もういいかい -3-

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問題文
(そうおもったしゅんかん、もういちどきこえた。こんどははっきりと。)
そう思った瞬間、もう一度聞こえた。今度ははっきりと。
(「もういいかい」)
「もういいかい」
(たちあがってみがまえる。どこからきこえた?)
立ち上って身構える。どこから聞こえた?
(わからなかった。ただ、そのことばのよいんがしつないからろうかにむけてうごき、)
分からなかった。ただ、その言葉の余韻が室内から廊下に向けて動き、
(ふすまをとおりぬけていったのをかんじた。)
襖を通り抜けていったのを感じた。
(これはにほんまにはぼくとししょうしかいない。はずだ。)
これは日本間には僕と師匠しかいない。はずだ。
(これか。うわさは。)
これか。噂は。
(きんちょうしてふすまにてをかける。そろそろとずらして、くびだけでのぞきこむ。)
緊張して襖に手をかける。そろそろとずらして、首だけで覗き込む。
(ろうかはすでにくらく、ひっそりとしずまりかえっている。)
廊下はすでに暗く、ひっそりと静まり返っている。
(やみのとばりのむこうにひとのけはいはまったくかんじない。)
闇の戸張りの向こうに人の気配はまったく感じない。
(だからこそいようなくうきがひしひしとつたわってくる。)
だからこそ異様な空気がひしひしと伝わってくる。
(ぼくはそっとふすまをしめ、しつないをふりかえる。)
僕はそっと襖を閉め、室内を振り返る。
(ししょうはまだねている。ひざをついてゆりおこす。)
師匠はまだ寝ている。膝をついて揺り起こす。
(もぞもぞとうごいていたが、めんどくさそうなこえで)
もぞもぞと動いていたが、めんどくさそうな声で
(「おばけいがいみたくない」とつぶやいたのがきこえた。)
「お化け以外見たくない」と呟いたのが聞こえた。
(「みえないからもんだいなんですよ」)
「見えないから問題なんですよ」
(ぼくはしろいすとれっちぱんつのおしりのぶぶんをえんりょなくたたいた。)
僕は白いストレッチパンツのお尻の部分を遠慮なく叩いた。
(「ってぇな!」)
「ッてぇな!」
(ししょうがらんぼうなくちょうでおきあがったそのしゅんかんだった。)
師匠が乱暴な口調で起き上がったその瞬間だった。
(「もういいかい」)
「もういいかい」
(どこからともなくそんなといかけがふってきた。)
どこからともなくそんな問いかけが降ってきた。
(おもわずふたりともうごきがこうちょくする。)
思わず二人とも動きが硬直する。
(しせんだけをはしらせてしつないをかんさつするが、なにもみにみえるいじょうはない。)
視線だけを走らせて室内を観察するが、なにもみに見える以上はない。
(なんだ?これからなにがおこる?)
なんだ?これからなにが起こる?
(どっどっどっ、というしんぞうのおとをききながらかんがえる。)
ドッドッドッ、という心臓の音を聞きながら考える。
(うわさではなんといっていた?へんじだ。へんじはするのがせいかいか、しないのがせいかいか。)
噂ではなんと言っていた?返事だ。返事はするのが正解か、しないのが正解か。
(もういいかい、にたいしてするへんじは・・・・・)
もういいかい、に対してする返事は・・・・・
(「ししょう」)
「師匠」
(よこめでみると、「だまってろ」というひとこと。)
横目で見ると、「黙ってろ」という一言。
(きんちょうしながらもじっとしていると、またえたいのしれないそのこえのよいんが)
緊張しながらもじっとしていると、また得体の知れないその声の余韻が
(くうちゅうにいとをひいたようにすうっ、とうごき、)
空中に糸を引いたようにすうっ、と動き、
(こんどはてれびのあるかべのむこうにきえていった。)
今度はテレビのある壁の向こうに消えていった。
(かべのむこうはそとのはずだ。)
壁の向こうは外のはずだ。
(はぁっ、といきをはき、はじめてじぶんがいきをとめていたことにきづく。)
はぁっ、と息を吐き、初めて自分が息を止めていたことに気づく。
(ししょうはまをおかずにはしりだした。)
師匠は間を置かずに走り出した。
(ろうかにでて、でんきをつけてまわる。といれやだいどころ、ものおきともうひとつのこべや。)
廊下に出て、電気を点けて回る。トイレや台所、物置ともう一つの小部屋。
(すべてひととおりたんさくしたが、)
すべて一通り探索したが、
(じぶんたちいがいのだいさんしゃはどこにもひそんではいなかった。)
自分たち以外の第三者はどこにも潜んではいなかった。
(げんかんにもどってきてどあをみると、じぶんたちでせじょうしたときのままだった。)
玄関に戻ってきてドアを見ると、自分たちで施錠した時のままだった。
(うでどけいをみるとよるのはちじすぎ。)
腕時計を見ると夜の八時過ぎ。
(ほんのすこしうとうとしたつもりだったのに、こんなにじかんがたっている。)
ほんの少しうとうとしたつもりだったのに、こんなに時間が経っている。
(「さっきのはなんでしょう」)
「さっきのはなんでしょう」
(おそるおそるきくぼくに、ししょうはかぶりをふった。)
恐る恐る訊く僕に、師匠はかぶりを振った。
(「ことばははっしていたが、にんげんてきなものをかんじなかった。)
「言葉は発していたが、人間的なものを感じなかった。
(ふつうのれいとはちがうきがする。かといってものれいとも・・・・・」)
普通の例とは違う気がする。かといって物霊とも・・・・・」
(ぼくは「もういいかい」というさっきのことばのこわいろをおもいだそうとする。)
僕は「もういいかい」というさっきの言葉の声色を思い出そうとする。
(おとこか、おんなか。そしてわかいのか、としよりなのか。)
男か、女か。そして若いのか、年寄りなのか。
(しかし、だめだった。くうきをしんどうさせてつたわったおとならばきおくのなかに)
しかし、ダメだった。空気を振動させて伝わった音ならば記憶の中に
(かくじつにのこっているはずだが、あのこえはちょくせつのうにひびいたとでもいうのか、)
確実に残っているはずだが、あの声は直接脳に響いたとでもいうのか、
(まったくかってがちがった。まるでげんちょうをおもいだそうとするように、)
まったく勝手が違った。まるで幻聴を思い出そうとするように、
(とらえどころのないないかんじ。よけいなじょうほうがこくいっこくときはつし、)
捕らえどころのないない感じ。余計な情報が刻一刻と揮発し、
(「もういいかい」ということばのいみだけがじゅんすいにのうりにこくいんされていく。)
「もういいかい」という言葉の意味だけが純粋に脳裏に刻印されていく。
(さいごにかべのむこうによいんがきえていったようなきがしたことをおもいだし、)
最後に壁の向こうに余韻が消えていったような気がしたことを思い出し、
(げんかんのとびらにめをむける。)
玄関の扉に目を向ける。
(ししょうもうなずいてげんかんのだんさをおり、くつにあしをいれた。)
師匠も頷いて玄関の段差を降り、靴に足を入れた。
(とびらをあけてそとにでると、あかるさになれために、)
扉を開けて外に出ると、明るさに慣れた目に、
(よるのくうきがどろどろとくろいまくとなってまとわりついてきた。)
夜の空気がどろどろと黒い幕となってまとわりついてきた。
(ふるいいえのならぶかんせいなじゅうたくがいのいちかくにあるしゅうかいじょのしきちはひろく、)
古い家の並ぶ閑静な住宅街の一角にある集会所の敷地は広く、
(げんかんからおもてのどうろまですこしきょりがあった。)
玄関から表の道路まで少し距離があった。
(そのあいだのじゃりみちをあるいてくるくろいひとかげにきづいた。)
その間の砂利道を歩いてくる黒い人影に気づいた。