巨人の研究 -13-

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師匠シリーズ
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関連タイピング

問題文

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(「お。おつかれ。べんとうくうか」)

「お。お疲れ。弁当食うか」

(ぼくがといれからでてくると、ししょうはじぶんのにもつから)

僕がトイレから出てくると、師匠は自分の荷物から

(ぎんがみにつつまれたものをとりだした。おにぎりだった。)

銀紙に包まれたものを取り出した。おにぎりだった。

(あーけーどからはなれ、ちかくにあったちいさなこうえんにこしをおろす。)

アーケードから離れ、近くにあった小さな公園に腰を下ろす。

(ごごにじすぎのこうえんにはなんくみかのかっぷると、こどもがすうにん、)

午後二時過ぎの公園には何組かのカップルと、子供が数人、

(おもいおもいのかっこうでべんちやすなばにすわりこんでいる。)

思い思いの格好でベンチや砂場に座り込んでいる。

(「でも、あれですね。たしかにこびとをみたってひと、けっこういましたね」)

「でも、あれですね。確かに小人を見たって人、結構いましたね」

(ぐがはいっていなかったことにかおをしかめながらそういうと、)

具が入っていなかったことに顔をしかめながらそう言うと、

(ししょうは「そうだな」とべつのことをかんがえているかのようになまへんじで、)

師匠は「そうだな」と別のことを考えているかのように生返事で、

(のりをまいただけのおにぎりをもくもくとたべつづける。)

海苔を巻いただけのおにぎりを黙々と食べ続ける。

(「そういえば、さいごのしつもんはなんだったんですかね」)

「そういえば、最後の質問はなんだったんですかね」

(あんけーとようしのさいごに、「さいきん、あいようのこっぷにいへんがありましたか?」)

アンケート用紙の最後に、「最近、愛用のコップに異変がありましたか?」

(というきみょうなせつもんがあった。)

という奇妙な設問があった。

(ぼくがうけもったひとでは、だれもはいにちぇっくをいれていなかった。)

僕が受け持った人では、誰もはいにチェックを入れていなかった。

(きになったので、かいしゅうしたかいとうようしをかぞえたときにざっとそのぶぶんをみていたが、)

気になったので、回収した回答用紙を数えた時にざっとその部分を見ていたが、

(ししょうのほうにもはい、とこたえたひとはいなかったようだ。)

師匠の方にもはい、と答えた人はいなかったようだ。

(ほんとうはこびとのことをききたかっただけなので、ただのすぺーすの)

本当は小人のことを訊きたかっただけなので、ただのスペースの

(あなうめかもしれないとおもったが、それにしてはないようがみょうだった。)

穴埋めかもしれないと思ったが、それにしては内容が妙だった。

(「あれは、まあ、きたいしてはいなかったけど、ぜろってのはな。)

「あれは、まあ、期待してはいなかったけど、ゼロってのはな。

(でもこうなるきはしてたから、ほかのあてもあるんだ」)

でもこうなる気はしてたから、他のあてもあるんだ」

など

(ししょうはよくわからないことをいってひとりでうなずいている。)

師匠はよく分からないことを言って一人で頷いている。

(「よし、くったらいこう。つぎだ」)

「よし、食ったら行こう。次だ」

(「え、ちょっとまってください」)

「え、ちょっと待って下さい」

(たちあがったししょうにあわて、ぼくはおにぎりののこりをくちにほうりこむ。)

立ち上がった師匠に慌て、僕はおにぎりの残りを口に放り込む。

(「つぎはどこなんです」)

「次はどこなんです」

(「いがくぶだ」)

「医学部だ」

(ふたたびじてんしゃにふたりのりをする。)

再び自転車に二人乗りをする。

(ぼくとししょうがかようだいがくにはきゃんぱすがふくすうあり、いがくぶはおなじしないでも)

僕と師匠が通う大学にはキャンパスが複数あり、医学部は同じ市内でも

(すこしはなれたばしょにあった。ぼくらのきゃんぱすからじてんしゃでにじゅっぷんていどの)

少し離れた場所にあった。僕らのキャンパスから自転車で二十分程度の

(きょりだったが、そちらにいくようじもなくほとんどなじみがない。)

距離だったが、そちらに行く用事もなくほとんど馴染みがない。

(さーくるもきゃんぱすごとにそんざいしていたので、)

サークルもキャンパスごとに存在していたので、

(それぞれでほぼかんけつしてしまっている。)

それぞれでほぼ完結してしまっている。

(「いがくぶになんのようなんです」)

「医学部になんの用なんです」

(「じょきょうじゅにしりあいがいてな。ききたいことがあるんだ」)

「助教授に知り合いがいてな。訊きたいことがあるんだ」

(しりあいか。ししょうはやたらだいがくのきょうじゅやじょきょうじゅにしりあいがおおい。)

知り合いか。師匠はやたら大学の教授や助教授に知り合いが多い。

(じぶんのぜみのきょうかんならばとうぜんだが、)

自分のゼミの教官ならば当然だが、

(たがっかどころかたがくぶにまでそのねっとわーくをひろげている。)

多学科どころか他学部にまでそのネットワークを広げている。

(おっさんごろしとぼくはひそかにかげぐちをたたいているが、なにかをしらべるにも)

おっさん殺しと僕は密かに陰口を叩いているが、何かを調べるにも

(そのみちのせんもんかにちょくせつきけるのだから、せいかいだしじかんのむだがない。)

その道の専門家に直接聞けるのだから、正解だし時間の無駄がない。

(そのひとみゃく、というよりも、いっかいのがくせいのみぶんでたがくぶのぶんやにまで)

その人脈、というよりも、一介の学生の身分で他学部の分野にまで

(それほどしらべたいことがあるというのが、むしろとくいてきなのかもしれない。)

それほど調べたいことがあるというのが、むしろ特異的なのかも知れない。

(「あっちあっち」)

「あっちあっち」

(ふなれなきゃんぱすのいりぐちをまちがえかけてししょうにゆうどうされる。)

不慣れなキャンパスの入り口を間違えかけて師匠に誘導される。

(へいじつなので、きゃんぱすのなかにはがくせいのすがたがおおくみられた。)

平日なので、キャンパスの中には学生の姿が多く見られた。

(そのかれらもぼくとししょうのほうにぶえんりよなしせんをむけてくる。)

その彼らも僕と師匠の方に無遠慮な視線を向けて来る。

(「そこでとめてくれ」)

「そこで止めてくれ」

(しじされたばしょでじてんしゃをおりる。がくぶとうのまえだった。)

指示された場所で自転車を降りる。学部棟の前だった。

(「きょうはたぶんだいがくびょういんのほうじゃないはずだけど」)

「今日はたぶん大学病院の方じゃないはずだけど」

(ししょうはひとりでさっさとあるきだした。)

師匠は一人でさっさと歩き出した。

(あとについていこうとしたが、げんかんのところですとっぷがかかる。)

後についていこうとしたが、玄関のところでストップがかかる。

(ここでまて、というのである。)

ここで待て、と言うのである。

(「いっしょにいったらまずいんですか」)

「一緒に行ったらまずいんですか」

(「まずいな。ほかのことならともかく、こんかいはでりけーとなはなしだから。)

「まずいな。他のことならともかく、今回はデリケートな話だから。

(わたしもどうやってくちをわらせようかしあんちゅうなんだ。)

私もどうやって口を割らせようか思案中なんだ。

(わるいけどひとりでいったほうがいい」)

悪いけど一人で行った方がいい」

(「そのじょきょうじゅはなんのせんもんなんです」)

「その助教授はなんの専門なんです」

(そのといかけに、ししょうはくちをおおげさにうごかしながらこごえでいった。)

その問いかけに、師匠は口を大げさに動かしながら小声で言った。

(「せいしん」)

「精神」

(じゃあ、あとで。と、ししょうはがくぶとうのかいだんをのぼっていった。)

じゃあ、後で。と、師匠は学部棟の階段を上って行った。

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