風の行方 -13-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
cicciさんのアカウント
https://typing.twi1.me/profile/userId/130158
cicciさんのアカウント
https://typing.twi1.me/profile/userId/130158
関連タイピング
-
プレイ回数713 歌詞1350打
-
プレイ回数46 歌詞かな60秒
-
JR東日本・東海・西日本(東京~熱海~米原~下関(~門司))
プレイ回数4976 長文2169打 -
プレイ回数1038 歌詞886打
-
Mrs.GREEN APPLEの青と夏です!
プレイ回数16万 歌詞1030打 -
テトリスサビ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
プレイ回数14万 歌詞かな167打 -
めっちゃいい曲....
プレイ回数3.3万 歌詞かな200打 -
M!LKのイイじゃん (フル)
プレイ回数4652 歌詞120秒
問題文
ふりがな非表示
ふりがな表示
(それからししょうはまたしがいちにもどり、)
それから師匠はまた市街地に戻り、
(つよいかぜがふいているばしょにたってわらってみせた。)
強い風が吹いている場所に立って笑ってみせた。
(ひはおちて、まちにはじんこうのあかりがじゅんじゅんにともっていた。)
日は落ちて、街には人工の明かりが順々に灯っていた。
(まぶかにかぶったきゃっぷのしたのめがあやしくかがやいている。)
目深に被ったキャップの下の目が妖しく輝いている。
(どうするとおもう?)
どうすると思う?
(もうわかった。ししょうがなにをするつもりなのか。)
もう分かった。師匠がなにをするつもりなのか。
(こうするんだ。)
こうするんだ。
(そういったかとおもうと、はんかちからだしたさっきのかみのけを)
そう言ったかと思うと、ハンカチから出したさっきの髪の毛を
(そっとゆびからはなした。それはかぜにのり、あっというまにみえなくなってしまった。)
そっと指から離した。
(それはかぜにのり、あっというまにみえなくなってしまった。)
それは風に乗り、あっという間に見えなくなってしまった。
(かぜのうなるおとが、みみにいつまでものこっているようなきがした。)
風の唸る音が、耳にいつまでも残っているような気がした。
(「あのかめんは、なんだったんです」)
「あの仮面は、なんだったんです」
(かぜのまうしんやのびるのおくじょうでふぇんすをはさんですわり、ぼくはぽつりともらした。)
風の舞う深夜のビルの屋上でフェンスを挟んで座り、僕はぽつりと漏らした。
(きけばぞっとさせられるのはまちがいないだろう。)
聞けばゾッとさせられるのは間違いないだろう。
(しかしきかずにもいられなかった。)
しかし聞かずにもいられなかった。
(「あのめんか」)
「あの面か」
(むきだしのあしをおくじょうからはみださせ、)
むき出しの足を屋上からはみ出させ、
(ぜんごにぶらぶらとゆらしながらししょうはおしえてくれた。)
前後にぶらぶらと揺らしながら師匠は教えてくれた。
(「こんぱるりゅうをしってるか」)
「金春(こんぱる)流を知ってるか」
(いわく、のうのりゅうはのひとつで、おもにももやまじだいにとよとみひでよしのひごをうけて)
曰く、能の流派の一つで、主に桃山時代に豊臣秀吉の庇護を受けて
など
(ぜんせいきをむかえ、いちじだいをきずいたいえなのだという。)
全盛期を迎え、一時代を築いた家なのだという。
(げんだいでもつづくそのこんぱるりゅうは、でんしょうによるとしょうとくたいしのぶれーんでもあった)
現代でも続くその金春流は、伝承によると聖徳太子のブレーンでもあった
(とらいじんのはたしのひとりでつたえたものだといわれ、ひじょうにふるいれきしをもっている。)
渡来人の秦氏の一人で伝えたものだと言われ、非常に古い歴史を持っている。
(そのしょうとくたいしがじんつうりきをもっててんよりおろし、こんぱるりゅうにさずけたのが)
その聖徳太子が神通力をもって天より降ろし、金春流に授けたのが
(「あまのめん」とよばれるめんだ。そのあと、そのめんはこんぱるけのしゅごしんとして)
「天之面」と呼ばれる面だ。その後、その面は金春家の守護神として
(だいだいたいせつにまつられ、はこにおさめたうえにしめなわをはり、)
代々大切に祀られ、箱に収めた上に注連縄を張り、
(こんぱるけのどぞうにひされていたという。)
金春家の土蔵に秘されていたという。
(あまのめんはおそろしいちからをもち、さまざまなてんぺんちいをおこしたとつたえられている。)
天之面は恐ろしい力を持ち、様々な天変地異を起こしたと伝えられている。
(ひとびとはそのちからをいふし、げんじゅうにまつり、)
人々はその力を畏怖し、厳重に祀り、
(「たゆうといえどもみてはならぬ」といわれたほどであった。)
「太夫といえども見てはならぬ」と言われたほどであった。
(きょうほうねんかんの「かねはるたいおしょじょう」によれば、)
享保年間の「金春太夫書状」によれば、
(「せけんにておそろしどのともうすめんほか」とされている。)
「世間にておそろし殿と申す面他」とされている。
(また、「のうにかけもうすめんにてはござなくそうろう)ともしるされているとおり、)
また、「能に掛け申す面にては御座なく候)とも記されているとおり、
(のうのおおやのしゅごしんたるめんにもかかわらず、のうをえんじるときに)
能の大家の守護神たる面にもかかわらず、能を演じるときに
(かぶられることはなく、ただひでんである「おきな」のわざをでんじゅされたたゆうのみが)
被られることはなく、ただ秘伝である「翁」の技を伝授された太夫のみが
(いちだいにいちどのみみることをゆるされたという。)
一代に一度のみ見ることを許されたという。
(それは「きしん」のめんとも、「おきな」のめんともいわれているが、)
それは「鬼神」の面とも、「翁」の面とも言われているが、
(しょうたいはなぞのままである。じだいのくだったげんだいではやまとたけだのめんづかに)
正体は謎のままである。時代の下った現代では大和竹田の面塚に
(おさめられているともいわれるが、そのしょざいははんぜんとしていない。)
収められているとも言われるが、その所在は判然としていない。
(その「おそろしどの」とよびおそれられためんが。)
その「おそろし殿」と呼び畏れられた面が。
(「たゆうといえどもみてはならぬ」としょうされためんが・・・・・)
「太夫といえども見てはならぬ」と称された面が・・・・・
(「ちょっと、まってください」)
「ちょっと、まってください」
(ようやくくちをはさんだ。)
ようやく口を挟んだ。
(ししょうはぼくのめをみつめかえす。)
師匠は僕の目を見つめ返す。
(「あのめんには、その、にくが。ついていました」)
「あの面には、その、肉が。ついていました」
(のうをえんじるさいにかけるめんではない、といわれているのに、)
能を演じる際に掛ける面ではない、と言われているのに、
(あきらかにだれかがこうむったこんせきがあった。)
あきらかに誰かが被った痕跡があった。
(いや、それいぜんに、それほどふるいめんならば、)
いや、それ以前に、それほど古い面ならば、
(にんげんのにくなどふうかしてくずれおちていてしかるべきではないか。)
人間の肉など風化して崩れ落ちていてしかるべきではないか。
(「にんげんのにくならな」)
「ニンゲンの肉ならな」
(ししょうはくちもとにちいさくえみをうかべる。)
師匠は口元に小さく笑みを浮かべる。
(いや、そもそも、どうしてそんなめんをししょうがもっているのだ。)
いや、そもそも、どうしてそんな面を師匠が持っているのだ。
(「はなせばながくなるんだが。まあかんたんにいうと、あるひとからもらったんだ」)
「話せば長くなるんだが。まあ簡単に言うと、ある人からもらったんだ」
(「だれです」)
「誰です」
(「しらないほうがいいな」)
「知らないほうがいいな」
(そっけないくちょうで、つい、としせんをそらされた。)
そっけない口調で、つい、と視線を逸らされた。
(なんだかおそろしい。)
なんだか恐ろしい。
(おそろしかった。)
恐ろしかった。