家なき子 11
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(たちまちひがすぎて、びたりすじいさんがろうやからでてくるひが)
たちまち日が過ぎて、ビタリス爺さんが牢屋から出てくる日が
(めのまえにやってきました。)
目の前にやってきました。
(まもなく、あーさーともみりがんさんともわかれなくてはならないのだとおもうと)
間もなく、アーサーともミリガンさんとも別れなくてはならないのだと思うと
(ぼくのむねはいっぱいになりました。)
僕の胸はいっぱいになりました。
(でも、あるひ、ぼくはおもいきってみりがんさんにきいてみました。)
でも、ある日、僕は思い切ってミリガンさんに聞いてみました。
(「おじいさんがろうやからでたら、ぼく、むかえにいきたいのです。)
「お爺さんが牢屋から出たら、僕、迎えに行きたいのです。
(ここからとぅーるーずまでなんにちかかるでしょうか」)
ここからトゥールーズまで何日かかるでしょうか」
(それをきいて、あーさーがおおごえでさけびました。)
それを聞いて、アーサーが大声で叫びました。
(「まま、おねがい。れみをいかせないで!」)
「ママ、お願い。レミを行かせないで!」
(すると、みりがんさんがいいました。「わたしだってそうしたいわ。)
すると、ミリガンさんが言いました。「私だってそうしたいわ。
(でも、れみがわたしたちといっしょにいたいとおもわなくてはね。それに、れみのごしゅじんの)
でも、レミが私たちと一緒にいたいと思わなくてはね。それに、レミの御主人の
(びたりすさんが、ゆるしてくれなくては・・・」)
ビタリスさんが、許してくれなくては・・・」
(「ねえ、れみ。きみも、ぼくたちといっしょにいたいだろう」)
「ねえ、レミ。君も、僕たちと一緒にいたいだろう」
(あーさーがいうと、みりがんさんもいいました。)
アーサーが言うと、ミリガンさんも言いました。
(「これからは、ただあそぶだけではなくて、ふたりにべんきょうをおしえたいと)
「これからは、ただ遊ぶだけではなくて、二人に勉強を教えたいと
(おもっているんですよ」)
思っているんですよ」
(「おくさま、おくさまのごしんせつには、おれいのいいようもありません」)
「奥様、奥様のご親切には、お礼の言いようもありません」
(すると、あーさーがうれしそうにさけびました。)
すると、アーサーが嬉しそうに叫びました。
(「ああ、やっぱりれみはここにいたいんだ」)
「ああ、やっぱりレミはここにいたいんだ」
(「では、びたりすさんにてがみをかきましょう。そして、びたりすさんを)
「では、ビタリスさんに手紙を書きましょう。そして、ビタリスさんを
など
(せっとへおよびして、そこであうことにしましょう。)
セットへお呼びして、そこで会うことにしましょう。
(わたしたちはとてもとぅーるーずまではいけないから。そして、びたりすさんが)
私たちはとてもトゥールーズまでは行けないから。そして、ビタリスさんが
(ゆるしてくれたら、れみのごりょうしんにてがみをかくことにしましょう」)
許してくれたら、レミのご両親に手紙を書くことにしましょう」
(みりがんさんにそういわれて、ぼくはどきりとしました。)
ミリガンさんにそう言われて、僕はどきりとしました。
(ぼくが、みなしごだということだけははなしてありませんでした。)
僕が、みなし子だということだけは話してありませんでした。
(もしそだてのおや、じぇろーむのところにてがみがいけば、ぼくがすてごだった)
もし育ての親、ジェロームのところに手紙がいけば、僕が捨て子だった
(ということも、わかってしまうでしょう。)
ということも、わかってしまうでしょう。
(ぼくがすてごだということがわかったら、あーさーもみりがんさんも)
僕が捨て子だということがわかったら、アーサーもミリガンさんも
(ぼくをこれまでのように、やさしくはしてくれないと、ぼくはおもったのです。)
僕をこれまでのように、優しくはしてくれないと、僕は思ったのです。
(ぼくのかおいろがかわったので、みりがんさんはふしぎそうなかおをしましたが)
僕の顔色が変わったので、ミリガンさんは不思議そうな顔をしましたが
(でも、なにもいいませんでした。)
でも、なにも言いませんでした。
(それからなんにちかすると、びたりすじいさんのへんじがとどいて、こんどのどようび)
それから何日かすると、ビタリス爺さんの返事が届いて、今度の土曜日
(にじのきしゃでせっとにいくと、かいてありました。)
二時の汽車でセットに行くと、書いてありました。
(そのひ、ぼくはいぬたちとじょりくーるをつれて、えきにむかえにいきました。)
その日、僕は犬たちとジョリ・クールを連れて、駅に迎えに行きました。
(きしゃがえきにつくと、いぬたちはしゅじんのにおいをかぎとったのでしょう。)
汽車が駅に着くと、犬たちは主人のにおいをかぎ取ったのでしょう。
(わんわんほえながら、むちゅうでほーむにかけだしました。)
ワンワン吠えながら、夢中でホームに駆け出しました。
(そして、びたりすじいさんをみつけると、おおよろこびでとびつきました。)
そして、ビタリス爺さんを見つけると、大喜びで飛びつきました。
(ぼくがおじいさんのまえにいくと、おじいさんはぼくをだきしめやさしくきすをしてくれて)
僕がお爺さんの前に行くと、お爺さんは僕を抱きしめ優しくキスをしてくれて
(「やあ、げんきでなによりだ」といいました。ひさしぶりにおじいさんをみて)
「やあ、元気で何よりだ」と言いました。久しぶりにお爺さんを見て
(ぼくはなみだがでそうになりました。「ろうやぐらしは、つらいものだ」)
僕は涙が出そうになりました。「牢屋暮らしは、辛いものだ」
(おじいさんはそういって、ぼくがどうしてみりがんさんたちとしりあいに)
お爺さんはそう言って、僕がどうしてミリガンさんたちと知り合いに
(なったのかとたずねました。ぼくは、そのはなしをしながら、みりがんさんたちの)
なったのかと尋ねました。僕は、その話をしながら、ミリガンさんたちの
(とまっているほてるのまえまできました。)
泊まっているホテルの前まで来ました。
(「あのひとたちのへやへ、ぼくもいっしょにいっていい?」ぼくがおじいさんにきくと)
「あの人たちの部屋へ、僕も一緒に行っていい?」僕がお爺さんに聞くと
(「いや、いかんでもいい。おまえはどうぶつたちと、ここでまっていなさい」)
「いや、行かんでもいい。お前は動物たちと、ここで待っていなさい」
(おじいさんはそういうと、ひとりでほてるにはいっていきました。)
お爺さんはそう言うと、一人でホテルに入っていきました。
(どうして、ぼくをいっしょにつれていってくれないのだろう。)
どうして、僕を一緒に連れて行ってくれないのだろう。
(おじいさんはみりがんさんと、ぼくにきかれてはこまるようなはなしをするのだろうか)
お爺さんはミリガンさんと、僕に聞かれては困るようなはなしをするのだろうか
(ほてるのまえでまちながら、ぼくはだんだんしんぱいになってきました。)
ホテルの前で待ちながら、僕はだんだん心配になってきました。
(しばらくすると、おじいさんがもどってきて「みりがんさんたちにごあいさつしておいで)
しばらくすると、お爺さんが戻ってきて「ミリガンさんたちにご挨拶しておいで
(わしは、ここでまっているから」と、ぼくにいいました。)
わしは、ここで待っているから」と、僕に言いました。
(ぼくがおじいさんのかおをみてぽかんとしていると「なにをぼんやりつったっている。)
僕がお爺さんの顔を見てぽかんとしていると「何をぼんやりつっ立っている。
(さっさといって、さっさともどっておいで」きびしいこえでおじいさんはいいました。)
さっさと行って、さっさと戻っておいで」厳しい声でお爺さんは言いました。
(ぼくがみりがんさんのへやへはいっていくと、ないているあーさーを)
僕がミリガンさんの部屋へ入っていくと、泣いているアーサーを
(みりがんさんがなぐさめているところでした。)
ミリガンさんが慰めているところでした。
(「ねえ、れみ。いってしまわないよね」ぼくをみてあーさーがさけびました。)
「ねえ、レミ。行ってしまわないよね」僕を見てアーサーが叫びました。
(「わたしたちといっしょにいられるように、びたりすさんにたのんだのですけれど)
「私たちと一緒にいられるように、ビタリスさんに頼んだのですけれど
(どうしてもゆるしてくださらないの」みりがんさんがいいました。)
どうしても許してくださらないの」ミリガンさんが言いました。
(「いじわるじいさんだ!」あーさーがくやしそうにいうと、)
「意地悪じいさんだ!」アーサーが悔しそうに言うと、
(みりがんさんはくびをふって「いいえ、いじわるじゃないわ。)
ミリガンさんは首を振って「いいえ、意地悪じゃないわ。
(あのひとは、れみのことをほんとうにかわいがっているのよ。)
あの人は、レミのことを本当にかわいがっているのよ。
(それに、わたしにこういいましたわ。「わしはあのこを、わしのそばにおいて)
それに、私にこう言いましたわ。『わしはあの子を、わしのそばに置いて
(よのなかのことをいろいろまなばせてやりたい。そのほうが、あなたのところに)
世の中のことをいろいろ学ばせてやりたい。そのほうが、あなたのところに
(いるよりも、ずっとあのこのためになる」って」)
いるよりも、ずっとあの子のためになる』って」
(「れみがいっちゃうなんていやだ」また、あーさーがなきだしました。)
「レミが行っちゃうなんて嫌だ」また、アーサーが泣き出しました。
(「いまはしかたがないわ。れみのごしゅじんがゆるしてくださらないんですもの。)
「今は仕方がないわ。レミの御主人が許してくださらないんですもの。
(でもそのうち、ごりょうしんにてがみをかいてゆるしてもらうようにしましょう」)
でもそのうち、ご両親に手紙を書いて許してもらうようにしましょう」
(「おねがいです。それだけはしないでください」)
「お願いです。それだけはしないでください」
(おもわずぼくは、みりがんさんにいいました。)
思わず僕は、ミリガンさんに言いました。
(「まあ、どうして?」)
「まあ、どうして?」
(「どうか、それだけはしないで・・・」)
「どうか、それだけはしないで・・・」
(「れみのごりょうしんは、しゃばのんにいらっしゃるのでしょう」)
「レミのご両親は、シャバノンにいらっしゃるのでしょう」
(ぼくはそれにこたえずに、ないているあーさーのところにいっててにきすをしました)
僕はそれに答えずに、泣いているアーサーのところに行って手にキスをしました
(すると、もうがまんができなくなって、おもわずへやをとびだして)
すると、もう我慢ができなくなって、思わず部屋を飛び出して
(ほてるのそとにでました。ぼくのうしろからは、ぼくのなまえをよぶ)
ホテルの外に出ました。僕の後ろからは、僕の名前を呼ぶ
(あーさーのこえがきこえました。)
アーサーの声が聞こえました。
(そとにはびたりすじいさんがどうぶつたちとまっていて)
外にはビタリス爺さんが動物たちと待っていて
(「さあ、いこう!」とぼくにこえをかけました。)
「さあ、行こう!」と僕に声を掛けました。