宮沢賢治「永訣の朝」

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投稿者投稿者邪王真眼いいね4お気に入り登録
プレイ回数1060難易度(3.2) 1626打 長文
タグ国語 長文
約1600字 旧仮名遣いのままなのでむずかしいかもしれません
()は省いてあります。
いろいろ調べながら作成しましたが読みが間違っている箇所が
あるかもしれません。
気付いた方はご指摘いただけると助かります。

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問題文

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(けふのうちに)

けふのうちに

(とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ)

とほくへ いってしまふ わたくしの いもうとよ

(みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ)

みぞれがふって おもては へんに あかるいのだ

(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

(うすあかくいっさういんさんなくもから)

うすあかく いっさう 陰惨(いんさん)な 雲から

(みぞれはびちょびちょふってくる)

みぞれは びちょびちょ ふってくる

(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

(あおいじゆんさいのもやうのついた)

青い蓴菜(じゆんさい)の もやうのついた

(これらふたつのかけたたうわんに)

これら ふたつの かけた 陶椀(たうわん)に

(おまへがたべるあめゆきをとらうとして)

おまへが たべる あめゆきを とらうとして

(わたくしはまがったてっぽうだまのやうに)

わたくしは まがった てっぽうだまのやうに

(このくらいみぞれのなかにとびだした)

この くらい みぞれのなかに 飛びだした

(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

(さうえんいろのくらいくもから)

蒼鉛(さうえん)いろの 暗い雲から

(みぞれはびちょびちょしずんでくる)

みぞれは びちょびちょ 沈んでくる

(ああとしこ)

ああ とし子

(しぬといふいまごろになって)

死ぬといふ いまごろになって

(わたくしをいっしゃうあかるくするために)

わたくしを いっしゃう あかるく するために

(こんなさっぱりしたゆきのひとわんを)

こんな さっぱりした 雪のひとわんを

(おまへはわたくしにたのんだのだ)

おまへは わたくしに たのんだのだ

など

(ありがたうわたくしのけなげないもうとよ)

ありがたう わたくしの けなげな いもうとよ

(わたくしもまっすぐにすすんでいくから)

わたくしも まっすぐに すすんでいくから

(あめゆじゅとてちてけんじゃ)

(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)

(はげしいはげしいねつやあえぎのあひだから)

はげしい はげしい 熱や あえぎの あひだから

(おまへはわたくしにたのんだのだ)

おまへは わたくしに たのんだのだ

(ぎんがやたいよう、きけんなどとよばれたせかいの)

銀河や 太陽、気圏(きけん)などと よばれたせかいの

(そらからおちたゆきのさいごのひとわんを)

そらから おちた 雪の さいごの ひとわんを……

(ふたきれのみかげせきざいに)

…ふたきれの みかげせきざいに

(みぞれはさびしくたまっている)

みぞれは さびしく たまってゐる

(わたくしはそのうへにあぶなくたち)

わたくしは そのうへに あぶなくたち

(ゆきとみずとのまっしろなにさうけいをたもち)

雪と 水との まっしろな 二相系(にさうけい)をたもち

(すきとほるつめたいしずくにみちた)

すきとほる つめたい雫に みちた

(このつややかなまつのえだから)

このつややかな 松のえだから

(わたくしのやさしいいもうとの)

わたくしの やさしい いもうとの

(さいごのたべものをもらっていかう)

さいごの たべものを もらっていかう

(わたしたちがいっしょにそだってきたあひだ)

わたしたちが いっしょに そだってきた あひだ

(みなれたちやわんのこのあいのもやうにも)

みなれた ちやわんの この 藍のもやうにも

(もうけふおまへはわかれてしまふ)

もう けふ おまへは わかれてしまふ

(oraoradeshitoriegumo)

(Ora Orade Shitori egumo)

(ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ)

ほんたうに けふ おまへは わかれてしまふ

(あああのとざされたびゃうしつの)

ああ あの とざされた 病室(びゃうしつ)の

(くらいびゃうぶやかやのなかに)

くらい びゃうぶや かやの なかに

(やさしくあをじろくもえている)

やさしく あをじろく 燃えてゐる

(わたくしのけなげないもうとよ)

わたくしの けなげな いもうとよ

(このゆきはどこをえらばうにも)

この雪は どこを えらばうにも

(あんまりどこもまっしろなのだ)

あんまり どこも まっしろなのだ

(あんなおそろしいみだれたそらから)

あんな おそろしい みだれた そらから

(このうつくしいゆきがきたのだ)

この うつくしい 雪が きたのだ

(うまれでくるたて)

(うまれで くるたて

(こんどはこたにわりやのごとばかりで)

こんどは こたに わりやの ごとばかりで

(くるしまなあよにうまれてくる)

くるしまなあよに うまれてくる)

(おまへがたべるこのふたわんのゆきに)

おまへが たべる この ふたわんの ゆきに

(わたくしはいまこころからいのる)

わたくしは いま こころから いのる

(どうかこれがとそつのてんのじきにかわって)

どうか これが兜率(とそつ)の 天の食(じき)に 変わって

(やがてはおまへとみんなとにとうといしりょうをもたらすことを)

やがては おまへとみんなとに聖い資糧(とうといしりょう)をもたらすことを

(わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ)

わたくしの すべての さいはひを かけて ねがふ

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