楠山正雄「ジャックと豆の木」6/8

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投稿者投稿者邪王真眼いいね2お気に入り登録
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(そこで、こんども、じゃっくは、そろりそろり、あかがねのはこからはいだして、)

そこで、こんども、ジャックは、そろりそろり、あかがねの箱からはいだして、

(きんとぎんのおたからのいっぱいつまったふくろを、りょうほうのうでに、しっかりかかえるが)

金と銀のおたからのいっぱいつまった袋を、両方の腕に、しっかりかかえるが

(はやいか、さっさとにげだしていきました。ところが、このふくろのばんにんに、)

はやいか、さっさとにげだして行きました。ところが、この袋の番人に、

(いっぴきのこいぬがつけてあったので、そいつが、とたんに、きゃんきゃん)

一ぴきの小犬がつけてあったので、そいつが、とたんに、きゃんきゃん

(ほえだしました。じゃっくは、こんどこそだめだとおもいました。それでも、)

吠えだしました。ジャックは、こんどこそだめだとおもいました。それでも、

(おおおとこは、とてもしんだようによくねいっていて、めをさましませんでした。)

大男は、とても死んだようによく寝入っていて、目をさましませんでした。

(じゃっくはむちゅうで、あとをもみずにどんどん、どんどん、かけていって、)

ジャックはむちゅうで、あとをもみずにどんどん、どんどん、かけて行って、

(とうとうまめのきのはしごにいきつきました。さて、にわとりとちがって、)

とうとう豆の木のはしごに行きつきました。さて、にわとりとちがって、

(こんどはおもたいきんとぎんのふくろをはこぶのに、ほねがおれました。それでも)

こんどはおもたい金と銀の袋をはこぶのに、ほねがおれました。それでも

(がまんして、うんすら、うんすら、ふつかがかりで、まめのきのはしごを、)

がまんして、うんすら、うんすら、ふつかがかりで、豆の木のはしごを、

(じゃっくはおりました。やっとこさ、うちまでたどりつくと、おかあさんは、)

ジャックはおりました。やっとこさ、うちまでたどりつくと、おかあさんは、

(じゃっくがいなくなったので、すっかり、がっかりして、ひどいびょうにんになって、)

ジャックがいなくなったので、すっかり、がっかりして、ひどい病人になって、

(とをしめてねていました。それでも、ぶじなじゃっくのかおをみると、まるで)

戸をしめてねていました。それでも、ぶじなジャックの顔をみると、まるで

(しんだひとがいきかえったようになって、それからずんずんよくなって、)

死んだ人が生きかえったようになって、それからずんずんよくなって、

(やがて、しゃんしゃんあるきだしました。そのうえ、おかねがたくさんできたと)

やがて、しゃんしゃんあるきだしました。その上、お金がたくさんできたと

(きいて、よけいげんきになりました。こうして、またしばらくのあいだ、)

きいて、よけいげんきになりました。こうして、またしばらくの間、

(じゃっくは、うちで、おとなしくしていました。するうち、だんだん、)

ジャックは、うちで、おとなしくしていました。するうち、だんだん、

(からだじゅう、むずむずしてきました。もうまたてんじょうしたくなって、)

からだじゅう、むずむずして来ました。もうまた天上したくなって、

(まいにち、まめのきのはしごばかりながめていました。するとそれが)

まいにち、豆の木のはしごばかりながめていました。するとそれが

(きになって、きになって、きがふさいできました。そこで、じゃっくは、)

気になって、気になって、気がふさいで来ました。そこで、ジャックは、

など

(あるひまた、そっとまめのきのはしごをつたわってのぼりました。こんども)

ある日また、そっと豆の木のはしごをつたわってのぼりました。こんども

(かおからすがたから、すっかりほかのこどもになっていきましたから、)

顔から姿から、すっかりほかのこどもになって行きましたから、

(おにのおかみさんは、まただまされて、なかにいれました。そして、おおおとこがかえると、)

鬼のお上さんは、まただまされて、中に入れました。そして、大男がかえると、

(あわてて、おかまのなかにかくしてくれました。おにのおおおとこは、へやのなかじゅう)

あわてて、お釜のなかにかくしてくれました。鬼の大男は、へやの中じゅう

(かぎまわって、ふん、ふん、ひとくさいぞといいました。そして、こんどは、)

かぎまわって、ふん、ふん、人くさいぞといいました。そして、こんどは、

(なんでもさがしだしてやるといって、へやのなかのものを、ひとつひとつ)

なんでもさがしだしてやるといって、へやの中のものを、ひとつひとつ

(みてまわりました。そしてさいごに、じゃっくのかくれているおかまのふたに)

みてまわりました。そしてさいごに、ジャックのかくれているお釜のふたに

(てをかけました。じゃっくは、ああ、こんどこそだめだとおもって、)

手をかけました。ジャックは、ああ、こんどこそだめだとおもって、

(ふるえていますと、それこそようじょがまもっていてくれるのでしょうか、)

ふるえていますと、それこそ妖女がまもっていてくれるのでしょうか、

(おおおとこは、ふときがかわって、それなりろばたにすわりこんで、)

大男は、ふと気がかわって、それなりろばたにすわりこんで、

(「まあいいや。はらがすいた。ばんめしにしようよ。」といいました。)

「まあいいや。はらがすいた。晩飯にしようよ。」といいました。

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