食べる -3-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(おじさんはちいさいおんなのこのまえでじぶんをぜんかいでさらけだしてこうふんしたのか、)

おじさんは小さい女の子の前で自分を全開でさらけ出して興奮したのか、

(めがらんらんとしてきていきづかいもあらくなった。)

目が爛々としてきて息遣いも荒くなった。

(「でもこれじゃないんだ。これはあんまりおいしくないからね」)

「でもこれじゃないんだ。これはあんまりおいしくないからね」

(そうしてびんをもどすと、おくのほうへすすみはじめた。)

そうしてビンを戻すと、奥の方へ進み始めた。

(くろいぬののかかったとりかごのようなもののまえをとおりすぎるとき、)

黒い布のかかった鳥カゴのようなものの前を通り過ぎるとき、

(ねこのうめきごえがおおきくなった。たちどまったままのわたしにおじさんが)

猫の呻き声が大きくなった。立ち止まったままのわたしにおじさんが

(どうしたの?ときく。)

どうしたの?と訊く。

(「ねこが」そういうわたしにうれしそうなかおをしてくちをひらく。)

「ねこが」そう言うわたしに嬉しそうな顔をして口を開く。

(はにさっきのくものおなかのいちぶがこびりついているのがみえた。)

歯にさっきの蜘蛛のお腹の一部がこびりついているのが見えた。

(「ねこはばけるっていうけど、どんなふうにばけるのかじっけんしてみたんだ。)

「猫は化けるっていうけど、どんな風に化けるのか実験してみたんだ。

(いろんなことをしたよ。そのうちにきがついたんだ。)

色んなことをしたよ。そのうちに気がついたんだ。

(しぬまえにね、へんななきごえをあげるねこがいるんだ。ごじゅっぴきにいっぴきくらい。)

死ぬ前にね、変な鳴き声をあげる猫がいるんだ。五十匹に一匹くらい。

(どういうねこがそうなるのか、まだけんきゅうちゅうなんだけど、)

どういう猫がそうなるのか、まだ研究中なんだけど、

(とってもいいこえでなくんだ。ほら、こんなふうに」)

とってもいい声で鳴くんだ。ホラ、こんな風に」

(おじさんがてぢかなくろいぬのをとりはらった。)

おじさんが手近な黒い布を取り払った。

(そのしたにあったのはたけのほねぐみだけのとりかご。)

その下にあったのは竹の骨組みだけの鳥かご。

(からっぽのとりかご。)

空っぽの鳥かご。

(なのにいようなけはいがぼうちょうしていく。なきごえがとまらない。)

なのに異様な気配が膨張していく。鳴き声が止まらない。

(わたしはおもわずそのみぎどなり、そのひだりどなり、そのうえ、そのしたと、いきをのみながら)

わたしは思わずその右隣、その左隣、その上、その下と、息をのみながら

(たなにならぶくろいぬのをみつめる。おじさんはうれしそうにぬのをとりはらっていく。)

棚に並ぶ黒い布を見つめる。おじさんは嬉しそうに布を取り払っていく。

など

(からだった。すべてから。なのにそのすべてからなきごえがきこえる。)

空だった。すべて空。なのにそのすべてから鳴き声が聞こえる。

(うめくようなこえ。おののくようなこえ。みみをふさぎたくなるようなこえが。)

呻くような声。慄くような声。耳を塞ぎたくなるような声が。

(こうちょくするわたしにおじさんは「さあ、ねこはもういいだろう。)

硬直するわたしにおじさんは「さあ、猫はもういいだろう。

(おいしいものはこっちだよ」とおくへすすんでいく。)

おいしいものはこっちだよ」と奥へ進んでいく。

(あたまがぼんやりして、なんだかゆめのなかにいるみたいだった。)

頭がぼんやりして、なんだか夢の中にいるみたいだった。

(ふらふらとついていく。)

ふらふらとついていく。

(てんじょうにはとうかんかくくらいにきいろいあかりがならんでいる。)

天井には等間隔位に黄色い明かりが並んでいる。

(やがてかべにあたり、かどをまがる。またたながりょうわきにのびている。)

やがて壁にあたり、角を曲がる。また棚が両脇に伸びている。

(すこしせまくなったようだ。いちばんおくにはきょだいなかおがみえる。かべにえがかれたえだった。)

少し狭くなったようだ。一番奥には巨大な顔が見える。壁に描かれた絵だった。

(おじさんがごそごそとこしをかがめていたかとおもうと、きたならしいつぼをかかえてきた。)

おじさんがごそごそと腰を屈めていたかと思うと、汚らしいツボを抱えてきた。

(さっきのくものおなかがつまったびんとおなじくらいのおおきさだ。)

さっきの蜘蛛のお腹が詰まったビンと同じくらいの大きさだ。

(とてもふるそうだった。まるくすぼまったくちのところにうわぐすりがたれたような)

とても古そうだった。丸くすぼまった口のところに釉薬が垂れたような

(もようがついている。)

模様がついている。

(そのくちをしばっていたひもとぬのを、おじさんがしんちょうなてつきでといていく。)

その口を縛っていた紐と布を、おじさんが慎重な手つきで解いていく。

(「きたに、くるまでいちじかんくらいいったまちに、てんぐのでんせつがあってね」)

「北に、車で一時間くらいいった町に、天狗の伝説があってね」

(とうとつにそんなことをいいはじめた。)

唐突にそんなことを言いはじめた。

(「たかいやまがあるんだけど、そのやまじゃなくて、)

「高い山があるんだけど、その山じゃなくて、

(すこしはなれたところにあるぬまちにまつわるはなしなんだ」)

少し離れたところにある沼地にまつわる話なんだ」

(なにがおかしいのか、かたをこきざみにふるわせながら、)

なにが可笑しいのか、肩を小刻みに振るわせながら、

(きききとみみざわりなこえをだす。)

きききと耳障りな声を出す。

(てんぐ?あたまのなかに、あかいかおをしてはながたかく、やまぶしのようなかっこうをしたすがたがうかぶ。)

天狗?頭の中に、赤い顔をして鼻が高く、山伏のような格好をした姿が浮かぶ。

(てにははっぱでできたうちわ。)

手には葉っぱでできたウチワ。

(おじさんはいう。)

おじさんは言う。

(「やまじゃなくてぬまちでてんぐっていうのがふしぎだろう。ふるいじんじゃがあってね。)

「山じゃなくて沼地で天狗っていうのが不思議だろう。古い神社があってね。

(そこに、むかしむかしてんからおっこちてきたというてんぐをまつっているんだ。)

そこに、昔々天から落っこちてきたという天狗を祀っているんだ。

(まぬけなはなしだろう?おっちょこちょいなてんぐ」)

間抜けな話だろう?おっちょこちょいな天狗」

(せなかのちいさなはねでつむじかぜにのり、きもちよさそうにそらを)

背中の小さな羽根でつむじ風に乗り、気持ちよさそうに空を

(とんでいたてんぐが、はうちわをおっことしてしまって)

飛んでいた天狗が、葉ウチワを落っことしてしまって

(おいかけているうちにじめんについらくしてしまうといういめーじがうかんだ。)

追いかけているうちに地面に墜落してしまうというイメージが浮かんだ。

(「ところが・・・・・」)

「ところが・・・・・」

(おじさんのこわいろがかわった。)

おじさんの声色が変わった。

(ひそひそとじゅうようなひみつをつげようとするみたいにこえをおとす。)

ひそひそと重要な秘密を告げようとするみたいに声を落とす。

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