」

(けんたはいまもにこにこしている。)

健太は今もニコニコしている。

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